南カリフォルニアで暮らしていれば、身近に1人か2人くらいはサーファーの友人がいるんじゃないでしょうか。その人は、サーフィンの話となると急に目を輝かせてイキイキと語り出したりするんじゃないでしょうか。サーフィンの何が、大の大人をそんなに魅了するのか?サーフカルチャーとも呼べる、アメリカ西海岸・カリフォルニア流ライフスタイルに触れたら何か分かるかもしれません。サーファーたちに、サーフィンの魅力や、お気に入りのレストラン、注目の映画&音楽などを聞きました。
南カリフォルニア(ロサンゼルス・サンディエゴ周辺)の主なサーフシティー
サーフィンが盛んで、サーフカルチャーが根づいている街はサーフシティーと呼ばれます。ここではアメリカ西海岸・カリフォルニアで特に有名なサーフシティーをピックアップ。ビーチで遊んで、街を散策すれば、サーフカルチャーを体感できるはず。
Malibu / マリブ
昔から、サーフィンに関する本や映画、テレビ番組が作られることが多く、元祖サーフシティーとも言われています。ハリウッドのセレブリティーが多く暮らす高級住宅地としても有名です。
Venice Beach / ベニスビーチ
海岸沿いにボードウォーク(遊歩道)が続き、雑貨などを販売するショップが並びます。大道芸人やアーティストなどの個性的なパフォーマーが集う場所でもあり、活気溢れる陽気なビーチシティーです。
Huntington Beach / ハンティントンビーチ
「サーフシティー」で商標登録をしているなど、街をあげてサーフカルチャーを推進。世界最大と言われるサーフィン大会「US オープン」をはじめ、多くの世界的サーフィンコンテストの開催地としても知られています。
San Clemente / サンクレメンテ
いい波があることで世界屈指のサーフスポットとして知られるトラッセルズをはじめ、たくさんの人気サーフスポットを擁する街。規模は小さく、OC の中心地とはまた少し違うのどかな雰囲気が漂います。
Encinitas / エンシニータス
世界のベストサーフタウンとして必ず名前があがる街。インドからアメリカにヨガを伝えたヨガナンダの僧院もあり、スピリチュアルな雰囲気もあり、ヘルスコンシャス、エココンシャスな店が多く並びます。
Pacific Beach / パシフィックビーチ
サンディエゴの南のサーフシティーといえばここ。略して「PB(ピー・ビー)」と呼ばれて、親しまれています。昼間は海に、夜はバーに、と日夜問わず人が集まり、賑わっている街です。
南カリフォルニで暮らすアサーファーたちのライフスタイル
自然体で、健康的で、気負いがなくて、おしゃれ。そんなアメリカ西海岸・カリフォルニアのかっこいい大人のサーファーたちをインタビュー。サーフィンの魅力から、お気に入りの音楽や映画、おすすめのスポットなどを教えてもらいました。
Andrew Heilprin / アンドリュー・ヒールプリンさん(ロサンゼルス・ベニスビーチ)
「初めてのサーフィンは、12歳の時。忘れもしない、エルニーニョの嵐が来ていた年。当時、サンタバーバラのビーチハウスに住んでいたのですが、大波が家の真下まで押し寄せていて不安がる母親を尻目に、僕はサーフボードを抱えて家から直接海に飛び込んだんです」というミュージシャンのアンドリューさん。以来、完全にサーフィンの虜になり、サーフィン歴は30年以上。
「サーフィンのおかげで、波に乗りたくて、いろんなところに旅するようになりました。でも、旅先で見るものは、観光スポットじゃなくて、海。気にするのは天気とか、その土地の特徴とか、波に関わること。そういうものの見方は必然、人生にも影響しますし、人生に影響するものは全て自分の音楽にも影響していると思います」。
Katy / ケイティーさん(オレンジカウンティ・サンクレメンテ)
「学生時代、アリゾナで暮らしていたのですが、時間を見つけてはサンディエゴに通っていました。海が近くて、天気が良くて、レイドバックなビーチカルチャーに恋してしまって。大学卒業後、しばらくスペインで暮らしましたが、アメリカに帰って来た時、サンディエゴで暮らすことに決めたんです」と語るケイティーさんがサーフィンを始めたのもカリフォルニア・サンディエゴ。
「ライフガードの友だちが教えてくれて、すぐに波を捉えてボードの上に立つことができて、その感覚に魅せられました。まあ、簡単に思えたのは手伝ってもらったからだって後から思い知ったのですが…。波は毎回違うから、サーフィンは本当に難しい。9年経った今でもまだまだ練習中です。でも、サーフィンはきっとそうやって一生をかけて学び続けていくもの、だから楽しいんだろうって思っています」。
Michael Miller / マイケル・ミラーさん(サンディエゴ・パシフィックビーチ)
「サーファーはのんびりしていて、悪く言えば怠惰だってイメージがあるけれど、 僕に関して言えば平日は毎日朝9時から夕方5時まで黙々と仕事をしていて忙しくしていると思う」と笑うマイケルさん。サーフボード制作という、サーフカルチャーの中心にいながらも「実は家にはサーフィンっぽいものは何一つない」のだそう。あんまり飲みに出歩くタイプでもなく、飲むとしたら近くのブルワリーで、友だちと近況報告をしあう程度。
「仕事が忙しかったり、結婚して家族ができたりして、サーフィンを続けられなくなる人も多い中で、僕はサーフィンを仕事にできて、おかげでサーフィンをやり続けられて、ラッキーだと思う。波乗りを楽しむためには太ったりできないし、常に体をいい状態に保っておこうって思うようになる。サーファーは、必然、生活が健康的になっていくよね」。
Shiho Miyasaka / 宮坂 志帆さん(ロサンゼルス・ハンティントンビーチ他)
はつらつとした少女のような笑顔が印象的な志帆さんは、13歳と11歳の2人の娘の母。高校卒業後、ボディーボードのプロを目指して、単身、宮崎県やハワイに暮らし、トレーニングに励んだガッツの持ち主でもあります。「サーフィンに出会うまでは、両親に対してすごく反抗的でした。今思えば、あり余るエネルギーの矛先が全部両親に向かっていたのだと思います。サーフィンにのめり込んでからはすっかり反抗しなくなりましたから」。
子どもが小さい間も夫婦交代で面倒を見ながらサーフィンを楽しんだそう。現在はmade in kitchen の仕事で飛び回る日々ですが、子育ての手が離れつつあるため、最近は夫婦2人で海デートができるのが楽しいと言います。「ワークショップでサンディエゴなどに行く時は、帰りがけにどこかの海に入って行くのが楽しみ。仕事もしながら、サーフィンも楽しめるのは、カリフォルニアならでの暮らしだなぁと思いますね」。
Jun Hiraoka / 平岡 純さん(ロサンゼルス・ベニスビーチ他)
「サーフィンを始める前から、そもそも海が好きでした。特にピアの風景に心惹かれて、写真を撮るためにロサンゼルスのピアをめぐったりもしていましたね」。そう語る純さんは、友だちと集まる時も自然と集合場所はビーチになると言います。「カリフォルニアに暮らす人はやっぱり海好きが多いんじゃないですかね。
72年会っていう、1972年生まれの日本人の会を時々開くのですが、それもだいたい海辺の公園でやりますね」。サーフィンではロサンゼルス・カウンティーのさまざまなポイントに行ったそうですが、一番のお気に入りはベニス。「波はいつも良いというわけではないんですよ。でも、ヒッピーな雰囲気があって面白い。海から上がった後、ビーチにいると、会話が始まったりして。そういう面白い出会いが発生するのが楽しいですね」。
Robert Dahey / ロバート・デイヒーさん(サンディエゴ・カーディフ)
中学生の頃からボディーボードを始めたロバートさんは、大学生になってルームメイトに「男なのにボディーボード?」とからかわれたことが悔しくてサーフィンを始めました。「最初は波を捉えても前に進むだけだったんだけど、1週間に2回くらい行くようになって1カ月半くらい続けた後かな?ある日、突然、ボードに立ちながら波を横に進んでいくことができるようになって…。ブラックスビーチというところでやっていたのですが、その瞬間の独特の感覚は今もスローモーションのように思い出すことができます」。
以来、その感動を求めてサーフィンを続け、約20年。「サーフィンはもちろん友だちとやるのも楽しいけど、一人で気ままにやれるという点が自分には合っている。自然の中で、圧倒的に自由を感じることができる。それが止めずに続けている大きな魅力だと思います」。
何歳からでも遅くない サーフィンレッスン体験レポート
サーフカルチャーの醍醐味はやっぱりサーフィンそのもの。始めるのに年齢や経験は関係ありません。50代で初めてサーフィンに挑戦する読者のレッスン風景をレポートします。
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今回、取材のために伺ったのは、主にサンクレメンテで活動されている小林正樹さんによるレッスン。小林正君、桂君の2人の息子を世界のサーフコンテストで活躍するプロサーファーに育てた人でもあり、毎年秋に開催されるアメリカ西海岸最大の日本人サーフィンコンテストの主催者でもあります。
「とにかくサーフィンの楽しさを伝えたいんです。サーフィンでなくてもいいですけども、大人になってものめりこめるものがあるのは、やっぱり楽しいじゃないですか」。そう笑う正樹さんのレッスンは終始和やか。基本から丁寧に教えてくれ、素朴な疑問も何でも聞きやすい雰囲気が魅力です。
子どもや大人のビギナーはもちろん、スキルアップしたい中上級サーファーまで、それぞれのレベルに応じたレッスンを提供してくれるので、もう少しうまくなりたいと思っているサーファーも受けてみてはいかがでしょうか?
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「パドリングというのは手で漕ぐことですか?」という瀧本さんの素朴な疑問に「ごめん、ごめん、用語とか分からないことはそういう風に何でも聞いてくださいね」と先生。
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ボードの上で寝そべった状態から1、2のリズムで立つ練習。ボードのどの位置に立つといいかも教えてくれます。
「地味な練習ですけど、地上でできないことは、海の上ではできませんから」と先生。なるほど、納得です。
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パドリングして進む姿勢はなかなか様になっています!
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波に合わせて先生がボードを押してくれ、すぐに波を捉えることには成功。しかし、なかなか立ち上がれません。
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諦めずに何度もトライすること90分。ついに、立てました!お見事。
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「いやー、もうヘトヘトです…」と岸へと戻って来た瀧本さん。しかし、その顔には爽快な笑顔。
「どうですか?サーフィン、続けられそうですか?」の問いには、「もちろんです!」と力強い返答。先生も「やったね!」とうれしそうでした。
▶ レッスン料金:グループ(3~5人)1人$65、セミプライベート(2人)1人$85、プライベート(1人)1人$100
※ボード、ウエットスーツの無料貸し出しあり
▶ レッスン場所:ドヘニー・ビーチ
場所はレベルに応じて選定。なお、サーフガイドや、ロサンゼルス、サンクレメンテ、サンディエゴ、メキシコまでの観光ガイドも行なっています。
▶ Web:http://surftripca.jimdo.com
これだけ知っておけば大丈夫 サーフィン基本知識
波に乗るというシンプルなサーフィンを一見複雑に見せているのは、道具の多さや独特の専門用語。とりあえずこれだけ押さえておけばスタートできる、基本的な知識をまとめてみました。
そろえる道具
Leash / リーシュ
サーフボードと自分の足をつないでおくためのコード。ボードの上に立った時、後ろ足になる方に付けます。乗るボードの長さに応じて、リーシュの長さも変わります。
Wetsuit / ウエットスーツ
カリフォルニアは外気が暖かくても海水は冷えているため、防寒のためにもウエットスーツは必須と言えます。長袖&長ズボンのフルスーツから、半袖&短パンまで、さまざまなデザインがありますが、カリフォルニアで一着買うなら、年間を通して一番出番の多い、3-4 ミリの厚さのフルスーツがおすすめ。
Surfboard / サーフボード
さまざまな長さ、形、厚さがあり、それによって乗り心地の特徴が変わります。最初のうちは、自分がどんな乗り方をしたいのか、イメージが明確でないことも多いので、ビギナーが練習しやすいサーフボードを選ぶのが一番。乗りやすいボードは、身長や体重にもよるので、詳しい人に相談するのがベターです。
Wax / ワックス
ボードに立った時に足が滑らないようにするために塗るもの。海水の温度に合わせて、いくつかの種類がありますので、買う時にショップの人に確認しましょう。ワックスの塗り方はインターネットで検索するとたくさん出てくるので参考に。
よく使われるサーフィン用語
サーフィンについて
●レギュラー・スタンス/グーフィー・スタンス
スタンスは、ボードに立つ時の足の位置のこと。レギュラーは左足が前に来る立ち方。グーフィーは右足が前に来る立ち方。自分の心地良い方でOK。
●パドリング
ボードに腹這いになった状態で、両手で水を掻いて前進すること。サーフィンでは移動は全てパドリングが基本。
●テイクオフ
サーフボードで波を捉えて、立ち上がること。サーフィンを楽しむために最初に覚えるテクニック。
海について
●ブレイク
うねりとしてやってきた波が、崩れること。このブレイクするポイントがサーフィンをするところ。なお、海底が砂浜の場合をビーチブレイク、岩やサンゴの場合をリーフブレイクと言います。
●セット
周期的にやってくる、大きめの波。2本、3本とまとまってやって来るのが特徴。
●リップカレント
岸から沖に向かって流れる海水の流れ。この流れを利用すると沖に出やすい一方で、知らずにあっという間に沖に流されてしまう原因にもなります。
●オフショア/オンショア
オフショアは陸から沖に向かって吹く風。岸に向かって来る波の面を整えるため、一般的にサーフィンに良いとされます。オンショアは沖から陸に向かって吹く風。
サーフィンにLet’s Go!
「サーフィンには、いろいろ難しい海のルールある?」もちろんルールはあるのですが、それは皆がケガなく安全に楽しむためのもので決してビギナーを排除するものではありません。とにかく海に通えば、いろんなことが少しずつ分かってきます。さあ、後は海へ行くだけ。この夏、南カリフォルニアでサーフカルチャーを思いっきり楽しみましょう!
※このページは「2016年7月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。