汗をドッサリかいて、新陳代謝を活発にするから~い食べ物は、ほどほどならダイエットや美肌作りにも最適。辛みの初心者からエキスパートまで挑戦できる、激辛料理をご紹介します。
辛いけど止められないやみつきの料理もあれば、舌が焼けるような極辛ホットソースもある。
体調や個人差があるので、くれぐれも無理は禁物!
辛みとは何か?
激辛料理に挑戦する前に、まず「辛み」について少し勉強しておきたい。辛さの真髄を知るために、ロサンゼルスのファーマーズマーケットでホットソース一筋15年、辛みの専門店「Light My Fire」にお邪魔して、店主のヨン・ミンさんに聞いてみた。
「辛さは、『Heat Scale』や『ScovilleUnits』といった基準によって計られます」と、ミンさん。同店でも、ずらりと並んだ1,200種類ものホットソースが、1~10++、「Off the Chart」というHeat Scaleで分類されている。同店の説明では、1~4までが「Wimpy」、5~7が「Nice & Spicy」、8~10が「Pleasant Burn」となり、10+、10++、Off the Chartは、「自己責任でどうぞ」ということになっている。
辛み成分「カプサイシン」の濃度によって、辛さを科学的に数値化したのがScoville Units(別表参照)。タバスコが2,140スコビルに対し、世界一辛いと言われるハバネロ系のレッドサビナ種は57万7千スコビル、同店で販売される世界で最も辛いホットソース「The Source」が710万スコビル。ここまで来ると、肌に1滴触れただけで、痛みを感じるほどだとミンさんは話してくれた。
「最近まで、最も辛いチリというと『ハバネロ』だったんですが、3~4年前に、バングラデシュ、スリランカ、インドのアッサム地方で発見された『ナガ・ジョロキア』というチリが、今では最強とされています。昨年から、ジョロキアを使ったホットソースが販売されました」と、ミンさん。このナガ・ジョロキア、「ゴーストペッパー」とも呼ばれ、辛さは平均的なハバネロの何と500倍!104万スコビルの強者だ。
さて、冒頭で「ほどほどならダイエットや美肌作りに最適」と書いたが、トウガラシやチリペッパー、カイエンペッパーなどに含まれるカプサイシンは、消化液やアドレナリンの分泌を促すため、食欲を増進する。辛い物を食べると、口の中に唾液が出てくるのも、その効の一端。また、血行促進や発汗作用もあり、ダイエットや夏バテ解消にも効果がある。暑さで食欲が減退した時に、辛い料理を食べるのは理にかなっているのだ。最近の研究では、血圧やコレステロール値を下げる働きもあると言われ、高血圧や心臓病の予防にも効果が期待されている。
しかし、その反面、度を超す辛さの物を食べ続けたり、無理をすると、消化器を痛めたり、舌で味を感じる味みらい蕾細胞が破壊され、味覚障害に陥る恐れもあるので、無茶な挑戦は極力控えたい。
[メキシコ・ユカタン料理] chichen itza
激辛レーティング ★★★☆☆
ホットソースの量により★から★★★★までレベル調節可
ダウンタウン・ロサンゼルスの南側に位置するコミュニティーセンター「Mercado la Paloma(Dove Market Place)」内にあるchichen itzaを戦場とした。このMercado la Palomaには、メキシコのアートやグッズを売るショップが入居し、その1つであるchichen itzaは、フードコート内の店といった風情。9年前にオープンした同店は、メキシコ料理の中でも、特にユカタン地方の料理を専門としている。店名もユカタンに栄えたマヤ文明のピラミッド型の遺跡と同名だ。レシピは、同店オーナーのギルバート Sr. セティーナさんの祖母の物で、伝統的なユカタンの家庭料理。カリブ海の料理の影響を受けており、柑橘類のジュースやバナナの葉を使うのが特徴。
セティーナさんに、「トコトン辛~い料理を出して」とお願いすると、「ウチの料理は、どれも基本的に辛くないですよ」という意外な答え。「料理は辛くないですが、付け合わせで出しているホットソースが激辛で、ウチの名物なんです」と言う。
そのホットソースだが、一方はオレンジ色、もう一方は黒っぽい緑色。どちらもハバネロから作られているが、オレンジ色の方は生のハバネロのソース、緑色の方はローストしたハバネロのソースだ。辛さはローストした方が上とのこと。
「ホットソースは販売もしています。オレンジの方はテーブルに置いてありますので、料理を頼んだ際は、自由に使用していただけます。緑色の方はとても辛いので、要請があった時だけ、特別にお出ししています」と、セティーナさん。
料理にぴったり合うがローストソースは極辛
では、いよいよその名物ホットソースを、料理に合わせてチャレンジしてみよう。
最初は、アペタイザーの「Panuchos」(2.19ドル)ブラックビーンのピューレを混ぜ込んだコーントルティーヤの上に、レタス、細切れのターキー、赤タマネギ、トマト、アボカドがどっさりのせられた食欲を喚起する一品。サルサソースの感覚で、オレンジの方を3、4滴ふって食べてみると、一気に辛さが訪れる。生のハバネロのフルーティーな風味もするが、やはり圧倒的な辛さが前面に。辛さを和らげるために甘~いハイビスカス(Jamaica)、お米(Horchata)、仏頭菓(Guanabana)のジュースが出されたので、すかさず助けを求めた(仏頭菓のジュースは1.99ドル、その他は1.59ドル)。これらはメキシコの名物ジュースなので、辛さを和らげる以外にも試してみたい。
次は名物のタマレを。「Brazode Reina」(4.19ドル)は、バナナの葉で蒸したタマレで、中にタマゴとホウレンソウ、カボチャの種のパウダーが詰まっている。さらに辛いと言われる、ローストホットソースを1滴かけてみた。最初は、タマゴとカボチャの種の風味が広がる。しかし、あっという間に香ばしさと酸味を伴って猛烈な辛さが口の中を襲う。辛さで舌がしびれ、顔面中に汗が吹き出す。これはかなり危険な辛さだ。
続いて、メインから「Cochinita Pibil」(8.29ドル)を。オレンジジュースと香辛料、achioteと呼ばれる種子で味付けした細切れの豚肉を、バナナの葉で蒸し焼きした一品。ローストソースをさらに数滴ふりかけると、顔面の汗が今度は滴り落ちる。だが、不思議と料理に合う。
「ユカタンに行ったらチリ=ハバネロ。誰もが毎食、生でも食べます」というくらいユカタン料理には欠かせないのがハバネロソース。辛さと折り合いを付けて、程々に味わいたい。
3655 S. Grand Ave. #C6, Los Angeles(Mercado la Paloma内)
☎ 213-741-1075
▶ 営業時間:Sun-Thu: 8:00am-9:00pm、Fri & Sat: 8:00am-10:00pm
▶ 休業日:Open 7 Days
▶ Webサイト:www.chichenitzarestaurant.com
[インド料理] RED FORT
激辛レーティング ★★★★★
ビンダルーのレベル「13」は本物の辛さ
激辛料理と言えば避けて通れないのがカレー。そしてカレーと言えば、もちろんインドと決まっている。Final Roundは、トーランスにある本格インド料理レストラン「REDFORT」を訪れた。同店オーナーのカルディップ・シングさんに、「インド人もビックリの激辛カレーを用意しておいてください」と事前に伝えておいた。もはや玉砕覚悟だ。
オーナーのシングさんは、頭にターバンを巻き、日本人が連想する典型的なインド人の風体。かなり期待が高まる。
「今日は、自慢のカリーを3品用意しています。ウチでは、通常辛さはお客様の要望に応じて1~10まで用意できます。ただし、私も美味しく食べられるのは7ぐらいが限度。一般的な日本人なら『マイルド』で十分でしょう」と、シングさん。
今日はどれくらいの辛さの物を用意していただいているのか、恐る恐る聞いてみると、「激辛と言われたので、『13』を用意しています」とのこと。ちなみに、レベル「13」(スパイシー・ビンダルーのみ)を完食できれば代金は無料になる。
小さな頃からカレーの辛さに慣れているインド人のシングさんも辛いと言うくらいだから、まさに魔の辛さ「13」。決死の覚悟を持って臨んだ。
辛さの中にも複雑な味
噴き出す汗は止まらない
まずは小手調べに、「Spicy Chilli」(チキン:11.95ドル、ラム:13.95ドル、シュリンプ:15.95ドル)から挑戦。オニオン、チキン、ベルペッパーなどをジンジャー、ガーリック、ペッパー、そして、自家製ホットソースでソテーした一品で、インド・パンジャブ地方の名物。このホットソースは、数々の辛みスパイスを24時間近く煮込んで作られた、濃縮ソースだ。この料理では辛さは「10」にしてもらったが、ソテーする段階でかなりの量のソースを投入していた。香りをかいでみると、蒸気だけでむせそうになる。だが、恐る恐る食べてみると、意外に平気?スパイスの旨味で、どんどんいけそう。だが、3口、4口と運んでいくうちに、口の中が炎上していき、額と口の周りに冷や汗に似た汗が噴き出してくる。「『10』でこの辛さか」と、絶望感がよぎる…。
続いてはカリー。「Spicy Haryali」(スパイシー・チリと同額)は色が緑で、一見異様。タマネギ、ホウレンソウ、ミント、シラントロ、グリーンチリからなるスパイシー・グリーンソースが、独特の色を出しているのだ。辛さはセラノチリを使用して、変化を付けている。これも辛さは10~11くらい。ミントとシラントロの爽快な香りが広がり、今までの辛さが一瞬解消されていくような錯覚を起こしたが、猛烈な辛さと刺すような痛みが口中を支配する。顔面が紅潮しているのが自分でもわかり、毛穴から一斉に汗が噴き出していた。激辛インドカリーの底力の前に、挑戦したことを後悔。
そのまま最後の大物「Spicy Vindaloo」(スパイシー・チリと同額)に挑戦。「ビンダルーは、インド・ゴア地方の名物カリー。普通でも辛いのですが、これは『13』。私でも辛いと感じますね」とシングさん。思い切って肉と共にひとすくい口に運ぶと、苦みに似た辛さが。ローストされた黒コショウの風味が、さらに辛さを倍増している。さすがは完食すれば無料のチャレンジメニュー。涙が浮かび、2口目がどうしても進まない。常人が頑張って食べられるレベルを軽く超越していると悟り、ギブアップ。その間も止めどもなく汗は肌を流れ落ちていった。計24種類のスパイスを配合しているから、辛さの中にも奥深い風味が感じられた。辛さがほどほどならば、楽しめただけに、これは自業自得。
単調になりがちな辛味を複数のスパイスで補っていて、ただ単に辛いだけではないというところはスゴイ。「インド料理の辛みは内臓に来ますので、食べた後も気が抜けませんよ。辛いけど、不思議と止められないのも特徴です。ウチの店で、『本当の辛さ』とは何かを体験してみてください」と、シングさん。インド恐るべし。
22231 Palos Verdes Blvd., Torrance
☎ 310-316-8500
▶ 営業時間:Lunch Mon-Fri 11:00am-3:00pm、Brunch Sat & Sun 11:00am-3:00pm、Dinner Daily 5:00pm-10:00pm
▶ 休業日:Open 7 Days
▶ Webサイト:www.redfortusa.com
おすすめのホットソース
ひと振りで激辛料理に早変わり
このホットソースがスゴイ!
冒頭で紹介した、ホットソース専門店「Light My Fire」のミンさんに同店イチオシのホットソースを紹介してもらった。
■「The Source」($129.99)
スコビルスケール710万という、世界で最も辛いホットソース。カンザスシティ産。1ガロンの水に1滴垂らしただけでも辛みを感じるレベル。
「このレベルの激辛ソースは、辛さの成分を分離、濃縮しています。純粋な辛みだけなので、味わいはありませんよ。あったとしても、舌がマヒして感じないでしょうが…」(ミンさん)。
■「Dave’s Gourmet Insanity Sauce」($6.50)
ホットソースの元祖で、20年前から販売されている、激辛好きなら誰もが知る有名ブランド。
■「Melinda’s XXXtra Hot Sauce」($4.99)
コスタリカ産のハバネロペッパーソース。ホットスケールは6の「Nice & Spicy」。
「フロリダを含め、コスタリカなどカリブ海諸国のホットソースは、バナナ、マンゴー、キウィ、パイナップル、ピーチなどのフルーティーな風味が付いて味わい深いですね。チキンなどの味付けにピッタリ」(ミンさん)。
■「Hog’s Ass」($5.99)
風味の良い、フロリダ産のガーリック・ハバネロソース。ホットスケールは8の「Pleasant Burn」。
「ホットソースには、地域によって特徴があります。フロリダ、ジャマイカ、コスタリカ、ベリーズなどは、フルーティーでチキンに合う物、ニューメキシコやアリゾナはハバネロ系のホットソース、ルイジアナだと、タバスコ&ビネガーといった具合。当店で売っているホットソースの60%は米国産なので、日本へのユニークなお土産として1本いかがですか?」と、ミンさん。
激辛料理に胃袋が疲れても、観賞用として飾っておけるという基準で、ボトルを選ぶというのも一手かも知れない。
※このページは「2009年10月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。