ライトハウス・サンディエゴ版編集長、吉田聡子が、サンディエゴ生まれのブランドを訪問。世界に羽ばたいた物から、ローカルにこだわる物まで、名品の背景にある物語を探ります。
Dr. Bronner’s / ドクター・ブロナーズ
以前からDr. Bronner’sのリキッドソープを愛用していた。ナチュラルかつオーガニックな製品で、しかも、これ1本で髪も顔も体も(歯も!)洗えるとあり、キャンプやサーフィンのお供としてこれ以上ない理想的な石けんだからだ。
そのDr. Bronner’sの始まりは、1858年。当時ドイツにいたマイク社長の祖父の祖父が石けん職人となり、同社を創業。以後、5世代にわたり受け継がれ、現在に至る。
160年近い同社の歴史の中で、転機をもたらし、現在の事業の礎を築いたのは3代目、マイク社長の祖父にあたるエマニュエル・ブロナーだ。
1929年にドイツから一文なしでシカゴに移住したエマニュエルはすぐに石けん業界のコンサルタントとして名を成した。が、ドイツにいる両親がホロコーストで亡くなったことをきっかけに、キャリアを捨て、世界平和を訴えることを決意。ロサンゼルスへとやって来た。
「ロサンゼルスで祖父がやったことは公園での演説。当初、石けんは、演説を聞きに来た人へのプレゼントだったんです。やがて演説を聞く前に石けんだけをもらいに来る人が増えた。そこで、彼は自分のメッセージを石けんのラベルにして売るようになったんです。石けんを売りたかったわけじゃなくて、自分の訴えを広めたかったんですね」(マイク社長)。
その後、サンディエゴに拠点を移したDr. Bronner’sだが、今もラベルデザインにはエマニュエルの伝えたかったメッセージが書かれている。オーガニックな自然素材を使い、フェアトレードの仕入れを実践している同社の製品作りの根底には、世界がより良いものになることを願い、人も動物も自然界のあらゆるものは一つ(ALL-ONE!)であるというエマニュエルの理念がある。
1時間以上におよんだ取材の中で、マイク社長は今後の事業展開や新製品の話は全くしなかった。話すことは、会社がめざす”ALL-ONE!”の世界について、そしてその実現のために自分たちがしている取り組みについて。その姿に、公園で演説をしていたエマニュエルのイメージが重なった。世界各国に販路を拡大した今でも、製品を売るというより、より良い世界を実現するための手段として製品を作っているような印象を受けた。
ますます好きになった。
1225 Park Center Dr., Vista
※上記住所は会社および工場で、販売や見学のツアーは通常行なっていません。製品はオンラインショップ、スーパーマーケットなどで販売
☎ 844-937-2551
▶ 営業時間:平日 7am~3:30pm
▶ Webサイト:www.drbronner.com
(ライトハウス・サンディエゴ版 2016年11月号掲載)
※このページは「ライトハウス・サンディエゴ版 2016年11月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。