ライトハウス・サンディエゴ版編集長、吉田聡子が、サンディエゴのブランドを訪問。世界に羽ばたいた物から、ローカルにこだわる物まで、名品の背景にある物語を探ります。
Fruit Craft / フルーツクラフト
「糖分が含まれている食材なら何でも発酵させればアルコールができる。だけど、世の中で醸造酒といえば麦芽で作るビールと、ブドウで作るワインがほとんど。ブルワリーとワイナリーが盛んで醸造の文化が根付いているサンディエゴなのにフルーツでお酒を作る醸造所はない。誰もやっていないなら自分たちがやってみよう。それがFruit Craftの始まりさ」。
そう語ってくれたのはFruitCraftの創業者の一人、アレン。彼が双子の兄弟であるブライアンとCalifornia Fruit Wineという名で醸造を始めたのは2009年のことだ。
特に醸造の知識も経験もなかった二人はまず自宅のガレージを醸造所にして試行錯誤。醸造するとおいしいのはどういったタイプのフルーツかや、果実の繊細な香りを残すためには低い温度で醸造するといいことなど、体験を通してノウハウを構築していった。
その後、ファーマーズ・マーケットで販売をして手応えをつかみ、本格的にビジネスとして始動したのは11年。2017年の6月にFruitCraftとブランド名を変え、ヒルクレストにテイスティングルームをオープンした。
FruitCraftのワインは現在、パイナップル、マンゴー、ザクロなど7種。甘いデザート酒のような味をイメージしていたが、必ずしもそうでもなく、例えばパイナップルはパイナップルの芳醇な香りはありながらも飲み口はドライだ。
「フルーツワインは甘くてお酒じゃないと思っている人もいるかもしれないけど、そんなことないんだ。糖度で見たら、ワインで使うブドウは度あることもあるし、マンゴーは度くらいだしね。フルーツの風味を人工的に添加したワインもあるけど、僕らが作っているのはそうじゃない、フルーツそのものから醸造したワインなんだ」とアレン。「ビジネスだから、もちろんお金は大事だけど、でもビジネスの目的はお金じゃないはず。僕らは自分たちの利益を社会的ないいことに還元していくような会社でありたいんだ」と情熱いっぱいで話が尽きない。
実は偶然なのだが、この取材をする少し前に、同社のワインが日本に輸出販売されることが決まったそうだ。大量生産ではない、サンディエゴ発のクラフトマンシップあふれるフルーツワイン。海を越えて日本で受け入れられたら嬉しい。ぜひ応援したい。
1477 University Ave., San Diego
☎ 877-484-6282
https://fruitcraft.com
(2017年10月号掲載)
※このページは「ライトハウス・サンディエゴ版 2017年10月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。