ライトハウス・サンディエゴ版編集長、吉田聡子が、サンディエゴ生まれのブランドを訪問。世界に羽ばたいた物から、ローカルにこだわる物まで、名品の背景にある物語を探ります。
Setting Sun Sake Brewing Co. / セッティング・サン・サケ・ブルーイング・カンパニー
ビール醸造家として約10年の経験を持ち、あのStone Brewingでも働いていたというジョシュ・ヘンブリ―が独立してクラフトブルワリーを立ち上げたのは2008年のこと。当初はビールの醸造をしていたが、2013年からSake、つまり米と水と麹で作る酒を造ろうと方向転換。研究とレシピ開発に3年をかけ、2016年にウエスト・コースト・スタイルの酒を醸造するSetting Sun Sake Brewing Companyをオープンさせた。
「ビールはそこら中でみんなやっているから、違うことをやりたいなと考えるようになったんだ。日本酒の醸造はビールより難しいし、サンディエゴどころかアメリカ全土でも数えるほどの醸造所しかない。だからこそチャレンジしたかったんだ」(ジョシュ)
ビールの醸造はプロでも酒の醸造は独学で一からのスタート。糖化の過程とアルコール発酵を別々に行う「単行複発酵」のビールと違い、酒は糖化とアルコール生成を同時に行う「平行複発酵」であるので、最初は全てが大変だったとジョシュは言う。酒と言えば水の硬度も大事だと思うが、ジョシュはその水を作ることからやっているそうだ。ミラマーにある醸造所とテイスティングルームは実験室のような場所でもあり、トライアル&エラーを繰り返して、今も研鑽を積み続けている。
「僕はアメリカにおいて日本酒の楽しみ方を広めたいとも思っているんだ。合う料理はすしだけじゃないよって。何より、アルコール度数を高めるためにビールに入れる”Sake Bomb”という飲み方ではなく、風味を堪能するものだってことを伝えられるようでありたい」(ジョシュ)
ジョシュのやっていることを面白がって、日本酒の醸造家がテイスティングルームを訪ねてきたことがある。一方で、多くの日本人にはあまり興味を持ってもらえていないようだとジョシュは肩を落とす。
いわゆる「日本酒」という枠で捉えると、ここの酒は異色だろう。でも、すしとすしロールは別物でそれぞれおいしいし、すしロールは伝統的なすしを壊すことはなく、共存している。そういう新しい動きが日本酒に出ていることは面白いなと個人的には思う。
「目標は世界進出」と、笑いながら、でも真剣に答えてくれたジョシュ。メイド・イン・サンディエゴの酒の今後に注目したい。
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☎ 951-757-1393
▶ 月~木3:00pm~9:00pm、金土12:00pm~10:00pm、日12:00pm~9:00pm
▶ Webサイト:settingsunsake.com
※このページは「ライトハウス・サンディエゴ版 2018年8月」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。