ライトハウス・サンディエゴ版編集長、吉田聡子が、サンディエゴ生まれのブランドを訪問。世界に羽ばたいた物から、ローカルにこだわる物まで、名品の背景にある物語を探ります。
Taylor Guitars / テイラー・ギター
テイラーギターの名は音楽好きの方ならまずご存知のはず。アメリカのアコースティックギターの老舗メーカー、マーチンやギブソンと並ぶ知名度を誇るテイラーギターは、故プリンスをはじめ、ジェイソン・ムラーズ、テイラー・スウィフトら多くの人気ミュージシャンに愛好家がいることで知られる。その主工場はエルカホンにあり、一般向けに無料のファクトリーツアーを実施しているというので行ってきた。
案内をしてくれたのは、普段はリペアを担当しているというパトリック。店内で簡単にギターの成り立ちを教わった後、材料の木が置いてある倉庫から、ボディーを作る部門、ネックを作る部門、組み立て、仕上げまで、各部門を約1時間かけて見学した。
テイラーギターが他メーカーと一線を画しているのは、革新性だ。代表的なのはネックを簡単に外せる「NTネック・ジョイント」という独自の構造。アコースティックギターではこれまで、弾きやすさにかかわる弦の高さを調整するには複雑な作業が必要で、理想を完璧に実現することは必ずしも容易ではなかった。しかし、ネックを取り外せる作りにすることで、その常識を覆したのがテイラーギターなのだ。
ファクトリーツアーでも、手作業のクラフトマン的な工程の間に、先端技術を取り入れた機械を使った工程があることが印象的だった。
たとえば、伝統的には数週間かけることが当然とされている塗装&乾燥の過程は、テイラーギターでは機械を使った「UVフィニッシュ」と呼ばれる方法で、数秒で終える。これはただ時短になるというだけでなく、音も良いし、後に変質がしにくいという特長もあると言う。
テイラーギターの技術革新がただ効率を追求した結果でないことは、多くのミュージシャンに愛されていることからも分かる。ツアーにはイギリスからやって来た青年もいて、「テイラーの音を聴いた瞬間、これだ、求めてたのは!って思ったんだよ」と熱く語ってくれた。
テイラーギターは1974年、ギターに魅せられ、小さなギター製造工場で働いていたボブ・テイラーとカート・リスタグが周囲から借金をしてその店を買い取ったことが始まりだ。その店の名は「アメリカン・ドリーム」だったというのはなかなか面白い事実である。
1980 Gillespie Way, El Cajon
☎ 800-943-6782
▶ 営業時間:平日 8am~4:30pm
▶ Webサイト:www.taylorguitars.com
※ファクトリーツアー(無料・予約不要)は月~金曜1:00pm~。詳細はウェブで。
(ライトハウス・サンディエゴ版 2017年7月号掲載)
※このページは「ライトハウス・サンディエゴ版 2017年7月号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。