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現地情報誌「ライトハウス」が過去に取り上げた、アメリカ芸能界ゴシップ情報や、著名人・有名人へのインタビュー記事など。
ライトハウス編集部
【ロサンゼルス講演会直前インタビュー】
昭和女子大学学長・坂東眞理子
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新書『女性の品格』の大ヒットで、一躍時の人となった坂東眞理子さん。現在、昭和女子大学学長として、教育の現場で「品格」ある女性の育成に携わる傍ら、講演、TV番組出演依頼で、多忙なスケジュールをこなす。そして、来たる8月31日、レドンドビーチ・パフォーミングアーツセンターにて、ロサンゼルス初の講演会を実施する。当日は「品格」だけに留まらず、幅広いトピックでお話しいただく。そのさわりを坂東さんに聞いた。
社会や周りの人の人格を尊重する
思いやりの心をいかに形に表すか
坂東さんの指摘する「品格」とは、端的にはどのようなことですか?
人間性だと思います。自分中心でなく、社会や周りの人の人格を尊重すること、つまり他者に対する思いやりです。そうした心をいかに形で表すか。その形と心のバランスが取れている人が「品格がある」と言えます。
例えば、装いならばTPOにふさわしい振る舞い、期待される役割を考えて装わなければなりません。自分の好きなものを、好きなように着れば良いのではないんです。当たり前のことが当たり前にできる、挨拶や基礎的マナーを身に付けていることが大切だと思います。
日本人はかつての美徳を失いつつあるようです。それを取り戻すには、どうしたら良いとお考えですか?
昔は親たちが、これだけはどうしても子供に身に付けさせなければならない、という風に、基礎的な躾をしていたと思います。今の日本の親たちは、子供をのびのびと育てたい、個性を発揮するように生きてほしいということで、躾を「押さえつける」「抑圧する」という風に捉えてしまっています。基礎的な習慣、マナーを身に付けさせるというのは、親から子供へのとても大事なプレゼントだということを、もう1度親が認識する必要があると思います。
相手のミスをとことん突いて、自分の権利を振りかざす、いわゆる「モンスター・ペアレンツ」や「クレイマー」が最近増えてきていますが、私は権利を持つ人こそ、それを大事に行使しなければならないと思います。権利を振りかざすと、お互いの信頼関係がなくなります。「モンスター・ペアレンツ」が権利を振りかざすことで、のびのびとした良い教育がかえって受けられないという被害を、子供が被るんですよと言いたいですね。
また、「クレイマー」と言えば、お店に対して消費者が尊大に振る舞うことも「社会の品格」を失わせています。物を作ったり、サービスをしてくれる人に対する感謝を、いくらお金を払っているといっても忘れてはならないと思います。
官僚という男社会で仕事をしてきて、ご苦労は?
官僚をやっていた時は、圧倒的に女性の数が少なかったので、珍しく見られました。何をしても、みんなからジロジロと遠巻きにして見られている感じです。女性のキャリアはどういう風に働くんだろう、どういう風に口を利くんだろうという感じで見られていました。
当時、男性は女性と働くことに慣れていませんでした。女性は男性と同じように昇進しなくても気にしない、男のように厳しい仕事をしたくないんじゃないかと、思い込んでいる人が多かったんです。差別しようとか、いじめようというのではなく、できるだけ楽な仕事が良いだろう、転勤させたらかわいそうとか、逆に変に気を遣っていたんですね。ですから、そうじゃないんですよと、話を聞いてくれる人を通じてやんわりと伝えました。直接人事当局に申し入れるのではなく、間接的に伝わるようにするというのが日本的なやり方です。アメリカだったら、なんて持って回ったやり方なんだと思うんでしょうけどね。
正確な自己認識による
「等身大の自信」を持つ
アメリカに住む日本人に求められる生き方とは、何だとお考えですか?
まず、「等身大の自信」を持つということだと思います。自分の身の丈に合った自信。「日本人はどの国の民族よりも優れているんだ」というようなうぬぼれも良くないですし、逆に「所詮日本人はダメだ」と、卑下して自信を失い過ぎるのも良くありません。
自分の実力をしっかり見つめて、「自分はここまではできる」「ここが足りない」というような正確な自己認識、それを私は等身大の自信と呼んでいます。それを基にして、少しでもできることを積み重ねていくことが必要だと思います。
アメリカ留学中に感じた、アメリカの良いところは?
1980~81年に、ハーバード大学の客員研究員をしていた時、「ここは何でも自分の思っていることを言っていいんだ」「率直に発言していいんだ」と感じたのが新鮮でした。というのも、日本で公務員の会議などは、まず役職の偉い人が口を利いたり、誰が発言するか会議の流れ、空気を読んでから発言しないといけませんでしたから。
あと、アメリカ人はとてもよく誉めてくれますね。日本では誉められることがなかったので驚きました。そして、自分に少しだけ自信が付きました。確かに言葉が通じなくて悔しい思いをしたこともありますが、全体としてアメリカ人の率直さ、ボランティア精神に感嘆しました。当時貧乏留学生だった私を、見返りや報酬なしで迎えてくれた草の根の方たちに、アメリカ社会の良さを痛感しました。
ロサンゼルス講演会で期待したいことは何ですか?
当日は、私が日本社会で「女性はこういう風に振る舞った方が良い」という自分の経験から得た考えをお話しすると思いますが、それに対してアメリカ社会に住んで、働いていらっしゃる方たちがどういう風に受け止めていただけるか、意見を聞くのがとても楽しみです。
私の言っていることが日本のスタンダードなのか、それとも他の社会にも通用するスタンダードなのか。私は自分の本に書いたことは、日本だけでなくアメリカ社会でも通用することではないかと期待しているので、ぜひ会場の皆さんからご意見を聞きたいです。
南カリフォルニア在住の日本人にメッセージを
日本でも女性たちの役割、生き方や働き方、求めるものは、とても大きく変わってきています。今、アメリカに住んでいらっしゃる方たちも、色々な生き方にチャレンジしていらっしゃると思いますが、それがどういう方向に行くのか、私と一緒に考えていただけたら、とてもうれしいです。8月31日に、会場で皆さんにお目にかかれることを楽しみにしています。
【坂東眞理子 ロサンゼルス講演会】
■日時:2008年8月31月(日)・午後3時30分開演
■会場:Redondo Beach Performing Arts Center
1935 Manhattan Beach Blvd., Redondo Beach
■チケット:(全席自由)
■チケット購入:Mitsuwa Marketplaceチケット販売窓口
三省堂書店
All American Tickets(☎ 1-888-507-3287)
ライトハウス(☎ 310-782-1269・担当:明子)
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◆ PROFILE ◆
ばんどう・まりこ
富山県出身。官僚、評論家。現在、昭和女子大学学長を務める。東京大学文学部卒業後、1969年に総理府入省。80年よりハーバード大学へ留学。埼玉県副知事、在豪州ブリスベン総領事(女性初の総領事)、内閣府男女共同参画局長等を経て2003年に退官。06年9月発売の新書『女性の品格』は、累計300万部を超えるベストセラーとなった