ちょっとコワイ中国料理

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Mr.世界(ちょっとコワイ中国料理)

以前、中国料理には、「虫」という字を使った料理がいろいろある、と書いたことがある(2007年10月1日号)。
 
もちろん、実際に虫を料理しているわけではなく、中国料理の材料などに使われる、虫ヘンの漢字のことである(虾、蛄、蜆、蛞、蛙、蚌、蜮など)。
 
このあいだチャイニーズ・レストランで食事をしていて、壁にはってあるタンザクのメニューをぼんやり眺めていたら、虫ばっかりじゃない、中国料理って、もっとコワイ料理がたくさんあるぞ、ということに気がついた。
 
下水、猪血、獅子頭、猫耳、臭、…
 
日本人はなまじっか漢字が読めるだけに、メニューの漢字表記が気になってしまう。
その最たるものが「下水」だろう。
 
そう、中国では下水を使って料理するの、知ってました?
「下水湯」(シャーシュウェイタン)というのは主に台湾の料理で、豚のモツや鶏の砂肝などの内臓類を、ショウガやネギと和えて煮込んだ料理のこと。
とてもポピュラーな料理だ。
 
台湾では下水すなわちモツのことである。
「大腸猪血湯」(ダーチャンチューシュエタン)も、台湾系の店でよく目にする。
これはそのものずばり、大腸と、血を豆腐状に固めたものを入れたスープ。ただし猪とはイノシシではなく、ブタのことだ。
 
台湾ほど豚をすみからすみまで使う国はない。
 
「獅子頭」(シーツトウ)といって、もちろんライオンの頭ではなく、豚の肉団子の煮つけもある。これはうまい。
「臭豆腐」(チュウトウフ)はご存じの方も多いだろうが、その名のとおり臭い豆腐。台湾の商店街を歩いていれば、数十メートル先からこれを売っている店があるのがわかる。
どういう種類の臭みかというと、そうですね、どちらかというと排泄物に近いですね。
鍋にしたり、揚げ豆腐にして料理するのだが、クサヤみたいなもので、慣れれば結構ヤミツキになる芳香である。
 
次に、「猫耳」(マオアール)。
じっさいに犬や猫を食べるお国柄だから、猫の耳を集めてきて料理したってそれほど不思議はないのだが、このばあいは猫の耳の形をした麺のこと。
 
イタリアにもオルキェッテ(耳)という名のパスタがあるが、この猫耳はもっとモチモチした食感で、むしろニョッキに似ている。
でも、「猪耳」(チューアール)、つまり豚の耳はホンモノで、こちらは上海の前菜だ。コリコリしてうまい。
「夫妻肺片」(フーチーピィエン)は、なにかの動物のツガイから肺を切り出して料理したようにも見えて、コワイというか、かわいそうだが、この名は故事に由来する。
牛の内臓などが捨てられているのを見た夫婦が、「もったいない!」とそれらを拾ってきて料理したらうまかった、ということで、本来は「廃片」だったのを「肺片」に書き直したそうである。四川料理で、とてもカラい。
 
下水といえば、もっと怖い料理が中国にあると聞いたのを思い出した。
下水油である。
 
中国では、ホテルやレストランの下にある排水溝に溜まった油を集め、食用油として売っている例が多くあるそうだ。
中国に行ったら、名前だけコワイ料理とホントにコワイ料理を見分ける必要がありそうですね。
 
LAではここ!
「味」は30点満点、「予算」は二人分です
 
Boiling Point(沸點臭臭鍋)
そのものずばり、臭豆腐の鍋料理を中国語の店名にしている店。臭豆腐以外の鍋もいろいろある。台湾料理は複雑で洗練された料理ではなく、素朴で家庭的なものだから点数は低いが、それなりの魅力がある。
味:17 予算:$20
153 W. Garvey Ave., Monterey Park
☎626-288-9876
* ハシエンダハイツ店
(2020 S. Hacienda Blvd.・☎626-369-0928)もあり
Daily 11:00am-11:00pm
 
Ay-chung Flour-Rice Noodles(阿宗麺線)
どの店が台湾的といって、この店の右に出るものはないといっていいくらい、台湾的な店。猪耳はじめ、大腸の料理もいくつかある。麺類もいろいろ。台湾の食文化を知るにはいちばんてっとり早い。
味:15 予算:$20
140 W. Valley Blvd. #208, Monterey Park
☎626-280-0186
Sun-Fri 11:00am-10:00pm
Sat 11:00am-11:00pm
 
(2009年11月1日号掲載)

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