酢豚の文化

ライトハウス電子版アプリ、始めました
Mr.世界(酢豚の文化)

みなさん、あけましておめでとうございます。
今回から、ハワイのみなさんにもお届けすることになりました。
 
新年にちなんだテーマを、と思ったのだが、10数年も書いていると新年のネタも思いつかなくなったので、酢豚のはなし。
なぜ酢豚なのだ?というのは、最後まで読んでいただければわかりますよ。
 
さて読者は、アメリカナイズしたチャイニーズ・レストランに入ると、周囲からある独特のサウンドが聞こえてくるのに気づいたことはないだろうか。
 
「カシャ・カシャ」という、金属がプラスティックをこする音だ。
プラスティックの皿に盛られた料理を、フォークですくいながら食べる音なのである。
 
中国人や日本人なら箸でつまんで食べるから、こういう音は発生しない。
そもそも中国料理は、いくつかの料理を、みなでシェアして食べるものなのに、アメリカナイズした店では、各人がそれぞれ好みの料理を注文する。
 
チャイニーズ・レストランに、数人のアメリカ人がやってきて、テーブルに座ったとする。
ひとしきりメニューをみて、ひとりが「スイート・アンド・サワー・ポークにするよ」というと、次のひとが「僕もそうしよう」、三番目のひとも「じゃ私も!」となることがよくある。
しかして料理が登場すると、一斉にクダンの音が始まるわけだ。
アメリカ人は、これがチャイニーズの代表的一品だと思っているようだが、たとえばWikipediaのスペイン語版には、「アメリカンとチャイニーズのフュージョン(融合)料理なり」とちゃんと書いてある。
 
中国に存在しないわけではない。
 
広東料理だ。
 
酢豚という名は日本での名称で、中国では「口古嚕肉(クールーロウ)」「古老肉(クーラオロウ)」 または「糖醋肉(タンツーロウ)」と呼ばれる。
Wikipedia中国語版によると、その名称の由来にはふたつの説があるそうだ。
 
ひとつは、料理したてのこの料理は甘酸っぱい香りが立ちのぼって食欲がわき、ついヨダレが出て口をムニャムニャとしてしまう(口古嚕とはムシャムシャとかブツブツとかいう擬態語)から。
 
もうひとつは、悠久の歴史がある古い料理だから、古老肉という名で呼ばれ、それが訛って口古嚕肉になった、というのである。
糖醋肉というのはそのあじつけ(甘酸っぱい)を説明したものだ。
 
僕はこの料理は決して嫌いではない。
気にいらないのは、アメリカによくある、缶詰のパイナップルが入っているやつ。
パイナップルは肉を柔らかくするためと、消化吸収をよくするためという理由があるらしいが、缶詰ではなくフレッシュなものだったらもっとずっとおいしいだろう。
 
その点、ハワイにはいうまでもなくフレッシュでうまいパイナップルがたくさんある。
豚も、ハワイを含めポリネシアではもともとメインの食材のひとつで、とてもうまい。
 
というわけで、ハワイの読者にお届けする第一回、ハワイの酢豚は特別においしいのでは、というはなしである(すみません、僕はハワイでは食べたことありません)。
 
LAではココ!
「味」は30点満点、「予算」は二人分です
 
Happy Nest(鳥巣)
セリートスのミニ・チャイナタウンに以前からあった台湾系の店が、店名も外観も内装もそのままでオーナーが代わり、上海系になった。前にも増してうまい。上海糖醋肉という、広東系とはちょっとちがうリブの酢豚がある。
味:22 予算:$20
18902 Norwalk Blvd., Cerritos
☎562-860-8843
Thu-Tue 11:00am-9:00pm
Closed on Wednesdays
 
Taiwan Deli(享南小館)
英語のなまえはTaiwanだが料理は四川。ここは何を食べても非常にうま
いが、酢豚はアメリカン・チャイニーズとはまったくちがううまさ。
味:24 予算:$20
17110 E. Colima Rd., Hacienda Heights
☎626-965-3868
Daily 11:00am-9:00pm
Open 7 Days
 
(2010年1月1日号掲載)

「ミスター世界の食文化紀行」のコンテンツ