世界的なレストランガイドといえば、ミシュラン。
…というのがつい数年まえまでの常識だった。
日本でも、今年は東京版が新しくなり、京都大阪版もでて、ひとしきり話題になった。その権威がおとろえたわけではない。
けれど、僕にいわせれば、レストランガイドの利用価値は、いまやZagat (ザガット、ガにアクセント)が世界中でミシュランを凌いでいるといってもいいと思う。
本として発行されているものもさることながら、ザガットはオンライン版が便利で(www.zagat.com)、なんと全米50州、世界100ヶ国をカバーしているのだ。
ミシュランはヨーロッパと日本、香港と、アメリカ四都市だけである。
しかし、それ以上に、このふたつのガイドにはいくつかのちがいがある。
ミシュランは、専門の調査員が各店をまわって評価している。調査員の数には限りがあるから、掲載されている店の数はその地域の全レストランにくらべるとごく少数だ。
ザガットは、あくまでも一般のひとたちの人気投票で、投票するひとは数千人いるらしい(僕もそのひとりです)。し たがって掲載店の数がはるかに多い。
味の点でも特定のひとの味覚や主観ではなく、大勢のひとの最大公約数で選ばれているから、あたりはずれが少ない。つまり、信用できるというわけだ。
そういえば、まったく一個人の主観だけで店を選んで雑誌にのせているひとがどこかにいましたっけね。なんといいましたっけ、ミスターなんとかいうひと。あれって信用できるものでしょうか??
でも、じつは人気投票というところには、落とし穴もあるのだ。
ひとつは、有名な店だったり、セレブ御用達の店だったりすると、高得点になってしまうきらいがあること。「あのセレブも食べにいくのだから、おいしいにちがいない!」、と思い込んでしまうのである。
セレブだからといって味覚が優れているとか、多くのひとたちの好みを知っている、というわけではないのだけど。
僕自身、そういう店に行ってみたら、値段が高いだけで味はちっとも満足しなかった、という経験はなんどもある。
もうひとつは、地域によって格差がでること。
たとえば、オレンジカウンティー南部に住んでいるひとたちは、サンタモニカやビバリーヒルズまで食べに行くことが少ないのだろう、オレンジカウンティーの中だけでほかの店と比較して高得点を投票してしまうが、ロスアンジェルス地域全体のレベルで評価したらもっと点数は低くなるはず、ということがよくある。
もうひとつは、イタリアンやフレンチなどはいいのだが、エスニックになると、その国の本来の料理をよく知っている読者はそう多くないからだろう、アメリカナイズされた店が高得点になるきらいがある。この点では、ミシュランが、たとえばイタリア料理でもフレンチっぽい店が高い評価を受けるきらいがあることと似ている。
それでもザガットは、説明文がウィットに富み、読み物としてもおもしろい、ということと相まって、利用価値が高いガイドであることはまちがいない。
※当コラムで紹介している店は、必ずしも味だけではなく、個性のある料理、特徴のある店、オーセンティックな店、場所柄珍しい店、といった基準で選んでいる。
LAではココ!
「味」は30点満点、「予算」は二人分です
Ado
普通の人家を改造した小さなイタリアン。二階が特にロマンティック。ここのパスタはすばらしい。ほんとのアルデンテはもちろんのこと、北イタリア的な繊細で豊満な風味のソースが印象的。スタッフも非常に感じがよい。
味:26 予算:0
796 Main St., Venice
☎310-399-9010 www.adovenice.com
Mon-Sat 5:30pm-10:30pm, Sun 5:30pm-9:30pm
Open 7 Days
Tradition By Pascal
オレンジカウンティの本格的フレンチの走りともいえる、古くからあるパスカル。僕にとっては本店よりもその隣にある同じオーナーのフレンチカフェが気に入っている。パリさながらのメニューで、店外のテーブルで食べるランチはとても気持ちがいい。
味:23 予算:
1000 N. Bristol St., Newport Beach
☎949-263-9400 www.pascalnewportbeach.com
Lunch: Mon-Fri 11:30am-2:30pm
Dinner: Mon-Sat 5:30pm-9:30pm, Sun 4:00pm-8:30pm
Open 7 Days
(2010年1月16日号掲載)
ザガットの利用価値
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