前回触れたように、サーバーが愛想よくすること、それだけで「いいサービス」とはいえない。
それが出発点だからだ。
レストランの広告に、「新鮮な材料を吟味し…」と書いてあるのをよく見るけど、あれとおなじことだ。
それがあたりまえで、「うちは古い材料を吟味しないで使うけど、料理の腕にかけては一流です」なんていう店はない。
愛想が悪かったらはなしにならない。
ときには、愛想が悪いサーバーが、チェックを持ってきたときに突然ニコニコして、「Please come again!」かなんかいうこともある。
チップ目的なのはミエミエだ。
あるいは、客に「How do you like yourfood?」とか「Is everything OK?」とか聞くことがいいサービスだ、と信じているサーバーも多いみたいだが、僕にいわせれば、それはちがう。
そちらは感想を聞きたいかもしれないが、こっちは食事や会話を突然妨害されて、答えを強いられるからだ。
あるレストランで真剣にビジネスのはなしをしているときのこと、その手の質問を何度も何度も聞きに来たうえ、ついには「テーブルクロスをとりかえましょう」ときたもんだ。
一所懸命なのはわかるのだが、このときはあやうくキレそうになった。
ではなにがいいサービスなのだ?
それは、こちらがサービスを欲しているときに、素早く、そして的確にそれを与えてくれること、だと思う。
たとえば、メニューをもってくるタイミング。ちょっときどった食事のときは、テーブルについてすぐよりも、アペリティーフを注文し、ちょっと飲みはじめたときがいちばんいい。
食事中なにかが欲しいとき、サーバーを呼びとめるのにひと苦労、ということがよくあるが、逆に、サーバーが自分の持ちテーブルに常に目を配っている店、あるいはマネージャーが常にレストラン全体に目をひからせている店では、ちょっとそぶりをみせただけで、すぐ来てくれる。
ワインや水のグラスが減ってきたら、すぐさま継ぎ足す、ナプキンを床に落とせば、無言で新しいものにさっと代えてくれる。
なにかが欲しいといっても、たとえばフランスの一流店で、ケチャップをたのんだらどうだろう。
それってバカにされて、もって来てくれないんじゃないの?
それそれ、そこにこそサービスの神髄があるのだ。
たしかに店のほうは、折角の料理をわかってくれないと思って、不快に思うかもしれない。しかし、客が欲している以上、それをいやな顔ひとつせずサーブすることこそが、本当のいいサービスなのである。
むかしパリのある一流レストランが、アメリカ人の客にコカコーラを出したがためにミシュランの星を減らされた、とうわさになったことがある。
これは滅相もないことで、コカコーラを飲みたい客にはそれを出す。それで星を減らすようなミシュランではない。
フランスの一流店では、サービスはひとつの芸術のように考えられていて、サーバーのヘッドは、トップシェフと同じ給料だという。
一流の料理と一流のサービス、この両者があいまって、はじめて最高の食事となるのである。
LAではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
La Botte Ristorante
LAで僕のいちばん好きなイタリアン。料理ももちろんだが、イタリア風のノリのいいフレンドリーさだけではなく、痒いところに手が届くサービスが最高。
味:28 予算:$150
620 Santa Monica Blvd., Santa Monica
☎310-576-3072
www.labottesantamonica.com
Lunch: Fri 11:30am‒2:00pm
Dinner: Daily 5:30pm‒10:30pm
Open 7 Days
Water Grill
サーバーがすべての料理の内容をしっかり説明できて、ワインのお勧めも的確、そんな店の典型がここだ。遠からず近からずというサーバーとの距離感もちょうどいい。
味:27 予算:$120
544 S. Grand Ave., Los Angeles
☎213-891-0900
www.watergrill.com
Mon & Tue 11:30am‒9:00pm
Wed‒Fri 11:30am‒10:00pm
Sat 5:00pm‒10:00pm
Sun 4:30pm‒9:00pm
Open 7 Days
(2010年4月16日号掲載)
ホントのサービスとは?
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