このあいだ、カラマリ・ステーキを食べていて、ふと気がついた。
イカのことを英語では、種類によって「cuttlefish」または「squid」という。
むかしはアメリカではイカのステーキは「squid Steak」といっていたという記憶があるが、いつから「calamari steak」というようになったんだ?
そういえば、イカを輪状に切って揚げたイカリングもフライド・カラマリというのが普通だし、いまは食材としてのイカのことをいうときは、カラマリとよぶことが定着したようだ。
英語って、食材と、もとの生きものとで由来のちがう語彙を使うことがよくある。
「pork」はラテン語系で、「swine」や「pig」はケルト系だ。「beef」と「cow/ox」についても同じことがいえる。
生きたものを扱うイギリス平民と、それを肉として食べるフランス語上流階級とがむかしは分離されていたかららしいけど、いまカラマリを食べる人々と、生のイカを扱う人々が分離しているということなのだろう。
カラマリはイタリア語だから、アメリカでイカを食べる習慣はイタリア料理から普及したという証拠だ。
はじめてカプリに行ったとき、地中海を一望に見渡す断崖の上のレストランで、はじめてカラマリ・フリッティ(フライ)を食べた。
イカから地中海の香りが湧き出て、真っ青なナポリの空にぴったりの、カラッと揚がったカラマリに、チュッとレモンをしぼり、名もないドライな白ワインを飲みながらつまんだあの味は、いまでも忘れられない。
ちなみにアメリカのレストランには、トマト味のディップにつけて食べろ、というところが多い。これはイタリアではありえないことで(観光客むけの店は知らないが)、あれではせっかくのイカの風味がなくなってしまう。
僕はアメリカで、はじめてのイタリアン・レストランに入ったときは、まわりのテーブルを見渡してフライド・カラマリを食べている人たちをみつけ、トマトディップがテーブルに出ていれば、「あ、この店は期待できないな」、ということになる。
イカを使ったパスタもホントにおいしい。アメリカによくあるような、エビやイカ、貝類が盛りだくさんの、前菜というよりメインコース分量のパスタ。
あれはアメリカだけのもの…と思っていたが、トリエステというアドリア海に面した北東イタリアで食べたことがある。すばらしいうまさだった。
イタリアのイカスミ・スパゲッティもうまいが、スペインのイカスミ・パエリャ、これもこたえられませんね。
スミだけじゃなく小さいイカのリングがたくさん入っていて、ちょっと芯がある太ったバレンシア米が、日本のコメのように味を吸いこみ切らずに自分を主張しているのがうまい。
日本のイカソーメン、あれもいいですね。だいぶまえに広島で食べたのは、新鮮さと、細く切ったイカの食感、それにダシのきいたタレがよくマッチしてうまかった。
「烏賊」という漢字は、イカを食べようとしたカラスを、逆にイカが捕まえて食べちゃったという中国の故事に由来するらしい(Wikipedia)。
ところで、イタリアに行ってイカを注文したければ、「カラまわり!」と叫べばよい、とむかしなにかで読んだことがある。エビは「素す かんぴん寒貧!」だ。
これ、ほんとうに通じますよ。
LAではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
Cafe Hiro
日本洋食フュージョン料理の店。ここのフライド・カラマリは余計なソースはなくカラッと揚げたイカにレモンを絞って食べさせる。
味:22 予算:$60
10509 Valley View Ave., Cypress
☎714-527-6090
www.cafehiro.com
Lunch: Tue-Fri 11:30am‒2:00pm
Sat & Sun 12:00pm-2:30pm
Dinner: Tue-Thu 5:30pm‒9:30pm
Fri & Sat 5:30pm-10:00pm
Sun 5:00pm-9:30pm
Closed on Mondays
Drago
20年近くまえにオープンして以来の人気店。いまや支店も数多い。シシリー風料理が主体。イカスミのパスタもうまい。
味:25 予算:$100
2628 Wilshire Blvd., Santa Monica
☎310-828-1585
www.celestinodrago.com
Lunch: Mon-Fri 11:30am‒2:30pm
Dinner: Mon-Fri 5:30pm‒10:30pm
Sat & Sun 5:00pm‒11:00pm
Open 7 Days
(2010年5月1日号掲載)
からまわりステーキ
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