『食在広州』
この「食は広州にあり」ということわざは、誰もが聞いたことがあるだろう。
はたして本当か?
広州では四足で食べないものはテー ブルだけ云々、というのは耳にタコがで きるくらいよく聞くが、まあそれだけ食材が豊富で、気候も温暖で人々も豊かだから、美食が発達したことはまち がいない。
僕も行ってみたが、たしかにうまいものはある。でも、上海や四川にもうまいものはたくさんある。
どっちにしろ、これは中国のことわざだから、中国での基準でいっているにすぎない。
世界全体で見たときには、どこにいちばんおいしいものがあるのだろう?
食在哪里?
あるとき、フランスからの帰りの飛行機の中で、メキシコ人のカップルととなりあわせになり、会話がはじまった。
フランスでバケーション旅行をして きたという。
「フランスはどうでしたか?」と聞い てみた。
「とてもすばらしかった。でもとても困ったのは、食べものです。はやくメキ シコに帰りたくて帰りたくて」とご主 人がいうと、奥さんもうんうんとうなずいている。
「え?なんだって?メキシコとフラン スとくらべたら、フランスのほうがおい しいものがたくさんあるでしょう?」と 聞きそうになって押しとどめた。
「それはどうしてですか?」と聞く と、「トルティリャが食べたくて食べた くて」というのである。
なるほどね、彼らにとってトルティ リャは、一日でも欠かすと禁断症状がお きるくらいの食べものなのである。
韓国人も、キムチを数日間食べないと、禁断症状がおきるらしい。
日本人の団体旅行に参加してパリに 行った人が、着いたその日に、みんなで日本食レストランを探して食べに行ったといっていた。
僕なんかは、パリに着いたら「フラン ス料理が食べられる!」とエキサイトするのだが、そうでない人も多いらしい。
多くの人にとって、世界でいちばんおいしいものは、フランス料理でも、広州料理でもない、自国の料理なのだ。
おいしいものは故郷にあり。
すなわち、『食在故郷』である。
中国には、じつは「身土不二」というこ とわざもある。
「人間の体とその育った土地は、同じものだ」という意味だ。
つまり、自分の生まれ育った土地の食べものが体の細胞になっていて、それ以上体になじんだ食べものはないとい うことになる。
英語の格言、「You are what you eat.」 とも似ている。
英語のばあいは、人間の体は食べたものによって太りもするし病気にもな る、という健康管理の観点から使われるのが普通だが、身土不二は、土地と結びついているところが興味深い。言い得て妙である。
僕のばあい、どんな国を旅行していても、その土地の食べものを食べることに無上の喜びを見いだしているので、日本食が恋しくなることはまったくない。
でも、たまに日本に帰って、ソバなん か食べると、体の芯に浸み込むうまさというか、琴線に触れる感覚を覚えるのも事実である。
やはり僕にとっても、ほんとうは身土不二、食在故郷なのでしょうね。
LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
今回は本文とは直接関係なく、最近みつけたうまい店をご紹介します。
Seafood Village(避風塘)
大混雑の広東・潮州系レストラン。他の店とはちょっと違うメニュー品目もたくさんあり、エキサイティングな味。蟹や海老が特に人気。
味:24 予算:$40
1463 S. Nogales St., Rowland Heights
☎ 626-913-2338
Mon-Fri 10:30am-11:00pm、 Sat & Sun 9:00am-12:00am
Open 7 Days
Nirvana Grille
ミッションビエホで大評判のフレンチ・カリフォルニアンがラグーナにも店をだし、たちまち大ヒットしたというので行ってみた。非常に繊細て馥ふくいく郁とした味と香りの料理。久し振りに感激の味。サービスも申し分なし。
味:26 予算:$100
303 Broadway St., Laguna Beach
☎ 949-497-0027 www.nirvanagrille.com
Brunch: Sun 10:30am-1:30pm
Dinner: Tue-Thu 5:00pm-9:00pm
Fri & Sat 5:00pm-10:00pm
Sun 4:30pm-9:00pm
Closed on Mondays
(2010年7月1日号掲載)
食在哪里?
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