トマトとトマト

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Mr.世界(トマトとトマト)

コソボに行ってきた。
「コソボ紛争」で知られる、2008年に独立したばかりの、世界一若い国のひとつである。
 
紛争のことはさておき、食べもののことで驚いたことがある。
 
トマトがうまい!
真っ赤で、甘くて、ジューシー。香りがいっぱい。
僕がいままで世界一と思っていたギリシャと同じくらいうまく、どのレストランでもおなじだ。
現地のひとに聞いてみると、「この国は(経済が遅れてるから)、野菜はオーガニックしか作れないからね」という答えが返ってきた。
それだけが理由とは思えないが、ともかくうまい。
 
僕はいつもトマトには二種類あると思っている。
アメリカのマーケットで売ってるトマトに、甘くてジューシーなトマトと、ガリガリして甘みも香りもうすいトマトがある。
僕にいわせると、それぞれ果物トマトと野菜トマト。
じっさいに、むかしアメリカで「トマトは野菜か果物か?」とまじめに裁判で争ったことがあるらしい(※)。
果物トマトをスライスしてオニオンを和え、オイル&ビネガーをかけたトマトサラダは、僕の大好物だ。
 
それに、外国にあって日本ではあまりおめにかからないものに、調理したトマトというものがある(トマトソースは別として)。
イギリスの朝ごはんでは、タマゴやビーンズとともに、グリルして半分に切ったトマトは欠かせない。
 
中国には、これも日本人がたぶんあまりなじみのない料理として、僕の大好物「蕃ファンチェーチャオタン茄炒蛋」がある(煎チァンタン蛋ということもある)。トマト(蕃茄)とタマゴ(蛋)を炒めたものだ。
トマトは温めることによってさらに甘さと香りが増すのだと思う。
この炒めトマト・タマゴを入れたスープ蕃茄炒蛋(煎蛋)湯もある。
トマトスープではない。クリアスープに入った黄色いタマゴと赤いトマトのうまみがスープに溶け出し、緑の葉野菜も入って、その色どりといい、味といい食感といい、すばらしい食べものだ。コショウをきかすとなおさらうまい。
 
これを書いているだけですぐ食べたくなっちゃう。
 
蕃茄牛肉麺「ファンチェーニューローミェン」というものもある。
牛肉のスライスとトマトを一緒に炒めてヤキソバの上からかけた、広東・潮州の料理だ。
特徴は甘さ。トマトから出る甘さだ。
それが牛肉とふしぎにからまる。 甘いヤキソバというのはあまり食べたことないでしょ?
 
こんなにおいしいトマトだが、16世紀アンデスからヨーロッパに伝わってからなんと300年近くも、毒があると思われ、観賞用だけで、食べられることがなかったという。
それが19世紀、食糧難のナポリで試しに食べてみたら、病気にならないどころかウマイ!
しかもパスタともバッチリあうじゃないか!ということであっというまに広まった。
いまや、ギリシャやコソボはじめ、世界中で楽しまれる野菜(果物かな?)になったのは、僕がいまの時代にうまれてよかった!と思うことのひとつである。
(※)野菜税をかけるべきかどうかという論争で、1893年アメリカ最高裁が野菜と判断。
 
LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
 
Minestraio
シンプルなデコアのイタリアン。一見たいしたことなさそうな店でメニューも少ないが、とてもホンモノのイタリアン。味はすばらしい。アルデンテのStrozzapretiというパスタにのったプチトマトがとても甘かったのが印象的だ。
味:26予算:$50
8384 W.3rd St.,West Hollywood
☎323-782-8384 www.minestraio.com
Sun-Thu12:00pm-10:00pm
Fri&Sat12:00pm-11:00pm
Open 7 Days
 
Chinese Food(享南小館)
この店は何度も紹介しているのだが、僕が蕃茄煎蛋湯が食べたい!と思った時に飛びこむのがこの四川の店だ。シンプル極まりない店で中国人以外の客は眼中にないような店だが、それだけに味はまったくアメリカナイズしていない。
味:24予算:$25
17110 E. Colima Rd.,Hacienda Heights
☎626-965-3868
Mon-Sat11:00am-9:00pm
Closed on Sundays
 
(2010年7月16日号掲載)

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