ゆかり」というフリカケをご存じだろうか。
赤紫蘇を乾燥させた、紫の色もあざやかなフリカケで、白いゴハンによくあう。
「ゆかり」という名は、三島食品という会社によって登録商標となっているようだが、赤紫蘇フリカケというと、ほかのメーカーの物も含めて「ゆかり」とよぶのが一般的な感もある。
日本だけの物ではない。
イランにいくと、レストランのテーブルの上には、塩・コショウと並んで、必ず紫色のフリカケが載っている。
まわりの人をみれば、みんなこれを白いゴハンにふりかけて食べている。
そうか、このフリカケのゆかりの地は、イランだったのか…。
自分もふりかけて食べてみれば、たしかにゆかりだ…、いや、ちょっとちがうかな?
見た目は同じで、酸味のある芳香もよく似ている。でもどこかちょっとちがうようだ。
じつはこれ、スマーク(sumac)という物で、紫蘇ではなく、ベリー状になった果実を乾燥させて粉にしたものだ。
中近東のフードマーケットで、この果実をナマで試食してみたことがある。
ウヒョー!
チョー酸っぱい。舌がまがる~。
乾燥させてフリカケにすれば酸っぱみが減って、ベリーのさわやかな香りが引き出されるということだ。
シシカバブなど、肉にふりかけてもいいし、シチューやピラフなどにまぜてもいい。
でも、なんといっても白いゴハンだ。イランではバスマティ・ライスという、フワッと空気を含んだような香りのいいライスを食べる。ここにバターを少量溶かしこみ、オニオンとグリルしたトマトを練りこみ、上からスマークをふる。
そうするともう、このゴハンだけでお腹一杯にしたい!というくらいうまいし、そのゴハンとシシカバブとの相性がすばらしい。
ゆかりも同じ。我が家ではバーベキューのときに必需品だ。
ゴハンを炊いてゆかりをふりかけ、肉とともに食べる。ゴハンがすごくうまくなる。
いずれも、酸味と香り、それに紫の美しい色が白いゴハンに映えて美しい。
アラブやトルコでは、フリカケとしてよりも、スパイスとして料理に使われるようだ。
ジュースにして、レモネードならぬスマークエードにするところもあると読んだことがある。
でも、なぜこの紫のフリカケが「ゆかり」なんでしょうね。
三島食品さんによりますと、古今和歌集にある、
紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る
つまり、むらさき草が一本咲いているという縁(ゆかり)だけで武蔵野の草花がみな愛おしく感じてしまう、という歌から、「紫=ゆかり」、というのが日本に定着したのだそうだ。
日本というのはなんと風流なんだろう。
イラン人にその風流さをわかってもらうのは難しいだろうけど、ゆかりをスマークのかわりに使ってもらったらどうなるか?
知り合いのイラン人に一袋あげてみた。
一家でおいしいおいしいとご飯にふりかけて食べたといっていました。
LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
Caspian
南カリフォルニアにはイラン人の移民が非常に多い。特にオレンジカウ ンティには、上流階級の人が革命のときにどっと逃げてきて、多くの人 たちが住みついた。(元)上流階級のイラン人が昔のよき時代を懐かしむ ような、高級感のある店が多い。ここもそのひとつ。
味:20 予算:
14100 Culver Dr., Irvine
☎ 949-651-8454 www.caspianrestaurant.com
Sun-Thu 11:30am-11:30pm
Fri & Sat 11:30am-12:30am
Open 7 Days
Shaherzad
オレンジカウンティーとならんでイラン人移民の多いのがウェストLA。 イラン(ペルシャ)料理店はいくつもある。どれもいいレベルをいってい るので、ひとつを選ぶのは難しいが、この店もそのひとつ。入りやすい店 で、イラン人の客でいつも賑わっている。
味:20 予算:$50
1422 Westwood Blvd., Los Angeles
☎ 310-470-3242
Daily 11:30am-11:00pm
Open 7 Days
(2010年9月16日号掲載)
ゆかり
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