ウサギおいし、かの山

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Mr.世界(ウサギおいし、かの山)

ずっとまえにフランスに行ったときのこと。
「フランスではウサギを食べる」と聞きかじりしていて、「食べてみたい!」と思った。
そこでいくつかのレストランに行って、「ウサギはあるか」と訊いてみたのだが、どこに行ってもこたえは「Non」。
あとでわかったことは、ウサギという食べものは基本的にジビエ(野生)で冬の食材なのだが、そのときは夏だったのだ。
農場で飼われたものもあって、それなら一年中出回っているけれど、どこのレストランにもあるというほどポピュラーなものではない。
中世のヨーロッパなどではさかんに食べられたらしいが、畜産技術が発達したことによって、大型の家畜の肉のほうがポピュラーになったということだ。
いまのフランスでは、僕の経験によると、肉類でいえばだいたい牛、羊、鶏、豚、鴨、の順番に多くメニューに出ていて、その次あたりにだいぶ離れてウサギ(フランス語ではlapin=ラパン)かな、という感じだ。
英語ではrabbitのほかにhareという種類の大型ウサギがあり、メニューにはhareのほうがよく出てくるので、知っておくと便利だ。
 
さて料理方法だが、ウサギの肉は概して味が淡白なので、ラグー、つまりトマトなどを使った濃厚なソースにからませることが多い。
ローストにすることもある。いい香りがうまれるのだ。
ちなみに、猫はウサギと似た味がするというはなしだ。
僕は食べたことがないですけど。
 
僕がジビエのウサギを食べて感激したのは、ボラボラ島の夏だった。
ボラボラ島は、フランス領ポリネシアの一部だから、フランス人のシェフがやっているレストランが多い。
しかも、フランス人を含めてお金持ちの観光客も多いから、驚くほどレベルの高いフランス料理が食べられる。
僕が食べたのは、海辺のよしず張りのようなデコアの店だったが、フランス人の夫婦がやっていた。
南半球のポリネシアが夏ということは、フランスは冬。
フランスから空輸してきたジビエのウサギという冬の森の味覚を夏の海辺で食べる、というその贅沢感もあいまって、えらく感激の味だった。
ウサギの味と食感は、一般的にいって、脂けがとても少なく、鶏のささみに似た、柔らかい、優しい感じ。
あのかわいいウサギの姿が味に現れている。
「あんなかわいいウサギなんか食べちゃって、残酷じゃないか!」という気がしないでもないが、人間が見てかわいいから食べてはいけない、かわいくなければ食べてもいい、というのもおかしなはなしだな、と納得して食べる。
実際に食べてはいけないとされている文化もあって、ユダヤ人の食の規則、コーシャーでは、ウサギは食べてはいけないもののひとつだ。
 
逆に日本のばあいは、四足動物の肉を食べることを禁じていた時代でも、「ウサギはウ(鵜)とサギ(鷺)に分けられるから鳥だ。したがって食べてもよろしい」とされ、だからウサギは一羽、二羽と数えるのだ*(Wikipedia)。
かなりのこじつけだが、きっとそれほどおいしかったのでしょう。
 
*一羽、二羽と数える理由については、他にも諸説あります。
 
LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
 
The Winery
ショッピングモール内にある、一見どこにでもありそうな大型アメリカ ンスタイルのレストラン。ところがこの店の料理の質は、決してどこに でもあるものではない。個性や演出というより、「味」そのものが高い。 「Rabbit Loin」という、ウサギの肉にスタッフィングした料理がある。
味:25 予算:$100
2647 Park Ave., Tustin
☎ 714-258-7600
www.thewineryrestaurant.net
Lunch: Mon-Fri 11:30am-3:30pm
Dinner: Mon-Thu 3:30pm-10:00pm, Fri 3:30pm-10:30pm, Sat 5:00pm-10:30pm Sun 5:00pm-10:00pm
Open 7 Days
 
Animal
カジュアルでヒップで楽しい店。ウサギ料理や牛の脳などちょっと珍し いものもあるが、決して奇をてらった料理ではなく味で勝負している。 このウサギの脚を食べたらきっと「ウサギっておいしいね」と思うはず。
味:24 予算:$100
435 N. Fairfax Ave., Los Angeles
☎ 323-782-9225
www.animalrestaurant.com
Sun-Thu 6:00pm-11:00pm
Fri & Sat 6:00pm-2:00am
Open 7 Days

(2011年1月16日掲載)

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