雨のワンタン麺

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Mr.世界(雨のワンタン麺)

このあいだ、仕事で日本に行ったとき、あいまの週末に、福島を訪ねた。
風評被害で苦しむ福島県に、ほんの僅かでもお金を落としたかったのだ。
じつは、もうひとつ目的があった。
喜多方ラーメン。
来たかたのです。ラーメンを食べに、福島県喜多方に。
駅に着いて歩きだしたら雨が降りはじめ、放射能を含んでいる(かもしれない)雨をあびながら、有名店のひとつ「源来軒」を探しあてた(うまいものを食べるためなら、僕は僅かな放射能なんて気にしません)。
 
ワンタン麺を食べた。
そして、ワンタンに対する考えが変わった。
この欄でだいぶ以前にワンタンについて書いたのだが、その記述を訂正しなくてはならない。
そのとき書いたのはこうだ。
香港のワンタン。エビやブタ肉のスリ身をかためた小さな団子。香りがいい。皮が薄く、身はプリッとして歯触りがすばらしく、ツルッと一口で口にはいる。
それに比べて日本で食べるワンタンって、なぜかほとんど皮だけで具がちいさく、ニュル感はあるけれどプリッとしていない。
「あれではワンタンを食べたことにならないです」とまで書いてしまった。
だが、この喜多方ラーメンのワンタンは、別モノでした。
たしかに日本式のワンタンで、皮が大きいワンタンなのだが、その皮こそがうまいのだ。
薄くて巨大で、その「ニュル感」が、舌にとってえらく快感なのだ。
いままで食べたどの日本式ワンタンよりうまかった。
ここで突然ですが、ワンタンとイタリアのラビオリを比べてみます。
ラビオリにも、小振りでプリッとしたものもあれば、大きめで、皮の食感を楽しむものもある。
どちらもうまい。
ワンタンだって、皮が大きいからよくないとはいえないのだ。ワンタンさん、すみませんでした。
とはいうものの、パスタはみな皿に乗った一品、ラーメンやワンタン麺のようなスープ麺に匹敵するものはないのだろうか。
 
あります。
トルテリーニ・エン・ブロド(Toretellinien Brodo)というものがあって、ラビオリよりは皮が厚い、団子に近いパスタだが、スープに入っている。
これがまたいいのですね。
冬にイタリアに行って、特に雨が降ったりするとかなり身体が冷える。そういうときは、僕はよくレストランに入ってこれを食べる。身体が温まって、ほっとするし、とてもおいしく感じる。
ラーメンも、寒いときや雨が降っているときって、特においしいと思いませんか。
ほんとうに寒いときは味噌ラーメンがいちばんだが、今回の喜多方のように5月の肌寒い程度の雨は、醤油系のラーメン、それもワンタン入りがぴったりだ。
やはり食べものはその土地で育ったものをその土地で食べるのがいちばんおいしい。
香港式のワンタンを喜多方で食べたり、喜多方のワンタンを香港で食べたらほんとうにおいしいと思ったかどうかはわからない。
でも、雨で冷えた身体には、喜多方のワンタン麺、ほんとうにうまかったです。
 
LAではココ!
「予算」は2人分です
 
May Mei(美味居)
広東(香港)風軽食主体の小さい店。この手の店はどこでもワンタン麺がおいしいが、ここは特においしい。他の広東風軽食はどれもおいしい。
予算:$15
639 W. Duarte Rd., Arcadia
☎626-574-1318 
Sun-Thu 11:00am-10:00pm
Fri & Sat 11:00am-10:30pm
Open 7 Days
 
Apo Apo
この一風変わった名の店は台湾風軽食の店だが、ワンタンがおいしい。麺の食感が広東風とはちがい、日本風に近い。モダンな明るい店もチャイニーズにはなかなかない雰囲気。
予算:$15
18409 E. Colima Rd., Rowland Heights
☎626-965-6559 www.apoaporestaurants.com
Sun-Thu 11:00am-12:00am
Fri & Sat 11:00am-2:00am
Open 7 Days
 
(2011年7月1日掲載)

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