いまフランスにいる。パリの航空ショーのために来ているのだが、パリ郊外・ルブルジェーにあるこの会場は、パリ市内からのアクセスが悪く、到着するまでにいい加減疲れるところへもってきて、その広さがハンパじゃない。展示を歩いて見てまわったり、フライト・デモが見えるところまで歩いていったりすると、メチャ疲れる。そして来ている人の数がすごい。ランチ時ともなると、決して数が多くはないレストランは、延々長蛇の列ということになる。人が多い、店が少ない、ということにさらに追加して、フランス人はランチにしっかりオードブルとメインとチーズ、もちろんワインもしっかり飲むから、回転がおそろしく悪いときている。
そこで、僕も含め、多くの人は売店でサンドイッチを買って食べることになる。テーブルやベンチもすごく少なく、立って食べたり、そこらへんの縁石などに座って食べる。もうすこし主催者に親切心はないものかと思うのだが、毎回のことだ。これでこのサンドイッチがまずかったら腹が立つところだろうが、じつはうまいときているのですね。さすがはフランス、たかが屋台の売店で売っているサンドイッチでさえも、パンがまずアメリカにはありえないようなうまさのバゲット。外の皮はパリッとして香ばしく、中はフワッと柔らかくありながら、モチっとした弾力がある。中にはさむグは、そんなにいろいろな種類があるわけではないのだが、たとえばハムとスイスチーズ。この単純明快なサンドイッチが、ひとくち食べてうめーと思う。
チーズのうまさが、他の国にくらべるとずばぬけているということもある。サラミとブリーチーズも適当な塩ケのバランスとあいまって、香りがすばらしい。チキンブレストとトマトにレタスというのも定番だが、トマトが甘い。さらには、ツナサラダに茹でタマゴのスライスをはさんだものなんかもよくお目にかかる。そして、嗚呼、フレンチフライ。フランスでは単にfrites、つまりフライとひとことで呼ばれるこのものは、まず色が黄色く美しく、食欲をそそられる。食べてみれば、パリッとしてサクッとして食感がよく、ほっとする温かみがあって、そしてなによりもじゃがいもそのものの味がいい。そのポテトを、アメリカではまず滅多にお目にかからない二度揚げというテクニックで揚げるから、これを食べるためだけにフランスに来てよかったと思うくらいうまいのだ。
このサンドイッチとフレンチフライで舌とおなかを満足させると、ああフランスはいいなあと毎回思うのだ。もちろん航空ショーの会場に限ったわけではない。パリの街なか、駅、空港、どんな観光地にも必ずこういうバゲット・サンドイッチを売っている店があるから、観光の途中にランチにあまり時間をかけたくないとき、倹約したいとき、さらには単にフランスのおいしいバゲット・サンドというものを試してみたいとき、お勧めだ。難点はひとつ。パリパリした皮のバゲットを、うまいのでつい夢中になってかじっていると、口の中が痛くなるのです。
LA&OCではココ!
La Petite Baguette
フランスうまれの女性ふたりが経営している、ホンモノのフランス風バ
ゲットを使ったサンドイッチの店。アメリカには珍しい。種類は多い。サ
ンドイッチ$5~$7、ほかにサラダなど。
16367 Bolsa Chica St., Huntington Beach
☎714-840-1900 www.lapetitebaguette.com
Mon-Fri 10:00am-6:30pm
Sat 10:00am-4:00pm
Closed on Sundays
Mr. Baguette
過去にフランス領だったベトナムは、おいしいフランスパンが食べられる
国のひとつだ。そんなバゲットを使ったベトナム風サンドイッチBanh mi
の店。値段は$2.20から。
8702 Valley Blvd., Rosemead ☎626-288-9166
400 S. Atlantic Blvd. #288, Monterey Park ☎626-282-9966
9661 E. Garvey Ave. #101, South El Monte ☎626-575-8632
www.mrbaguettesandwiches.com
Daily 6:00am-8:00pm
※Rosemead店のみ9:00pmまで
Open 7 Days
(2011年7月16日号掲載)
バゲット・サンド
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