ひらめとかれい

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Mr.世界(ひらめとかれい)

ひらめとかれい。どちらも平たくておいしい。
世界中で食される。
日本では「左ヒラメに右カレイ」と、目のあるところで区別され、「鮃」と「鰈」と字もちがう。中国でもしかり。でも、欧米では、右左は無視しているようだ。
fl ounder、halibut*、plais、soleなどの名前で呼ぶけれど、それぞれ多少違うさかなだったり、ごっちゃになってたり、明確な境界線はないようだ。
ときには、「平たいさかな」fl atfi shと、おそろしくなげやりな呼びかたをされたりもする。
 
日本では、刺身や寿司ネタとして、さらには煮物などで欠かせないさかなだけど、外国ではどうだろう。
じつは、僕がイギリスに行くと、「いちどは食べたい」といつも思うのがこのさかなたちだ。
「イギリスの食べものはうまくない」、とよく言われるが、そんなことはない。ドーバー海峡のsole(ソール)は、舌触りに独特のむっちり感があり、香りがよく、世界にほこれる食べものだ。
レストランではムニエル(meunière)が定番だが、それ以外にもいろいろな調理方法で出してくれる。
ロンドンにはソールの専門店まであって、2、3度食べに行ったことがあるが、どれを食べてもおいしかった。
北海でとれるpalaisはfish & chipsで食べると最高だ。僕が「あー、イギリスに来てよかった」と思うのは、いつもこれを食べたときである。
意外に身が厚く、フライにすると身がフワッと空気を含んでホカッとしていて、take away(to goのイギリス英語)でこれを買って、夏でも肌寒いイギリスの戸外で食べると、とても心が温まる。
 
ソールというなまえは、お気づきのように、靴底に似ているところから来ている呼び名だ。
そんなネーミングはこのさかなにたいして失礼ではないかと思うのだが、ドイツ語Seezungeやスペイン語Lenguadoはもうすこしマシで、「舌」という意味だ。ずいぶんデカイ舌だけど。
 
そう言えば日本でも舌平目と言いますね。
ドイツでは、ハンブルグなど北ドイツの海に面した地域に行くと、やはり北海でとれたSeezunge(正確には「海の舌」)が名物で、えらくうまい。
南ドイツで豚肉やソーセージを毎日食べたあとで北に来ると、さっぱりとしたこの海の幸は、ことのほか味わい深い。
 
中国はどうだろう。
ここでのネーミングは、うってかわって重厚になる。
龍利(ロンリー)。龍のようにするどい(利)ということか。
清蒸全魚、つまりさかなをそのまま蒸してXO醤に浸し、ネギをたっぷり載せた料理は広東料理の定番で、このさかながよく使われる。
これがテーブルに登場したら、ホストが身をさばき、立ち上がってお客さんのお皿に配ったりする光景をよく目にする(高級店ではウェイターがやってくれる)。
このさかなは、海底の砂のなかにもぐって獲物を待っていて、獲物が来ると突然ジャンプして襲いかかるらしい。そういうところから龍利(ロンリー)というなまえがつけられたのではないかと、僕は思っている。これってわりと論理的ですね。
 
*halibutは日本では「おひょう」と訳されることが多いけど、かれい科のさかなである。
 
LA&OCではココ!
 
Sam Woo(三和)
いくつかある三和のなかでも、ここは特に味がいい。小さい店だがいつも混んでいる。
予算:$40
19008 S. Pioneer Blvd., Cerritos
☎562-865-7278
Lunch: Daily 10:00am-3:00pm
Dinner: Daily 3:00pm-12:00am
Open 7 Days
 
Cafe Stella
シルバーレークの、とても目立たないが、知る人ぞ知る名店。メニューはオーセンティックなパリカフェのメニュー。味もとても満足。Sole Meunièreもある。
予算:$80
3932 W. Sunset Blvd., Los Angeles 
☎323-666-0265 www.cafestella.com
Lunch: Tue-Sun 9:00am-3:00pm
Dinner: Mon-Sat 6:00pm-11:00pm
Sun 6:00pm-10:00pm
 
(2011年8月1日号掲載)

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