気がついたら、このコラムはアメリカ発で300回近く書いているというのに、アメリカ家庭料理について書いたことはほとんどない。
そのワケは、アメリカには伝統的で特徴のある料理というものが少ない、ということになると思うが、少ないなかでのひとつがミートローフだ。
この料理は、じつはアメリカの家庭料理でもあるけれど、日本の家庭料理でもあるって、知ってました?
日本での呼び名は、ハンバーグ。
この、『ハンバーガー』とは違う『ハンバーグ』という料理、呼称もカワイくて好きだが、僕をはじめ、日本人なら子供のころから親しんだひとは多いだろう。
洋の東西を問わず、「つながったままの肉」をそのままカットして料理できればいいのだが、値段が高いので、挽肉にして、「つなぎ」つまり増量剤をいれて料理にするという手法があちこちに存在するわけである。
ミートローフもハンバーグ同様、主にパンを使って分量を増やす。
パンのかわりに小麦粉を使ったり、あるいはそれらをワインに浸したり、卵で溶いたり、香辛料を使ったり、つなぎによって分量を増やすだけではなく、100%挽肉とはちがう舌触りやうまさがうみだされているのだ。
そもそも挽肉自体、あのツブツブした食感に、つながったお肉とはちがう楽しさがある。
食感だけではなく、味が浸み出してくる肉の表面積が、ツブツブの1ヶ1ヶの半径の二乗×4π、掛けることのツブツブの数だけあるわけだから、うまくないはずがない。
ローフ(loaf)というのは、パンの一斤のような、ああいう形のことをさす。通常、ミートローフはあの形に練って、オーブンで焼きあげる。
ルーツは、やはり肉料理をアメリカに持ち込んできたヨーロッパとされていて、ドイツやイタリアにも似たような料理がある。
レストランでも、アメリカにもヨーロッパにも、家庭料理を食べさせる店というものはよくあるから、ミートローフを食べるチャンスはたまにある。
とくにアメリカでは、いわゆるアメリカ料理のレストランでは、よくお目にかかる。
逆にいうと、どこの国の料理を出すのかわからないレストランに入って、メニューを一見し、そこにミートローフと書いてあれば、ああここはいわゆるアメリカンだな、とわかることになる。
それらの区別は、はっきりしたものではないですけどね。
僕にとって、ミートローフを食べるときの決め手は、マスタードだ。
それもディジョンとかフランス料理に使うマスタードよりも、アメリカのフツーの黄色いマスタード、あれがいいですね。
醤油やソース、あるいはケチャップでもいいのだが、ミートローフにマスタードは、肉の味を引き立たせ、しかも全体としての味のバランスが洗練されたものになると僕は感じる。
それはマスタードに入っている酢だと思う。
酢は蛋白質のうまさをひきだして洗練された味にする
フカヒレのスープに酢を入れるのも同じなのだが、はなしがズレていきそうなのでこのへんでやめておきます。
LAではココ!「予算」は2人分です
Mike and Anne’s
パサデナのはずれ、裏通りにパティオの気持ちのいいレストランがある。週末の昼間はいつも満席。ミートローフが特においしい。レモネードも有名。
予算:$60
1040 Mission St., South Pasadena
☎626-799-7199 www.mikeandannes.com
Breakfast&Lunch: Tue-Sun 8:00am-2:30pm
Dinner: Tue-Thu, Sun 4:30pm-10:00pm
Fri&Sat 5:30pm-10:00pm
Closed on Mondays
Mimi’s Cafe
あちこちにあるアメリカらしいコーヒーショップのひとつだが、店のつくりや内装がカントリーアメリカン風のデコアでかわいいのと、料理も典型的なアメリカ家庭料理がいろいろある。ミートローフもある。
予算:$50
トーランス店
25343 Crenshaw Blvd., Torrance
☎310-326-4477 www.mimiscafe.com
Daily 7:00am-11:00pm
Open 7 Days
(2012年10月1日掲載)
アメリカ家庭料理の代表、ミートローフ
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