ある夏、アラスカを訪れたときのこと、ちょうど産卵の季節で、町の中を流れる小川に大量の鮭が川登りをしているのを目撃した。
町のひとは見慣れているのだろう、さほど気をとめることもない様子だが、僕をふくめ数人の観光客は、その光景に見とれてしまった。
ピョンピョンと跳ねながら、必死になって段差や堰を乗り越えようとし、失敗し、また挑戦し、一匹、また一匹と成功してまた次の段差に向かっていく。
なんとけなげな。
「ガンバレ!」、と感動しながら声をかけ、しばらく見とれているうちに、ちょうどランチどきだったので、お腹がすいてきた。
「よし、サーモンでも食べにいこうか」。
サーモンって、おいしいですね。
アラスカのサーモンって、独特の強い風味があり、ベークするとすごくうまい。
人間でも苦労したひとには人間味がでるものだが、川登りで苦労した鮭もいい味がでるみたいだ。
スモークしたサーモンなら、うまいのは北欧だ。
アメリカでもたくさん売っているが、デンマークだったかノルウェーだったかで食べたサーモンの味が忘れられない。
長さ50㎝ほどの尾頭つきの鮭が、姿焼きならぬ姿スモークになって、カートでテーブルに運ばれてくる。
それをテーブルサイドでカーブしてくれる。
なんとも香りがよく、脂がのって、ツルっとしたやさしい口あたり、ちょっとしぼったレモンとオニオンの刻み、ケイパーズの実とじつによくあう。
レストランに入って、「今日はサカナにしようかな」、と思ったとき、サーモンも食べたいけど、あの独特の芳香ではなく、もうすこし軽い感じにしたい、というときがある。そんなとき、鮭と鱒を交配させたさかながいい(なまえは一定してない)。
これはまさに鮭のうまさと鱒の軽さを足して二で割ったようなもので、蒸したりすると、なんともうまいものだ。とくに北ヨーロッパでよくおめにかかる。
もともと鮭や鱒の仲間で、Charというサカナもある。これはアメリカでもおめにかかるが、やはり両方のよさをもっている。
ところで、刺身やスシネタとしての生のシャケ、日本に住んでたころは、食べてはいけないものと理解していたのに、アメリカに来てみたらとてもポピュラーなのに意外だった記憶がある。
そういえばサルモネラ菌というのがありますね。
このsalmonellaという菌は、salmonによく生息しているからその名があるのではないのだろうか。
そう思ってアメリカのスシ屋さんでもサーモンを食べるのは怖かった。
ところが調べてみたら、salmonellaはDr. Salmonという名の学者が発見したバイキンで、salmonとは無関係なのだそうですね。
たしかにもともと寄生虫の多いサカナなので、むかしは決して生では食べず、凍らせるか(北海道のルイべ)、調理してから食べるものだったらしいが、1980年代からは寄生虫の入らない環境で養殖をしたものが生食用に普及して、生食がポピュラーになったのだそうだ。
だから、安心して楽しみましょう。
LA&OCではココ!「予算」は2人分です
The Capital Grille
アメリカ大都市のいくつかにある、アメリカ料理のチェーン店。味はとてもハイレベルで、店内は大きいが落着きのある、アップスケールなデコア。サービスがとてもプロフェッショナル。サーモンの料理もうまい。
予算:$120
3333 Bristol St., Costa Mesa( South Coast Plaza)
☎714-432-1140 www.thecapitalgrille.com
Mon-Thu 11:30am-10:00pm
Fri & Sat 11:30am-11:00pm
Sun 11:30am-9:00pm
Open 7 Days
Christine
サウスベイでは数少ない、ハイレベルな味のフレンチ・カリフォルニアン。古くからあるが最近とみに評判が上がってきた。料理はありきたりなものではなく、創造性が光る。サーモンの料理もある。
予算:$80
24530 Hawthorne Blvd., Torrance
☎310-373-1952 http://restaurantchristine.com
Lunch: Mon-Fri 11:30am-2:00pm
Dinner: Mon-Thu, Sun 5:00pm-8:30pm
Dinner: Fri & Sat 5:00pm-9:00pm
Open 7 Days
(2012年11月1日掲載)
忘れられないサーモンの味
「ミスター世界の食文化紀行」のコンテンツ
- クジラはなぜ食べてはいけないのか?
- トロピカルフルーツ
- BFV(バックグラウンドビジュアルズ)
- これでトーストがうまくなる(かな?)
- これぞエキゾワイン
- チャイニーズ攻略法 その②
- チャイニーズ攻略法 その①
- 黒いって健康的
- チキンスープを飲みなさい
- ジャガイモだってあなどれない
- カズチャンのカボチャ
- シッポの味
- 音の味わい
- Simple is the Best
- 究極のジントニック
- ウクライナで食べたいな
- ハチャメチャじゃない、ハチャプリ
- 生クリームで広がる世界
- づくしの世界
- パンの食べかた
- 韓国のうどんたち
- トッピング
- なぜロゼ?
- えいさい教育
- いろとりどりなぢどり
- 小さくてもビッグなキノア
- ホンモノイタリアンのみつけかた
- ナマのおさかな
- ワインの飛行
- LAレストラン・シーン
- つらくてうれしい300回
- 音楽は料理をおいしくする
- ニシンの子
- フワフワのカルチョッフォ
- ソターンの色
- ワインのいろもいろいろ?
- ちょっぴー(り)のイタリアン
- モロッコ料理はフランス料理
- ベルギーが一番
- レモンあちらこちら
- 温度の味
- ボケとオタンコのオーバージーン
- バフェーに目移り
- 誘惑のドーナツ
- コーシャーの真理
- エビみその旨味
- クレンザー食べたい
- アメリカ家庭料理の代表、ミートローフ
- バカにできないノンアルコール飲料
- ミルクったっていろいろ