エビみその旨味

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Mr.世界(エビみその旨味)

「カニみそ」というのはよく聞くけど、「エビみそ」ってあまり話題にのぼりませんね。
 
そう、あの、エビのあたまの部分に入っている、脳ミソのこと。
広東料理では、「游水蝦」というエビをよく食べる。水で遊んでいるエビを食べちゃうわけだが(水といっても水槽の中)、どうやって食べるのがいちばんうまいかといえば、白灼(バイツォー)だ。
すなわち、素茹で。
 
アメリカではシュリンプカクテルにするくらいの、中くらいのサイズのエビをただ丸ごと茹でる。たくさん茹でる。
南カリフォルニアではサンタバーバラあたりで養殖しているらしく、新鮮で味のいいエビが食べられる。南カリフォルニアが誇れる数少ない食材のひとつといっていい。
その茹でエビは、皮を自分でパリパリと剥いて、XO醤にちょっとつけながら食べる。非常にうまい。
とくにミソがうまい。
 
胴体をまず食べてから、あたまの部分からミソをチューチューと音をたてて吸う。これが最高ですね。
フレンチレストランではできない、カジュアルなチャイニーズでこその醍醐味だ。
アメリカ人の好きなシュリンプカクテル(大きいサイズはプローンカクテルともいう)は、あたまの部分を切り落としてしまっている。いちばんうまい部分を捨てているわけだ。
 
マーケットでも、中国系などをのぞいて、あたま付きは売ってない。
それは、やっぱり一般のアメリカ人にとっては、あの黒い目玉と触覚がついたあたまの部分はキモチ悪いのだろう。
でも、エビのあたまを食べてみれば、「うまい!」と思うのは共通だと思う。
 
Lobster Bisqueという料理がある。
ロブスターの脳ミソを溶かしこんだ濃厚スープだ。これはアメリカ人もヨーロッパ人もうまいと思っている。
僕はむかしヨーロッパに行ったときに、うまれてはじめて食べたオマールエビの脳ミソスープ、ビスクドマールBisque de Homardの味がわすれられない。
この濃厚スープには、ブランデーが隠し味として入っていて、それがいっそうこのスープに強烈なうまさをもたらす。
マルセイユの名物ブイヤベーズやバルセローナ名物サルスエラ、いずれも同じようにエビの脳ミソの濃厚な味をベースにした海鮮スープだ。
 
日本やアメリカでも、すし屋さんで甘エビを握ってもらって、そのあとにあたまの部分を味噌汁にしてもらうのって楽しいですね。
 
中国や東南アジアで使う蝦しゃー醤じゃん、これはアミ(非常に小さいエビ)や小エビを擦って発酵させた調味料だが、これもあたまもミソもいっしょに擦るからあのうまみがでるのである。
 
「脳ミソ」と書いたけど、エビの胴体は、サカナや陸の動物とちがって、均一にプリプリしていて、内臓らしきものがみあたらない。つまりあたまの部分にすべての内臓器官が詰まっているから、あれだけ複雑で濃厚な味がでるのだろう。
内臓だけではない。エビって雌雄同体だそうで、若いうちはオス、そのあとメスになってタマゴをかかえる、って知ってました?
 
その生殖巣もまたうまみの秘密のようである。
 
LA&OCではココ!「予算」は2人分です
New Capital(半島)(Rowland Heights店)
典型的な香港スタイルの大型広東料理店。昼も夜もよくはやっている。游水蝦をはじめ海鮮料理がうまい。San Gabrielにもお店がある。
予算:$60
1330 S. Fullerton Rd. Suite207, Rowland Heights(Rowland Heights店)
☎626-581-9813
Lunch: Daily 11:30am-3:00pm
Dinner: Daily 5:00pm-9:00pm Open 7Days
 
Mr. Stox
ずっとむかしからあるアメリカで典型的なコンチネンタル料理の店。ロブスタービスクがうまい(メニューではLobster Latteとなっている)。味もよく、サービスもプロ的。
予算:$120
1105 E. Katella Av, Anaheim
☎714-634-2994 http://mrstox.com
Lunch: Tue-Fri 11:30am-2:30pm
Dinner: Tue-Sun 5:30pm-10:00pm
Lounge Dining: Tue-Fri 3:00pm-Closing, Sat 5:00pm-Closing
Closed on Mondays
 
(2012年11月16日掲載)

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