今回は韓国のマンドゥー、つまり饅頭(まんじゅう)である。
饅頭とは言っても、韓国では、日本や中国でいうような丸いパンの中に具や餡をつめたものではなく、まさに餃子のことである。
蒸した餃子のことを「チン(蒸)マンドゥー」、水餃子、つまり湯で煮た餃子のことを「ムル(水)マンドゥー」と言う。
そして焼き餃子のことは、なんと「ヤキマンドゥー」と言う。ヤキという日本語を使うところが面白い。
とは言うものの、近年韓国では日本語を使うのは気に入らん、と「クンマンドゥー」という韓国語バージョンの呼び名を作ってそれを使うことになった、という話も聞くが、僕はまだお目にかかったことがない。
少なくともアメリカの韓国レストランでは、いまだにヤキマンドゥーである。
ヤキマンドゥーは、日本のようにフライパンで焼くこともあるが、油で揚げることがふつうである。
韓国では、中華料理店でこれを食べることができる。
僕もなんども食べたが、皮がバリバリしてうまい。
韓国の中華料理店は、ちゃんと「中華料理(チュンフアヨリ)」と、日本と同じ漢字表記で看板に書いてあることが多いのですぐわかる。
アメリカでも、チャイニーズ・レストランの看板に「中華料理」と漢字で書いてあれば、韓国系の店だということが一目瞭然でわかり、そこではかならずマンドゥーが食べられる。
ちなみに中国では、じぶんたちの国の料理のことを「中華料理」と呼んだりはしない。
それがあたりまえだからである。
「川菜(四川料理)」とか「粤菜(広東料理)」とか「京菜(北京料理)」とか、各地方の料理名で呼ぶわけだ。
さて、このマンドゥーは、中国は山東地方の食べものである。
中国の地図を見ると、山東地方、とくに山東半島は、朝鮮半島のほうに突き出ていることがわかる。
中国の内戦の時などに、戦乱から逃れて韓国に渡って住みついた人々が多く、かれらが韓国にもっていって広めたのが、マンドゥーを始めとする山東式中華料理なのである。
逆に言えば、韓国にある中華料理店は、そのほとんどすべてが山東式である。
かれらの多くが、近年さらにアメリカに移住しているから、当地にも「中華料理」の店がたくさんある。
じつはさっき韓国系と書いたが、メニューにハングルが書いてあったり、店員が韓国語を話していても、かれらはれっきとした中国人なのである。
さて、山東系のマンドゥーは日本の餃子にくらべて、皮が厚い。
中国山東省は、北京の宮廷料理の原型になるほど料理の水準が高かった半面、土地が米作に適さず、一般のひとは小麦粉を練ってつくるマンドゥーや麺類を主食としていた。
そしてマンドゥーは広東のように点心(スナック)としてではなく、主食として食べていたので、皮が厚いのである。
具はダイコン、豚肉、ニラ、キムチなど。
蒸マンドゥーや、「マンドゥークック」というマンドゥー入りスープはもっと一般的で、中華料理店第127 回でなくても食べられる。とくに「粉食(プンシク)」といって、麺類の専門店の定番メニューだ。
ところで「饅頭」という名称は、どういう由来なのだろう。
これは中国の英雄で、心の優しい、諸葛孔明の故事なのだ。
ある時、孔明の軍が川を渡ろうとすると、その川が大氾濫していて渡れない。
それを鎮めるためには人の首(頭)を生け贄として捧げなくてはいけないと言われた孔明は、牛と羊の肉を細かく刻んで小麦粉で包み、人の頭のように作って川に投げ入れたところ、川が鎮まったという。
それはともかく、マンドゥーはキムチと共に食べると特にうまいし、ビールともよく合う。
ビールは「青島(チンタオ)」、そう山東省青島産のビールがいいですね。
(2006年3月16日号掲載)
マンドゥー・デイシジョ!
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