ボケとオタンコのオーバージーン

ライトハウス電子版アプリ、始めました
Mr.世界(ボケとオタンコのオーバージーン)

aubergine。
 
何のことだかご存じですか?
 
アメリカで通じないイギリス英語の代表格ではないだろうか。
 
ナスのことだ。
 
逆にイギリスでeggplantといっても、多くの人には通じない。
 
じつはaubergine というのはフランス語から来ているわけで、アジア原産のナスがフランスからドーバー海峡を越えてイギリスに渡ってきたのだろう。
 
アメリカのほうはどこから渡ってきたのかはわからないが、形から来たなまえなのは言うまでもない。
 
僕に言わせると、世界には三大ナス料理と言ってもいいものがある。
 
まずはイタリアのアンティパスト(antipasto =前菜)のナス。
 
イタリアのレストランの入り口近くには、よくアンティパスティ(複数形)の皿がテーブルに並べてある。タコやイカ、サラミなどとともに、赤ピーマンやナスをグリルしてオリーブオイルに浸したものが置いてある。
 
これが非常にうまいのですね。
 
ナスには、ほかの野菜に比べて大きな特徴がある。さてなんでしょう。
 
それはオイルや水分をよく吸収するということだ。
 
やはりアンティパストとしてよくでてくるカポナータcaponata。セロリなどの野菜とともに茹でて冷やして酢をまぜたサラダだが、これもオリーブオイルや他の野菜のうまみを吸い込むからうまいのだ。
 
ギリシャはムサカ(moussaka、ギリシャ語はμουσακά ς でカにアクセント)。
 
ソテーか揚げたナスのスライスを、羊肉とジャガイモとともにオーブンで焼いたもの。ナスのソース吸収能力がベシャメルソース(牛乳と小麦粉のホワイトソース)とよく馴染んでうまい。ギリシャを代表する食べものと言ってもいい。
 
そして中国の魚香茄子(ユィシャンチェズ)。
 
「魚香」というのは、魚ではなく、ニンニクの香りのこと。もともとは四川料理だが、中国全土でポピュラーな料理になっている。アメリカのチャイニーズでも多くの店にある。
 
しょうがや挽肉などとともにたっぷりのニンニクと炒めた料理で、これも炒めた他の材料のうまみとうまくからんでおいしい。白いご飯の上に載せて食べるとえらくうまい。
 
ほかにもある。フランスはプロヴァンスの名物料理で、ラタトゥイユという野菜の煮込みがあって、これにもナスは絶対欠かせない。
 
インドのカレーにも、ナスカレーはよくお目にかかる。これもカレーとの相性がいい。
 
日本にもおいしいナスがありますね。
 
ここで急に気になるのは、日本語の「ナス」だ。
 
「おたんこなす」「ぼけなす」とか、ナスってとかくバカとかノロマの意味につかわれる。なぜ他の野菜、たとえばキュウリやゴボウではいけないのだろう。
 
インターネットで語源を調べたが、諸説フンプンあって、どれもあまりピンとこない。
 
じつはこの野菜の特徴である吸収力が理由なのである
 
という自説をたてようと思って、一所懸命考えたけど、発表するのはやめときます。
 
LAではココ!「予算」は2人分です
Rufino’s
1969年からある古いイタリアン。店も小さくオールドファッションで、メニューもよくあるアメリカン・イタリアンなのだが、この店の茄子をパルメジャンでベークした料理はとてもおいしい。ランチメニューが豊富。
予算:$40
938 S. Euclid St., Anaheim
☎714-491-0880 www.rufinos.net
Mon-Sat 11:00am-10:00pm
Sun 2:00pm-10:00pm
Open 7 Days
 
Golden China
ローランドハイツの巨大チャイナタウン、そのひとつのモールの角にある四川料理店。きどりのない小さい店だが料理はおいしくて、よくはやっている。魚香茄子もある。
予算:$20
1015 Nogales St. #129, Rowland Heights
☎626-964-8800
Daily 10:30am-9:30pm
Open 7 Days
 
(2013年1月16日掲載)

「ミスター世界の食文化紀行」のコンテンツ