僕は子供のころ、「和ちゃん」と呼ばれてた。
それがいったいニシンとどういう関係があるのかというと、そのころ、僕はよく
「♪かずちゃん数の子ニシンの子~」
と歌われてからかわれたので、子供ごころになぜかそれに深く傷ついて、ニシンには恨みを持ったものだった。
ニシンに罪はないんですけどね。
それから、大人になってオランダでニシンを食べたら、あまりのおいしさに、いっぺんに大好きになりました。
いまの季節、オランダはニシンの季節だ。
とくに海沿いの街、Scheveningenなどでは、あちこちに屋台が出て、ニシンを立喰いで食べることができる。これがうまいのですね。
アタマを取って骨を抜いたナマのやつを、シッポを手でつまんで、上を向いてツルッと食べる。
アブラがのって、クリーミーで、魚嫌いの人ならダメだろうけどほとんどの日本人なら共感できる、魚らしさあふれる風味。
ところで、Scheveningenの発音はほぼスケベニンゲン。「スケベ人間」とは凄い名でしょう?
オランダはチューリップが名産、あれは茎が長いですからね。つまり、はなの下が長い。
ほかにも苦労人間(Groningen)なんていう街もあるのだが、話をもとにもどしましょう。
オランダ以外では、リトアニアで食べたニシンもすごく印象に残っている。ホクホクの茹でたジャガイモの上に酢漬けニシンを載せた料理だった。
そのほか北欧はどこでも、ニシンが魚のなかでいちばんよく登場する。北海で多く取れるということと、おいしいからだろう。
スウェーデンのスモーガスボード(北欧式バフェ)には、ニシン(スウェーデン語でsil)の酢漬け、マスタード風味、カレー風味などが何種類か並ぶ。ニシンのないスモーガスボードは考えられない。
イギリスでは、もっといろいろな魚を食べることができるが、ニシンは、キッパーズと呼ばれる燻製にされて、朝食に登場する。
これがまたえらくうまいのですね。
トーストになんてよくあうのだろう。
イギリス食について書いたときにも詳しく書いたが、タマゴ料理、ボイルドトマト、ビーンズ、ベーコン、それにキッパーズが追加されると豪華なフルブレックファーストとなり、おいしいトーストに、嗚呼、世界一おいしい紅茶を飲みながらの朝食は、「イギリスはうまいものがない」などとおっしゃる方はこれを経験されたことがないのだろうと思う。
日本では、京都のニシンソバも特有のうまさがあるが、一般的には冒頭に書いたごとく、ニシンといえば数の子。
数の子のうまさはいまさら書くこともないが、なぜか世界のほかのどの国のレストランでもお目にかかったことはない。
魚のタマゴは、シャケ(イクラ)やボラ(カラスミ)、そしてもちろんチョウザメのタマゴ(キャビア)などは世界中で人気があるのに、なぜニシンの子は食べないのか、僕は不勉強をもってして理由がわからない。
ニシンの子としてはちゃんと調査をすべきかもしれない。
LAではココ!「予算」は2人分です
Olson’s Scandinavian Delicatessen
ずっと以前にLAで一軒だけあったスウェーデン料理のレストランがクローズしたあと、当地の北欧系のひとたちにとってメッカのような存在の北欧デリ。もちろんニシンの酢漬けも売っている。
予算: –
5660 W. Pico Blvd., Los Angeles
☎323-938-0742
Tue-Sat 10:00am-4:00pm
Closed on Sun & Mondays
Trader Joe’s(各店舗)
最近とみに人気の高いマーケット・チェーンだが、僕がよく利用する理由はインターナショナルな食材が多いこと。魚系の缶詰もヨーロッパからの輸入品が多く、おいしい。ニシンの燻製キッパーズもある。
予算: –
19720 Hawthorne Blvd., Torrance(トーランス店)
☎310-793-8585
www.traderjoes.com
Daily 8:00am-9:00pm
Open 7 Days
(2013年6月1日掲載)
ニシンの子
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