ナマのおさかな

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Mr.世界(ナマのおさかな)

そりゃスシはいまや世界中に普及したけど、そもそもサカナをナマで食べる習慣って、もとは日本だけなのだろうか。
 
そう、ちょっとまえのこのコラムでオランダや北欧でニシンをナマで食べることを書いたのを覚えていただいていると思う。
 
ほかにもあります。
 
中南米のセビッチェ。cebiche、ceviche、seviche、sebiche。
 
わりと表記が一定していない食べものだが、ナマのサカナやエビ、貝類を、ライム汁でマリネしたものだ。
 
刻みタマネギとトウガラシを薬味として和えるのがポイントで、ガーリックやコリアンダーを入れることもある。
 
かなり酸っぱくて、パンチがあって、日本人にとってはちょっとエスニックの香りがただようところが楽しい。
 
ペルーを代表する料理のひとつで、僕もペルーに行ったときは何度も食べた。
 
エクアドール、チリ、キューバなど、中南米のかなり広範囲でも食される。
 
どちらかというと前菜系だが、メインでも食べる。
 
メインで食べるときは、それをおかずに、茹でたトウモロコシやサツマイモを主食のようにして食べる。その温かさとセビッチェの冷たさのバランスがいい。
 
サシミとホカホカのゴハンの組み合わせのようなものですね。
 
僕はトルティーヤ・チップスと食べるのも好きだ。シメたサカナの弾力感とチップスのパリパリ感の対比が楽しい。
 
アメリカではどうだろう。
 
もちろんペルー料理の店ならまずどこにでもあるが、セビッチェをアメリカのグルメのあいだで認知させたのは、松久信幸さんだろう。
 
日本出身、ペルーで料理の経験を積んだあとLAに来た松久さんは、日本料理に新しい息吹を吹き込んで、アメリカはもちろん、いまや世界でもっとも有名なシェフのひとりになった。
 
その原点にはセビッチェをはじめとするペルー料理の影響もあるのだ。
 
松久さんの旗艦店、ビバリーヒルズの「Matsuhisa」や、マリブやホノルルほか世界各地に27軒もある「Nobu」レストランでは、ロブスターセビッチェをはじめ数種類のセビッチェが看板アイテムになっている。
 
フレンチポリネシア、つまり通称タヒチもナマのサカナのマリネが名物だ。
 
タヒチの公用語フランス語で、poisson cru(ポアソン・クリュ)、つまりそのものズバリ「ナマのサカナ」という名のこの料理は、南太平洋でとれるアヒやマグロの角切りを、やはりライムジュースとタマネギ、それにココナッツミルクで和えた料理だ。
 
味は、そうですね、僕が食べてみたので皆さんは食べなくてもいいでしょう。
 
ココナッツミルクがサカナの本来の味を消しちゃってる。
 
韓国でもエイやカニをナマで食べるけど、これも唐辛子やニンニクで強い味付けをする。
 
オランダのニシンもセビッチェもポアソンクリュも、みなマリネのサカナだ。
 
そこへいくと、繊細微妙なナマのサカナをそのまま醤油をちょっとつけるだけで食べ、さまざまな種類を、しかも季節による変化まで味わい楽しんでしまう日本人の舌はすばらしく洗練されていると思います。
 
LAではココ!「予算」は2人分です
Ceviche Del Rey
その名も王様のセビッチェ。もちろんセビッチェで有名な店で、メニューにはシュリンプなど7種類がある。ほかにもいろいろなペルー料理をそろえていて、おいしい。店はシンプルだがサービスはいい。
予算:$30
7404 Florence Ave., Downey
☎562-806-4033
Mon-Wed 10:00am-9:00pm
Thu-Sat 10:00am-10:00pm
Sat 10:00am-9:00pm
 
Eat Drink Americano
リトルトーキョー近くのロフトエリアに最近できたワインバー。セビッチェがうまい。店は小さいがコージー、メニューは少ないが味がいい。グラスワインも6ドルからあり日系人の若者に人気。
予算:$40
923 E. 3rd St., Los Angeles
☎213-620-0781
http://eatdrinkamericano.com
Mon-Thu 11:30am-12:00pm
Fri 11:30am-1:00am
Sat 5:00pm-1:00am
Closed on Sundays
 
(2013年8月16日掲載)

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