この原稿がライトハウスに載るころはいささか旧聞に属するかもしれないが、これを書いている今日、大相撲名古屋場所千秋楽で、もと幕内だが怪我で落ちていた栃の心が十両優勝した。
つい先場所の五月場所で幕下優勝したばかりである。
この力士はグルジア出身だ。
で、僕は会ったことがあるのです。
五月場所の千秋楽の夜、つてがあって、春日野部屋の打ち上げパーティーに呼ばれ、そこで多くの力士とともに栃の心と親しく話をすることができた。
僕はグルジアに行ったことがある。
で、彼に「グルジアのピザ、おいしかったです!」と言ったら「あ、ハチャプリね」と答えてくれた。
そうそう、ハチャプリです。
感じのいい人でした。
ハチャプリはおいしい。
グルジアではとてもポピュラーな食べもので、見た目は丸いチーズピザ。厳密にはチーズを練りこんだパン生地の中に、さらにチーズを詰めてオーブンで焼いたパンといった感じである。
これはピザのように単体で食べるというよりも、オカズとともに主食のようにして食べる。
グルジア旅行中は、毎食テーブルに登場した。
ハチャがチーズ、プーリがパンのことだ。
それといっしょに食べるメインの料理は、たとえばシャシリクやカバビ、つまり中近東やトルコにあるシャシリクやシシカバブと同じように、串に刺して焼いた羊の肉である。
グルジアはトルコやイランのとなりにある。
世界を旅してみると、食文化というのは、およそ地理的な距離とともになめらかに推移しているのに気づく。
言語や宗教などが、国境を隔てるとガラッとかわったりするのと対照的だ。
プーリというのも、インドのパンの一種、プーリと関連しているにちがいない。
あと、クボーチャシューシュエという仔羊のシチューがすごくうまかった。
カスピ海にも近いので、そこでとれたチョウザメもよく食べた。
特徴のあるなめらかな食感のサカナで、そのまま焼いて食べるよりも、クリームっぽいソースをからめて食べるのがうまい。
やはり距離的に近いアジアとも共通の、ギョーザもある。
ヒンガリといって、小籠包によく似ていて、噛みついてみるとやはり小籠包のようにスープがチュッとでる。
それともうひとつ。
黒海を隔てて対岸がブルガリアやルーマニアだから、当然のようにサワークリームやヨーグルトがとても旨い。
つまり、中近東、東アジア、東欧という一見まったくちがう食文化がみごとにブレンドしているのがグルジアなのである(アゼルバイジャンなんかもそうですけど)。 それと、特筆に値するのがワインだ。
旧ソ連時代はグルジアがソ連におけるワイン生産を一手に引き受けていた。これもすごくうまい。特に赤ですね。
現地で聞いたはなしだが、グルジアでは、ワインで乾杯するときは良いことを祈り、ビールで乾杯するときは悪いことを祈るのだそうだ。
ロシア嫌いの多いグルジア人は、ビールで乾杯するときは「ロシアのために!」と言うのだそうです。
LAではココ!「予算」は2人分です
Old Village
LAのグルジア人コミュニティーはグレンデールにあり、そこにはグルジア料理の店が多くあります。この店もそのひとつで、小籠包によく似たヒンガリや、もちろんハチャプリもあります。そのほかロシア料理やアルメニア料理もあって楽しめます。
予算:$50
1100 S. Central Ave., Glendale
☎ 818-551-2000 http://oldvillrestaurant.com
火〜土11:00am-9:00pm、日11:00am-8:00pm 火 closed
Michelangelo’s
ふつうのピザ屋さんですが、オレンジ・カウンティーでハチャプリを出す店はたぶんここだけでしょう。ハチャプリは僕がグルジアで食べたのはピザのように丸かったのですが、ここは細長い。でも味はとてもよく、パンの焼けた香ばしさとチーズのまろやかさが楽しいです。
予算:$15
1331 E. Chapman Ave., Fullerton
☎ 714-870-6892 http://michelangelospizzafullerton.com
月〜木11:00am-9:30pm、金土11:00am-10:00pm、日12:00pm〜9:00pm
(2014年8月16日掲載)
ハチャメチャじゃない、ハチャプリ
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