いま、ロシアとの紛争やマレーシア航空機撃墜事件で話題の国、ウクライナとはどんなところだろう。
僕が行ったのは、十年ほどまえ、黒海に面した港町、オデッサだ(現地の発音はオジェッソ)。
街路樹や公園の多い、美しい町だ。
ところが、ソ連時代にはさぞかし栄華を競ったのだろう、フランスの教会や宮殿も顔負けの、美しいデザインや彫刻を施された石造りの建物たちの、ほとんどが朽ちていている。その朽ち方は、もともとが豪華なだけに、壮絶だ。
そこにはすでに、ソ連という経済圏から別れて独自の道を歩もうとしながら苦悩しているウクライナの姿が象徴されている。
はい、背景はそれまでにして、さっさと食べもののはなしに移ります。
ウクライナ人の食事には、大事な要素が三つある。
ラード、ガーリック、そしてウォッカだ。
料理の味は明快、パンとよくあう。
パンはふつうの白い食パンと、黒パン、というよりも赤いパンが主流だ。
じっさい、レストランで「白にしますか赤にしますか?」って聞かれて、え?ワインのこと?と思ったらパンのことだったということがある。
黒海でとれたpike-perchというさかなの「オデッサ風」という料理が名物で、レモン、オリーブ、たまねぎとポテトで和えた鉄板焼き。これはとてもうまかったです。
ズブラキ、つまり中近東に近いウクライナとしては羊の串焼きもメインの料理のひとつだ。
めずらしいものでは、桜んぼが入った、水餃子のような食べもの。ワレニキといって、バターと砂糖をまぶして食べるのがおもしろい。
もちろん、ウクライナを語るときにボルシチのことを忘れるわけにはいかない。
これはロシア料理として知られているけど、じつはウクライナが元祖だそだ。
めちゃうまいです。
世界的に有名な料理で、日本やアメリカなどほかの地域でも食べることができるものは多い。ボルシチもそうだ。でもちがうのですね、味が。
それは材料がちがうからなのだ。
ある食材がおいしい土地には、それをいかした料理が産まれ育まれ、そこの名物となる。それをほかの土地で再現しようとしても、土壌風土がちがうから、まったく同じ味を出すのはとても難しい。
さらに、ボルシチにはサワークリームがポイントだ。これがまた超うまくて、すぐとなりのブルガリアなどと同じく、牛乳がうまく、ヨーグルトやサワークリームを作るのに適した土壌だからこそおいしいのだ。
これをちょっとボルシチに入れるだけですごい力を発揮する。
サイドにはガーリックオイルが小皿に入って出てくる。
このスープを食べながら、今迄に食べたどのラーメンのスープよりうまいな、と思った覚えがある。なぜそこでラーメンとの比較になったかというと、ガーリックベースのスープだからだろう。
そもそもボルシチは、とても「うまみ」のちからをもった食材だ。
どこかのラーメン屋さん、ボルシチスープのラーメンを作ってくれませんか。赤くてキレイです。
LAではココ!「予算」は2人分です
Traktir
アメリカにはロシア料理とウクライナ料理を兼ねた店が多いのですが、ここもそのひとつです。トラディショナル・ウクライナ風と銘うったボルシチもあり、サワークリームとガーリックオイルがサイドででてくるところも本格的です。
予算:$60
8151 Santa Monica Blvd., West Hollywood
☎ 323-654-3030 www.traktirrestaurant.com
日〜木12:00apm-10:00pm、金土12:00pm-11:00am
EuroAsia
ロシア、ウクライナ、そしてアメリカでは珍しいウズベキスタンの料理の店。LAならではの異国情緒のある料理がいろいろ食べられます。ウクライナの名物チョウ鮫「Sturgeon」の料理や、もちろんウクライナ風ボルシチもあります。
予算:$50
17209 Ventura Blvd., Encino
☎ 818-205-9311
火〜日12:00pm-10:00pm 月 closed
(2014年9月1日掲載)
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