こどものころ、フランク・シナトラがどこかでディナーショーをしたものを録音したレコードを聴いたことがある。
歌ったり語ったりしている途中に、ときどきチン、カチャンと食器が触れる音が聞こえる。
当時は生の音楽というとコンサートしか知らなかった僕は、食事をしながら歌を聴くなんて、なんてカッコイイんだろう!そして、食器の触れる音って、いいな、と思ったものである。
レストランで食事をしてるとき、ほかのお客の出す音って、その場の雰囲気作りに一役買っていると思う。
たとえば週末のワインバー、大勢がワーッと会話している活気がいいのであっ
て、あれがシーンとして暗い雰囲気だったら、ワインの味も落ちるにちがいない。
逆の例もある。フランスのお城や貴族のやかたを改造したホテル。数部屋しかない。
こういうところの朝食はコンチネンタルで、バゲットやクロワッサンなどパンが数種類、そしてせいぜいチーズくらいしかない。しかしこのパ
ンがすばらしいのですね。
外がパリッ、中がサクっとして、香りがいい。
で、数人しかいない朝食ルームはとても静か。会話もひそひそだ。
気がつけば、聞こえてくるのは、パリッ、シャリッていう、そのパリパリのパンをちぎる音だけ。こういうホテルの朝食ならではの、静謐なひとときだ。
逆にちょっと興ざめなのがアメリカのチャイニーズ、とくにアメリカナイズした店だ。ここも独特の音が聞こえてくる。
プラスティックを金属でこする音だ。
こういう店では、中国人のするように大皿から取り分けて食べるのではなく、「私はSweet & Sour Pork !」「私も!」というぐあいにそれぞれが注文した料理がプラスティックの皿に載ってきて(フライドライスと春巻も必ず載ってきますね)、箸ではなくフォークで食べるわけだ。
そのフォークをプラスティックの皿にこすりつけ、しゃくって食べるから、そういう独特の音がするわけだ。美しい音とはいえませんね。
日本のソバ屋さん。
まわりの客が音を立ててソバをすすっている音が聞こえてくる。
世の中の常識では、音をたててものを食べてはいけないのに、なぜ日本のソバは特別なのだろう。
そのほうが断然おいしいからだ。
すするということは、食べながら空気を一気に吸い込むわけで、そのときにソバとツユの香りが鼻腔に直接入ってくる。それこそがソバの醍醐味なのだ。
それはソバに限ったことじゃないと思うんですけどね。
たとえばコーヒー。
コーヒーは、味もさることながら香りが最大の魅力で、それを鼻腔で直接感じれば、楽しみは倍加する。
試しにやってみてください。
スターバックスなどにあるスペシャルティーコーヒーのように、容器に入れてフタをして、つまり香りを遮断し、しかもストローで吸っちゃったら、僕にいわせればもったいないことこのうえない。
まわりに人がいないところで思いっきりすすってみてください。
LAではココ!「予算」は2人分です
Checker’s Downtown
ダウンタウンは昼間の賑やかさとは逆に夜は静かで、なかでもこの小さいブティックホテルは人の出入りも少なく、レストランも通常はお客も少なくLAでもっとも静かなレストランのひとつです。フレンチアメリカンの料理はとても高いレベルです。
予算:$30〜60
535 S. Grand Ave., Los Angeles(Hilton Checkers Hotel内)
☎ 213-624-0000 checkersdowntown.com
日月3:00pm-10:00pm、火〜土3:00pm-11:00pm
Tavern
有名なLucque系列のフレンチビストロ。混んでいて活気のあるレストランです。雰囲気もサービスも、味と同様ハイレベル。バーエリアでも食事ができ、特に活気がありますがうるさいというほどではありません。
予算:$30〜60
11648 San Vicente Blvd., Los Angeles
☎ 310-806-6464 http://tavernla.com
月〜木8:00am-9:30pm、金8:00am-10:30pm、土10:00am-
10:30pm、日10:00am-9:30pm
(2014年10月16日掲載)
音の味わい
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