動物の尾というのは、何のためにあるのだろう?
猿にとっては木の上を動きまわりやすいように、犬にはとっては感情を表現するためにあるのかもしれないが、大部分の野生動物にとっては、あるひとつの重要な目的がある、と僕は思う。
それは、アフリカの草原で、野生動物たちを眺めているときに気がついたことだ。
シッポというものは、オシリにたかろうとする蠅を追っ払うためにあるのです。
かれらシマウマやガゼルやムーたちは、そのために常に常に尾を動かしている。
動かすということは、すなわちおいしくなるのですね。
牛でもブタでもチキンでも、よく動いている部位の肉がおいしくなる。チキンのモモや手羽、豚の尻(ハムになるところ)、牛の舌、あるいは魚の目玉のまわりなんかがそうだ。
ホルモンの作用だかなんだか知らないが、うまいことはまちがいない。
尾の肉もおなじく、脂肪分は多くないかわりに、うまさがゼラチンとなって凝縮している感じがする。
家畜として飼われている牛にはそれほど蠅はたからないかもしれないが、尾は遺伝子的においしくできていても不思議はない。
というわけで、オックステールがおいしい。
それは世界のひとたちが認めている。
まず、イギリスなどでポピュラーな料理、オックステールスープ。
バーリー(大麦)を入れることもあり、そうするとトロッとした食感となる。
トマトやオニオン、赤ワインを使ったシチューで、肉は、柔らかく煮たニンジンやタマネギとよくマッチする。
このスープでは尾の肉を切り取って使うが、韓国にあるよく似たスープ、コリコムタンのばあいは、尾をそのままブツ切りにしてスープに入れたダイナミックな食べものだ。
コリコムタンにはトマトやワインは使わず、スープは澄んでいる、または骨のエキスで白濁している。
オックステールはガーリックだけで煮込み、食べるときに入れるきざみネギで引き立たせる。
この尾のブツ切りは、手で持ってしゃぶりつくのがよいとされている。骨(尾にも骨があるのです)にまとわりついているところの肉が特においしいのだ。
似たようなものは、インドネシアにもある。
sop buntut といって、インドネシア料理としては毎日食べるようなものではなく、ちょっと高級な、ハレの日の料理だ。
これにはニンジン、タマネギ、ジャガイモ、セロリなどいろいろな野菜が入り、肉野菜スープといった、見かけも豪華な一品で、いうまでもなくうまい。
チャイニーズにも牛尾湯と、その名もわかりやすいオックステールスープがある。こちらはトマト味。
カリブ海ではスープというよりはシチューかソテーのようにして食べることが多い。
この地域では米もよく食べるから、オックステールシチューを白いゴハンに載せて食べるなんてこともでき、これはまた日本人にとってもすごくうまい。
すくなくとも牛の尾についていえば、人間を喜ばせるためにあるようです。
LAではココ!「予算」は2人分です
Sate House
この辺りはいろいろなエスニック料理が食べられる地域で、インドネシア料理もそのひとつです。小さなモールにある目立たない家族経営のこの店は、地元のインドネシア人に人気で、サテーやオックステールスープがおいしい店です。
予算:約$20
812 Nogales St., Walnut
☎ 626-581-7726
月水〜木11:00am-8:00pm、金〜日11:00pm-9:00pm、火 closed
Surawon
コリアタウンにあって、コリコムタン(オックステールスープ)が有名な店です。二人前の大きな器に入ってくるブツ切りのオックステールは豪快。刻みネギをたっぷり入れて食べましょう。そのほかスープ類がたくさん、餃子やチヂミなどもあり、メニューがとても豊富です。
予算:$20〜60
2833 W. Olympic Blvd., Los Angeles
☎ 213-383-7317
毎日6:00am-11:00pm
(2014年11月1日掲載)
シッポの味
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