アメリカの雑誌に、こんな漫画が載っていた。
心臓マヒで道路に倒れているひとを、ひとびとが介抱している。そこに通りかかったお婆さんが、こう言う。「チキンスープを飲ませなさい」
……
それでおしまい。
さて、なにがおかしいのだろう。多くの日本人には意味がわからないに違いない。
これは、アメリカでは、grandma は子供が病気になると、それが風邪であれ腹痛でれ、なんでもかんでも「チキンスープを飲ませなさい」と母親に言う、というアメリカの常識があるから、おかしいのである。
でも、じっさいにチキンスープには抗炎症効果があり、流感に効果があるらしい(1)。
湾岸戦争のとき、軽い負傷をした兵士のことをChicken Soup Casualty と呼んだそうである(2)。チキンスープを飲ませて休養させれば治る程度の負傷、という意味なのだ。
たしかにチキンスープはおいしいし、心が温まる。
チキンスープをベースにした料理は世界中どこに行ってもあるといっても過言ではないが、まずは日本。
福岡に行ったとき、ある老舗の水炊き(鶏鍋)の専門店に入った。ここのスープベースはありえないくらいうまかった。
その店に限らず、水炊きの店にいくと、ふつうの店ならまず最初にお茶が出てくるところを、チキンスープが湯呑みに入って出てくることがある。これでホッと心が温まると同時に、これから始まるおいしい水炊きに対する期待が高まる。
ベトナムのフォーは、「フォーボー」(ビーフ味)と「フォーガー」(チキン味)の二種類が双璧をなすもので、これもガーのほうが僕は好きだ。
そしてドイツのHühnersuppe(ヒューナーズッペ)。
ドイツに行ってレストランに入れば、まずはどの店にもあるといってもいいほどポピュラーなアイテムで、どちらかというと重い味のドイツ料理のスターターとして、軽くて温かいこのスープは人気がある。
中南米ではCaldo de Pollo(カルドデポヨ)。Pollo のかわりにGallina( ガジーナ)ということもあるが、これもポピュラーなチキンスープだ。
グアテマラの山奥、チチカステナンゴ。マヤの宗教とキリスト教が融合した不思議で情緒あふれる教会があり、そのまえの広場で週二回、市がたつ。近隣の村々から農民が、野菜やニワトリやさまざまな食べものを携え、歩いて集まってくる。
みな各村に伝わる民族衣装を着ていて、とてもカラフルで活気のある市だ。
そこの一角に木のテーブルとイスが並べられて、大きな鍋にチキンと野菜を入れて煮込んでいた。いくらだったか、おそろしく安い値段だったと思うが、それを一杯とトルティリャかなんかで昼食を食べた。めっちゃうまかった記憶がある。
経験談をもうひとつ。このあいだ、大腸検査をすることになり、その前日、固形食は一切ダメということで、空腹をかかえながら飲んだチキンスープ。これはいままで飲んだなかで、最高のチキンスープでした。
出展(1) Mayo Clinic(2) “War Slang” by Paul Dickson
LAではココ!「予算」は2人分です
Rinconcito Guatemalteco
そう、LAにはどんな国の料理もあります。もちろんガテマラも。「ガテマラの街角」という名のこの店には、豊富な種類のガテマラ料理があり、もちろんCaldo de Gallinaつまりチキンスープもあります。メキシコ料理にも似ていてちょっと違うところも興味深い料理です。
予算:約$20
501 N. Western Ave., Los Angeles
☎ 323-463-6602
月〜金11:00am-9:00pm、土8:30am-8:30pm、日9:30am-8:00pm
Champagnes Bistro & Deli
典型的なアメリカのコーヒーショップ的メニューだが、店も味のレベルもぐっとアップスケール。デリー風サンドイッチ、ワイン、ビールの種類も多く、朝食からランチ、ディナーも楽しめる店です。アメリカのコーヒーショップ定番の心あったまるチキンヌードルスープもあります。
予算:$20〜60
1260 Bison Ave., Newport Beach
☎ 949-640-5011 http://www.champagnesdeli.com
月〜金7:30am-9:00pm、土日8:00am-9:00pm
(2014年12月16日掲載)
チキンスープを飲みなさい
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