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LAのある日本食レストランで、こっそりとクジラの肉をお客に出したのがみつかった事件で、最近、有罪の判決が下された。
日本人がクジラを捕って食べることについて、欧米人ってなぜそんなにメクジラをたてるのだろう。
アメリカだってつい数十年まえまで捕鯨はビッグビジネスだったのに。
そのワケについて、僕には自説がある。ヨーロッパを旅しているときに気づいたことだ。
欧米文化というものは、基本的には地中海文明に根ざしている。
ギリシャの島々やイタリアの遺跡などをみると、地中海では、大昔からイルカやクジラなどの海洋性哺乳類は、人間の仲間として扱われてきたことがわかる。ペットとして、そして一緒に漁をする仲間として。
つまり、犬と同じようなものだ。
地中海から遠いノルウェーなどでは、地中海文明の影響が薄いのだろう。いまでも捕鯨はするし、肉も食べる。
アメリカの捕鯨は脂をとるのが目的で、そうやって人間の為に役立てるのはOKだった。
だが、僕の調べたところでは、アメリカの捕鯨船は、何ヶ月も航海して船員が栄養失調になったとしても、捕ったクジラの肉は絶対に食べなかった。肉はぜんぶ捨てた。
つまり、「食べる」ことこそが、野蛮極まりない、ケシカランことなのである。
インドに行ったとき、ヒンドゥー教徒は決して牛肉は食べないけれど、牛革製品はよろこんで使うのに驚いたことがあるが、それと同じ心情だろう。
欧米の大部分では、動物性タンパク質を摂りたければ、豚も牛も羊もあった。ところが日本では、地方によってクジラやイルカに頼ってきたのである。
最近築地の市場に行ったら、いまでもちゃんとクジラ肉を売っていた。
クジラ・イルカの生息数を保護するべきだ、という考えもあるだろうが、僕にいわせると、魚や、魚のエサになるオキアミなどを大量に消費するかれらが増えることが、はたして生態系バランスのうえで正しいかどうか疑問である。
でも、じつは僕の最大の関心事は、うまいかまずいかということなのです。
日本には、渋谷の道玄坂に、むかーしっからクジラの専門店がある。そこでサシミや焼いたクジラのコース料理を食べてみたが、たいしてうまくなかったです。
ノルウェーに行ったときも食べたけど、まあ、一生クジラ肉は食べられない、となっても、特にがっかりしない。
特有のにおいがあり、たぶんそれが好きなひとは好きで、こどものころから食べていたひとには懐かしくなる味なのかもしれない。
結論を言うと、欧米人に対して、「日本の伝統食文化うんぬん」と言ってみたところで、クジラやイルカを食べることに遺伝子的に拒否反応を起こしている彼らに通じるわけはない。やめたほうがいいです。
海の生態系のバランス、という観点から科学的に議論したほうがまだいいと思う。
それよりも、いまや日本人は牛も豚も羊も、食べたければジビエでもなんでも食べられるんだから、そっちを楽しんでおいたほうが無難だと思います。
LAではココ!「予算」は2人分です
クジラを提供する店はアメリカにはないため今回はシーフード料理店を紹介します。
Ways & Means Oysters
オレンジ・カウンティーで僕が行った中では最高点をつけたシーフードレストランです。僕の食べたBlack Codはこの魚の料理としてはLA界隈でも一番ではないかと思います。生ガキや生蛤もお勧め。
※現在新装開店のため閉店中で今秋に再オープンする予定です。
予算:$60〜120
21022 Pacific Coast Hwy., Huntington Beach
http://wmoysters.com
The Hungry Cat (Hollywood)
シンプルなデコアの店ですが、内容はなかなか洒落たフランス風シーフードカフェ。新鮮なエビ、カニ、カキを氷の上に並べて食欲を誘います。もちろん生で食べられます。その他のシーフード料理も食材と味の割には価格もリーズナブル。
予算:$60〜120
1535 N. Vine St., Hollywood
☎323-462-2155 http://thehungrycat.com
月〜水12:00pm-10:00pm、木金12:00pm-11:00pm、土
11:00am-11:00pm、日11:00am-10:00pm
(2015年8月1日掲載)
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ミスター世界(関根 正和) “ミスター世界”こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!
ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。
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