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みんながイタリア料理だと思っているけど、イタリアにはありません」シリーズの第3弾。スパゲッティー・ミートボール、シーザーズ・サラダを紹介したことがあるが、今回はまとめてご紹介する。
まずはガーリック・トースト。
アメリカ人にとって、イタリアン・レストランにガーリック・トーストがないなんて、コーヒーにクリープがないようなもの。チャイニーズ・レストランにフォーチュン・クッキーがないようなもの。
でも、ないものはないもんね。
イタリアのパンは(朝食は別として)、料理が出てくるまでパリパリとかじって待つ細長いビスケット、グリッシーニなどが主流だ。
ガーリック・トーストは僕のまえにはただの1度も出てきたことがない。ちなみにフォーチュン・クッキーも中国にはありませんよ。
イタリアにないイタリア料理、次はチョッピーノ(Cioppino)。
これはエビなどを入れて豪華にみせたシーフード入りスープで、アメリカのイタリアン・レストランのメニューにはよく見かけるアイテムだが、イタリア人が見てもなんのことだかわからない。
似たものはイタリアにないわけではない。
魚やイカ、ハマグリなどを大きな鍋で煮たイタリア版ブイヤベーズ、「Zuppa di Pesche」または「Caciucco」と呼ばれるものは、イタリアン・リビエラはリボルノの名物。死ぬほどうまい。
チョッピーノというのはサンフランシスコで生まれたものらしいが、問題は、この料理はメインコースとしてパスタの上にのせられて出てくることである。
そんなふうにメインコースとして、パスタの上になにかをのせちゃうということは、イタリアでは決して、決してないんです! もうっ!
次にスパゲッティー・ボンゴレ。
このクラムを使ったパスタは、イタリアにある。
あるどころじゃなくて、僕はアドリア海に面したトリエステで食べたボンゴレに、本気で涙を流したことがある。
ところがちがうのは、アメリカでは赤いソースと白いソースの2種類があるということだ。
赤、つまりトマトソースのボンゴレというのは、イタリアには決してない(きざんだトマトをのせることはある)。
白いソースも、アメリカではクリームベースだったりするが、それもない。
あるのは、白ワインとクラムのだし汁、ガーリックとシャロットで味つけしたもの。
とくにボンゴレ・ベラーチという小ぶりで小さい角のはえたクラム、これがいちばんうまいのだが、そのうまみを最大限にひきだした料理である。
赤白のついでにちょっと脱線するが、アメリカのイタリアン・レストランではよくキャンティワインのビンかなんかに
赤と白の蝋燭をたてたりして、イタリアの雰囲気を出そうとしていますね。
赤と白の蝋燭というのは、イタリアでは葬式の習慣ですよ!
フェトゥチーニ・アルフレッド、これもアメリカではどこのレストランにもある定番メニュー。
太く平たいフェトゥチーニに、バターとパルメザンチーズを混ぜた濃厚なパスタ料理だが、これもイタリアにはない、と言いたいところだが、1軒ある。
ローマの「Alfredo」という店に行けば食べられる。
この店の初代オーナーが創案したこの料理は、なぜかニューヨークに渡って評判になり、全米に普及した。
僕は不勉強にしてこのローマの店にまだ行ったことがないが、それ以外、イタリア中の店ではこの料理はただの1度もみたことがない。
というわけで、このテーマはけっこうつきないのだが、アメリカ生まれの料理だからといって、悪いというつもりは決してない。
文化というのは土地や風土、そして時代により変化するもので、食文化もアメリカはアメリカの風土やひとびとの好みにあわせ、大いに改良していただいて結構である。
それはそれで、僕も楽しませていただいているわけである。
(2006年5月1日号掲載)