いろいろあるネー、キムチ

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Mr.世界(キムチ)

つい何年かまえまでは、日本ではロクに知られてなかったものなのに、韓国ブームにのってあっというまに一般化してしまったキムチ。
漢字では「沈菜」。
 
韓国家庭におけるキムチの意味あいとか作りかたについてはよく雑誌にのっているから省くとして、当地の韓国系レストランで食べられるキムチについて書いてみよう。
まずは種類である。
 
いちばんよくあるのが白菜のペクキムチ。きゅうりはオイキムチ。ネギはパーキムチ。
キャベツや春菊、「ちさ」というレタスのような葉も使う。
おもしろいのは大根だ。角切りにしたものはカクトゥギというが、10センチくらいの長さの若い大根1本をまるごと使うこともあり、これはチョンガーキムチと呼ばれる。
チョンガーは日本語にもなっているが、「独身男性」という意味の韓国語(漢字で書くと「総角」)だ。
 
それはさておき(ほんとはさておきたくない面白い話題なのだが)、韓国に行くと、キムチにはもっともっといろいろな種類があり、主材料だけで187種類あるという。
水キムチ(ムルキムチ)というのがある。
おツユのなかに入った大根やカブの薄切りキムチだ。
 
韓国の食習慣にはいろいろな特徴があるのだが、そのひとつに、テーブルを囲んだ全員が、じか箸で共通の料理をつつくというのがある。
ナムルなどの副菜(パンジャン)類やキムチもおなじことで、家族や恋人ならばともかく、ビジネスではじめて会った男同士で、水キムチのおツユのなかから、じか箸でキムチを取り出して食べるというのは、日本人にはけっこう勇気がいるものだ。
これができるようになって、はじめて韓国料理ツウと言えるのである。
  
そのへんを察して、LAでは、水キムチだけは人数分出てくるところも多い。
酸っぱいキムチとそうでないのとがある。
漬けかたのいいキムチは、乳酸菌による発酵だけで、酢酸がふえていないので、薬念(ヤンニョム)とよばれる味つけが、うまみとなってよく出ているのである。
それにくらべて、工場生産のビン詰めのものを大量に仕入れて客に出しているような店のものは、酸っぱさがまさっているのですぐわかる。こういうところは概して料理もあまりうまくない。
 
日本の焼肉屋さんに行くと、キムチ一皿いくらとおカネをとられるが、韓国や、当地の韓国レストランでは決してそんなことはない。
韓国料理というものはメインディッシュでは店によってそれほど味の差がでないので、キムチや副菜で勝負している店も多いのである。

そこで、おいしいキムチにあたったら、遠慮せずにたくさん食べ、皿がカラになったら、ウエイトレスにその皿をゆびさして「トージュセヨ」と言えばいい。
「ネー(はい)」と言って、喜んで持ってきてくれるだろう。
ただし、辛いキムチのこと、うまいからといってあまりたくさん食べると、キムチ悪くなるかもしれませんよ。
 
(2005年1月16日号掲載)

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