昨晩はイタリア人の友人にディナーをごちそうになった。
賑やかに会話がはずみ、泣きたくなるほどおいしいパスタ、地中海ならではの香り高いエビやイカ、さわやかなイタリアン・ワインでお腹がはちきれそうになったところで、歓喜のフィナーレとなった。
デザート、そしてディジェスティーボである。
お腹が一杯なので、デザートは、軽くソルベット(シャーベット)にして、 ディジェスティーボをたのむ。
このディジェスティーボ、直訳は消化薬、つまり食後酒こそ、日本人の多くがまだ発見してない、ヨーロッパ、特にイタリア料理の大きな楽しみなのだ。
日本料理では、料理を食べながらビールや日本酒を飲んでも、食べ終われば酒も終わりだ。
だから食後酒という発想がわかないのだろうか。
それに、甘いワイン=安いワイン、すなわちまずいワインというイメージが定着しているから、以前に書いたフランスは、Sauternのデザートワインをはじめ、甘い酒は試されることさえめったにないようだ。
しかし、僕にいわせれば、食前酒からワイン、食後酒にいたる酒の流れこそ、食事全体のよろこびを最高なものに昇華してくれる立役者なのである。
イタリアで飲まれる食後酒は、その筆頭にあげられるのがLimoncello、リモンチェッロだ。
レモンから作った黄色いリキュールで、冷やしてストレートで飲む。
甘さたっぷりなんだけど、くどくなく、デザートといっしょに、またはこれをデザートとして、みんなでチビチビ飲みながら、さらに食後の会話を楽しむ。
レモン以外にもオレンジや、いちじくなどから作ったリキュールもある。
昨日のレストランでは、これらのビンをテーブルにいくつもボンと置いてってくれた。
好きなだけ飲めというわけだ。
ワイン系統の食後酒も多い。
シシリアの銘酒Marsala。
甘い香りがふくよかで、特徴的な濃い茶色をしているデザートワインだ。
北イタリアの料理にはZibibbo というマスカット種のぶどうから作った無色透明なデザートワインがよくあう。
フルーティで甘すぎず、とてもさわやかだ。
マスカットといえば、これも日本人にはあまり知られていないことだけれど、イタリアにはマスカットから作った甘口のシャンペンもあり、これを食後に飲むというのもたいへんオツなものだ。
正確にはイタリアだからシャンペンとはよばないが、AstiSpumante やMoscato d’ Asti などがシャンペンと同じように発泡しワインで、甘口でしかもさわやか。
デザートによくあうし、食後にぴったりだ。
そして、嗚呼、Grappa グラッパ。
食後酒として、コニャックがフランスの代表なら、グラッパがイタリアを代表する。
いずれもぶどうから作る強い蒸留酒だ。
コニャックが琥珀色で、グラッパが無色透明というちがいがあるのもおもしろい。
庶民的なものもあるが、高級なグラッパは、一口舐めただけで夢の世界に引き込まれるようなうまさだ。
イタリアの蒸留酒といえば、忘れてならないのがSambuca だ。
リコリス風味の酒で、かなり度数が強い。
お猪口のようなグラスに入れ、その中にコーヒーの豆を一ケ入れて飲むのがしきたりだ。
ああ、紙面が足りない!
少なくとも、読者のみなさん、イタリア料理を食べたら食後酒のことも思い出してください!
(2006年6月16日号掲載)
ディジェスティーボは消化薬
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