レストランに入る。テーブルにつく。メニューを見る。
料理をえらぶ。注文もおわった。さあ、どうしよう…。
料理を待っている時間というのは、かなり退屈なものなのだ。
仲間がいれば話をしていればいいが、それでもどうも手のやりばに困る。
そういうときに、なにかつまむものがあると助かる。
つまり、マンチーズですね。
マンチーズといってもチーズの種類ではない。
Munchies。すなわち”Small pieces of food for eating with drinks at a party”(オックスフォード英英辞典)で、munchという動詞には、”often noisily, especially something crisp”という説明もついている。
ドリンクがなくても、またパーティーでなくてもかまわないと思うが、要は、食事の一環としてではなく、会話をしながらつまむ、
パリパリ・カリカリとしたスナック的なもののことである。
メキシカン・レストランででてくる、トルティリャ・チップス、まさにあれがその代表だ。
チップスにサルサをつけながらバリバリやっていると、もうやめよう!
となんど思っても止まらなくって、おかわりまでしちゃった、という経験のあるかたは多いだろう。
チャイニーズでも、煎って塩をふったピーナッツなどを出すところもあり、これもなかなかいけてしまうのである。
アメリカナイズされたチャイニーズなら、「ヌードル」と称して、麺を短く切って揚げたものを出すところがある。
しかもわけのわからない甘いタレがいっしょにでてきたりする。
これはもちろん中国にはない。
インド料理店では、パパドだ。
豆を練って薄く延ばして揚げたもので、さながら極薄の煎餅。香ばしくてバリバリ感がすばらしい。
ヨーロッパでいえば、スペイン、特に南スペインのオリーブ。
Aceitunasといって、かならずテーブルに何種類かでてくる。
アメリカによくあるオリーブとはちがって、すっぱ過ぎず、塩から過ぎず、最高のマンチーズとなる。
フランスではなにか。
パンだ。
料理を待つあいだ、パンをちぎって食べたりワインをのんで会話を楽しむわけだ。
日本人は、パンというと、ご飯とおなじ発想で、料理を食べながら『主食』として食べるという発想があるが、フランスでは、朝食やサンドイッチは別として、基本的にマンチーズである。
その証拠に、一流の店になるほど、アペタイザーがでてきた段階でパンは引っ込められてしまう。
イタリアでもおなじで、カリカリしたビスケット状のパン(グリッシーニなど)が、マンチーズの役割を担う。
イタリアのばあいはそれが引っ込められてしまうことはあまりないが、料理がでてきたらそれを食べるひとはいない。
さて、ひるがえって日本ではどうだろう。なんにもないですねー。
ビールでもたのめばそれと一緒にエダマメが少し出てきたりするが、それ以外にはせいぜいお煎茶かなんかをすすりながら待つしかない。
これは改良してもいいのではないか。
日本食レストランで、お客をふやすひとつの方法になるのではないだろうか。
それが日本食の伝統であるとかなんとかは考えなくていい。
チャイーニーズだってあのわけのわからない「ヌードル」がでてきたりするのだ。
ではなにを出したらいいだろう。
エダマメをドサッと出してくれたら僕はうれしいのだが、これだとコスト的にむずかしいかもしれない。柿の種とピーナッツのコンビはどうか?
それか、グリーンピーズをわさび味でコーティングしたやつがあるが、あれはどうだろう。アメリカ人にはうけるのではないかと思う。
いずれも日本食のイントロダクションとしては味的にも違和感がないし、パリパリ感があって、最適なマンチーズだと思うのだが。
読者のみなさんはなにがいいですか?
(2006年7月1日号掲載)
食事の前にマンチーズ
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