カリブ海の風

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Mr.世界(カリブ海の風)

Photo by Masakazu Sekine

カリブ海の島に行ってきた。
カリブ海には、アメリカやフランス、イギリス、オランダなどの海外領土を含め、27の国と地域がある。
今回の旅行は、その中で僕にとって19番目と20番目になる国だった。
そんなことはどうでもいいから、カリブ海にはどんな食べものがあるの、ですね。
カリブ海の島々は、右に書いたようなヨーロッパの列強がさんざんブン取り合戦を演じてきたわけで、食文化にも、むかしのスペインを含む宗主国の影響がいろいろ見られる。
だから島によって食材や料理方法にちがいはあるのだが、やはりそこには広く共通したものも見うけられる。
 
音楽だって、カリプソやサルサ、メレンゲ、レゲエと、それぞれ個性をもったものだが、どの国にもアフリカから連れてこられた奴隷社会の歴史があるから、「リズム」という共通点があり、そしてカリブの明るい陽光や広い海がもたらす「開放感」がある。
 
食べものも、奴隷文化の名残りと、カリブ海の気候や植生からうまれた食材は、どの島に行ってもよく似ている。
その代表は、なんといってもプランタンだ。
バナナによく似ているので、熟してないバナナだと思って食べている旅行者も多いようだが、じつはちがうもの。土地の人におしえてもらったが、木からしてちがうし、実のなっている姿もかなりちがう。
このプランタンを薄切りにして軽く揚げたり茹でたりしたものが、ほぼ毎食カリブ海住人の食卓に登場する。バナナほどの甘みはなく、食感としては芋だ。
事実、ポテトチップスのようにプランタンをパリパリに揚げた袋入りスナック菓子も売られている。
 
さらには赤い豆、メキシコでフリホーレスとよばれる豆をRed Peasと呼び、これを茹でたりライスにまぜたりスープに入れたり。
さらにはパンの実。
これはホントにパンに食感がよく似た甘くない果物で、茹でて料理にそえる。
キャッサバという植物の根も、同じく茹でられたり、あるいはコネて焼かれてトルティリャ状になってよく食卓に登場する。
 
そう、お気づきのように、炭水化物の種類が豊富なのである。
これはかつての労働エネルギー確保ということと、無関係ではないと思う。
メインには、魚やチキンを火で炙ったりフライにした単純なものが多い。
あと、カリブ海にユニークな食材としては、ヤギだ。
カリブ海の島々を訪れると、なんともはや、そこら中にヤギが闊歩しているのにおどろく。
家畜も多いが、野生化した連中が島中をうろついているのは、カリブ海の島に共通しているのだ。
 
そこでヤギ肉をジンギスカンのように焼いたり、あるいは煮たりしたものも、カリブ海料理の特徴である。
いずれも、洗練されたキュジーヌというようなものからはほど遠いが、うまいかまずいかと尋ねられれば…。
カリブ海を渡る風に吹かれながら、海岸のよしず張りの店で食べた炙った魚と炭水化物たちは、
えらくうまかったです。
 
(2007年5月1日号掲載)

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