刀削麺のことはご存じですね?
練った小麦粉のカタマリを持った人が大きな鍋の前に立ち、包丁でサッサッと削って鍋の中に直接放り込んでいく、あの麺のこと。
テレビなんかで見ることあるでしょう?
でも食べたことありますか?
中国へ行ったら食べてみたい、と思ってるあなた、LAでもちゃんと食べられるって知ってましたか?
刀削麺は、山西省生まれ。
そもそも中国の麺というものは、山西省の太原辺りで誕生したものだ。
米が育たない土壌なので、小麦粉ベースの食事が発達したわけだ。
その西どなりにある陝西省の省都、日本の観光客がよく訪れる西安でも、名物料理になっている。
日本でも最近はアジア食文化が流行っているせいか、これを作って出している店もだいぶ増えているようだ。
LAでは、北京料理の店をはじめ、北方系の料理を出す店にいくと、この麺がメニューにのっていることがよくある。
刀削麺は、「く」の字型に反った平べったい包丁で、カタマリをたくみに角度を変えながら削るから、麺に長いのと短いの、厚いのと薄いの、太いの細いの、といろいろなのができて、それが食べたときに独特の食感を与えてくれる。
味付けとしては、ホンバではトマトを使ったソースや、豚肉の入ったトロトロしたあんなどをかけて食べることが多い。
もちろんスープ麺もあり、たとえば羊肉と酢漬け白菜入りの、酸っぱいスープ麺。
酸っぱいといえば、僕はそのトマトソースのばあいでも、酢を少したらして食べる。
そう、なぜかこの麺には酸味がよくあうのだ。
そういえば、餃子なんかも酢醤油をつけて食べるとうまいから、小麦粉のカタマリ感は酸味と相性がいいものなのだろう。
麺の食感は、というと、まず、口に入れたとたんに、水餃子に似たツルッとしたカタマリ感が口を満たす。
さて次に歯で噛んでみると、ムチムチっとした弾力と重みがあって、ラーメンのスルスルした流れとはかなり違う快感がある。
イタリアでも、パスタの代表格はスパゲッティであることにまちがいはないのだが、そのほかにもラビオリとかファルファーラ、オレキエッテなど、表面積が大きくてツルツル感を楽しむパスタがいろいろあるのに似ている。
練った小麦粉をさまざまな形にして楽しむという発想は、中国とイタリアに共通していておもしろい。
特に刀削麺は、太い細いや、厚い薄いの、手作りらしい不均一性が味わいを増すのだ。
前にサラダの時に書いたように、機械で切った野菜はまずく、手でちぎったものがうまいのと似ている。
ところで、ここまで刀削麺のことを「とうさくめん」と読んでいた方、これから、「タオショーメン」と中国語風に読むことにしませんか?
「とうさくめん」じゃ「盗作麺」みたいに聞こえるし、日本でも「炸醤麺」を「さくしょうめん」と読んだり「湯面」を「ゆめん」と読んだりはしないしね。
(2007年6月16日号掲載)
盗作じゃない刀削麺
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