タイ語でボサノバを聞いたことがありますか?
そんなの気にしたこともないし、それがどうしたっていうの?と言われるだろうか…。
東南アジア、たとえばカンボジアやラオスなどを旅したあと、飛行機の乗り継ぎが便利なバンコックに着き、「まあせっかくだから、一泊してタイ料理でも食べてから帰ろうか」ということがよくある。
そうして飛行場から街の中心に向かう高速道路を走っていると、「ああ、現代社会に帰ってきたなあ」と感慨にふけってしまう。
あのあたりでは、タイは先進国なのだ。
観光名所に恵まれていてたくさん外貨を稼げるということもあるが、もともと東南アジアでは唯一、西欧による植民地搾取を受けていないということもあるだろう。
だから独自の文化を発達させているし、一方では外国の文化も自主的に取り入れている。
世界のグローバル化の波は、ここにも確実にやってきているのだ。
バンコック中心のチャオプラヤ川のほとりには、おしゃれなレストランがならぶ。
そこのひとつで食事をしていたとき、流れているBGMにふと注意がいった。ボサノバのリズムだ。
よく聞いてみたら、タイ語で歌っている。
タイ語のボサノバ…。
歴史的には、ほとんど交流と言えるようなものはなかったであろう、遠く離れたブラジルとタイというふたつの国の文化が、いまの世のなかにおいては、いとも簡単に結びついてしまう。
さて、お待たせしました。やっと本題にはいります。
食文化の世界でも、グローバル化は、はっきりとあらわれているのだ。
中華料理はもちろんのこと、日本料理、イタリア料理、フランス料理の店…。
そして、タイ料理そのものがそういう外国の刺激を受けて、より磨かれ、味やプレゼンテーションがいっそう洗練され、おしゃれになってきている。
もともとタイ料理というのは、スパイスのパンチがきいて、食材のバラエティーも、料理の奥行きもあるすばらしい料理だが、それがさらに洗練されてしまうとどうなるか?
マイッってしまいます。
ショッキングなうまさである。
LAでもタイ・コミュニティーは確実に発展しているし、レストランもどんどんふえている。
ほかの料理にくらべても「はずれ」の滅多にないタイ料理レストランたちなのだが、最近はとくに「あたり」の店がふえてきた。
いままではパパママ的な家庭料理のような店が多かったのだが、いまや店のインテリアもおしゃれで、独自の個性を出した料理も食べられるようになってきた。
タイ語のボサノバを聞きながら、アメリカで日本人がイタリア料理を食べるのって、決して悪くありませんよ。
(2007年7月16日号掲載)
タイ語でボサノバ
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