ポーランド、ワルシャワの旧市街。ユネスコの世界歴史遺産だ。
歴史といっても、たかだか半世紀である。
それがなぜ世界遺産になったかというと、第二次大戦中ナチによって徹底的に破壊されたこの街を、戦後になって市民たちが自分たちの手で、それ以前のとおりに復元した。
それが歴史的重みを持つのである。
まえからいってみたかったその旧市街に、この夏訪れた。
思ったよりずっと広い地域の、すべての建物が装飾や内装にいたるまで緻密に再建してある。
ポーランド人の、自国の文化や歴史に対する強い誇りを感じ、感動的であった。
ここへ来た大きな目的のひとつは、もちろん本場のポーランド料理を食することだ。
ポーランドは初めてではないが、前回はワルシャワではなかった。
しかも20年近くまえの共産主義。モノ不足の真最中で、うまいものはなにもなかった。
だが今回はちがう。いまやEUにもNATOにも加盟したこの国の、近年の経済成長は著しい。
観光客もどんどん来ている。
ポーランド料理とは、ひとことでいえば、ロシア料理とドイツの料理の中間といっていい。
そう、ここはビールやソーセージが、ドイツに負けないくらいうまい。
ザワークラウトも常食だ。
焼きソーセージの盛り合わせ、などというものがあって、レストランでよく食べているのを見かけた。
そしてボルシチやストロガノフなどのロシア料理。
ボルシチは、ロシアと同じく温かいのと冷たいのがあり、夏だったので冷たいのを頼んでみたら、ビーツのほんのり甘いまろやかなスープが適度に冷えて、清涼感にあふれ、みごとなうまさであった。
もちろん、ポーランド独自の食べものもある。
まずはピエロギ(Pierogi)。押しも押されぬ、ポーランドを代表する料理だ。
小麦粉の皮に、ひき肉、キノコ、たまねぎ、キャベツ(ザワークラウト)、またはチーズ、ジャガイモなどを包んで茹でたもの。まさに水餃子だ。
それらのいくつかの具のピエロギの盛り合わせを食べた。
食感はイタリアのニョッキに似ている。餃子のようにジューシーではない。
そういう点で、肉よりも、ザワークラウトやチーズのものがうまい。
それに、僕は食べそこなってしまったが、ブルーベリーのピエロギというものがあり、サワークリームをかけて食べるスナックだ。
これはうまそう!
もうひとつ代表的な料理が、ズレック(Zurek)という、白ソーセージ入りのライ麦スープだ。
ちょっと雑炊に似た感じの食べもので、親しみやすく、心と体が温まる。
今回いちばんうまかったのは、白ソーセージに、ホースラディッシュから作ったソースをかけたものだった。
これを旧市街の、300年くらい経っていそうなレストランで(じつは60年しか経っていないが)味わいながら、ポーランドの苦難の歴史といまの繁栄に思いをはせたのであった。
(2007年8月1日号掲載)
歴史遺産のポーランド料理
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