この夏はマレーシアに行ってきた。
よし、印象が鮮明なうちにマレーシア料理のはなしを書いてしまおう。
マレーシアはインドネシアと隣どうしで、人種的にも非常に近いし、イスラム教が国教という点、さらにはマレー語とインドネシア語と、通常別の名で呼ばれていても、実質上は100%同一の言語を使うなど、共通点が数多くある。
料理も、ナシゴレン(ヤキメシ)、ミーゴレン(ヤキソバ)、サテー(串焼き)など、共通のものが多い。
ところがおもしろいことに、かなりはっきりとした違いも、いくつかみられる。
そのひとつは、インドネシアは「白いゴハンとおかず」的なものが多いのにくらべ、マレーシアは「白いゴハンにカレー」というスタイルが主流だ。カレーといっても、ココナッツミルクを使っていろいろな材料を煮込んだようなもので、
距離が近くなる分、フィリッピン料理にも近くなる。
そして、もうひとつがマレーシアの国民的料理ともいえるスープ麺、ラクサ(laksa)だ(シンガポールなどにいるマレー系のひとたちも好んで食べる)。
使われる麺は主として米から作ったもの。
ここからして日本人の親しんでいる小麦粉系やソバ粉系の麺とはちょっと違う。
ベトナムのフォーも米の麺だが、ラクサはもっと太く、細めのウドンほどの太さだ。
これが独特のツルッとした食感を与えてくれる。
コウティアウと呼ばれるキシメン状の米麺(中国でいう粿條)も使われる。
そして、スープの味付け。
いちばん代表的なのはアサム・ラクサという名の、フィッシュ・スープだ。
鯖系統の青魚をすり身にして使うから、サカナサカナした味で、日本人にとってもかなり異国情緒がある味になる。
さらに日本のスープ麺と決定的に違うのは、タマリンドを使うことだ。
タマリンドというのは、東南アジア熱帯地方独特の豆で、調味用に非常に多用される。
「あれ? 梅干しでも2、3個入っているのかな?」と思わせる強烈な酸っぱさが特徴で、これがこのアサム・ラクサの味をさらに異国的にしている。
アサムというのはとりもなおさずタマリンドのことだ。
マレーシアはペナン地方の名物なので、ペナン・ラクサ(Penang laksa)と呼ばれることもあるが、マレー人にいわせるとすこし違うらしい。
そのほかに、レマッ・ラクサ(lemak laksa)というスープ麺も非常に一般的だ。
レマッとはクリーミーという意味で、すなわちココナッツミルクを使う。
ココナッツミルクは日本では全く使われない素材であるから(エスニックレストランは別として)、異国情緒をかもしだす。
つまりとりもなおさず、一見日本人が親しんでいるラーメン風の見かけながら、食べてみると異国情緒だらけのスープ麺、これがラクサである。
エスニック料理の初心者にはちょっと上級すぎて苦しいかもしれないが、この料理が生まれ育ったメチャ暑い東南アジアの環境の中で啜ってみれば、意外に「これなら楽さ!」となるかもしれない。
(2007年9月16日号掲載)
苦あれば楽ありマレーシア
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