ミシュラン・ガイドのLA版と東京版がついに出た。
このライトハウスが読者のお手元に届くころにはいささか旧聞に属しているかもしれないが、僕としては一言書かないわけにはいかない。
言うまでもなく、ミシュランはヨーロッパでは最も権威のあるレストラン(とホテル)のガイドである。
東京版。これには正直ド肝を抜かれた。
掲載された150軒すべてに星? そんなバカなそんな街は世界中にないし、パリだって何百軒か掲載されているうちで星が付いているのは60軒かそこらだ。
僕は、ヨーロッパに行くといつもミシュランを利用している。
しかし、じつはこのガイドには難点もあるのだ。
星の付いている店は、僕に言わせるとフランス料理的基準で判断されたものが多く、必ずしもその土地らしさを反映していないということだ。
たとえばイタリアやスペインの店で星付きというのは、フランス料理に近い料理を出す店。
逆に、駅前でパパ・ママがやっている小さなトラットリアでおそろしくうまいパスタを食べさせる店とか、家庭で漬けたうまいオリーブを前菜に出す店、そういう本来のイタリアやスペインのよさを出した店は、掲載されることはあっても、星が付くことはまず絶対にない。
その点で、東京版に掲載された星付きの半分以上の84軒が日本料理、しかもその中にはカウンターだけという店やソバ屋さんなどもあるというのは、画期的なことだ。
しかし、LA版は、そういう意味において、おおいにがっかりさせられた。
星はおろか、掲載された263軒の中でチャイニーズがたったの4軒。
それもEmpress Pavilionはいいとして、昔からアメリカ人の間では有名だが特別どうということのない店が一軒と、超アメリカナイズの店が二軒である。
San Gabriel界隈に無数にある、あのオーセンティックですばらしい味の店たちはどうなっちゃった?
インド、タイ、あるいはモロッコやギリシャ料理の店でさえも、あきれるほどアメリカナイズされた店ばかりである。
日本料理店だけは51軒も掲載され、なかには立派に本物の店もあるから、調査員も日本食にはかなり舌が肥えたようだ。
LAのすばらしさというのは、僕がいつも書いているように、フランス料理のレベルがどれだけ高いかといったことではなく、エスニック食文化の広がりと、それらのホンモノ度なのだが…。
しかし、ヨーロッパ・アメリカ系統のいわゆるヨコメシ関連においては、かなり僕の予想通りの結果であった。
LAには三ツ星クラスはないが二ツ星は何軒かある、そのひとつはMlisse、と以前書いたことがあるが、そのとおりだった。
Urasawaという寿司屋さんは、僕はそのお値段ゆえまだ行ったことがないが、堂々の二ツ星。
Spagoが二ツ星というのは意外だったが、いちばん最近行ったのが10年も前だから、あれからレベルアップしたのだろう。
ま、ホンモノ・エスニックについては、ぜひこの『美味礼賛』をご信頼、ご利用してください。
(2007年12月16日号掲載)
出た! ミシュラン
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