3号まえに世界の朝ゴハンについて書いたけど、じつはもっと書きたいことがあるのです。
よくいわれることだけど、日本人の旅行パターンは、滞在日数が短く、そのあいだにできるだけたくさんのものを見てやろうとする。
たとえばハワイのリゾートに泊まってると、朝っぱらから玄関に大型バスが止まっている。見ていると日本人の一団がゾロゾロと乗り込んで、どっかへ行ってしまう。
観光かショッピングか知らないが、せっかくハワイに来たのなら、もっとのんびりと海やプールサイドを楽しんだら?
朝食をとるのも、彼らは朝食バフェに決まった時間にドッとやって来て、さっさと食べていなくなる。
僕にいわせれば、旅の朝食というのは、今日一日の観光のために腹を満たすだけではなく、朝食そのものを楽しみのひとつとしてもいいと思う。
たとえば、ルレーシャトー。
これも以前に書いたけど、ヨーロッパを中心に、中世の城や貴族の館などを改造した小規模ホテルを展開している、フランス系のフランチャイズだ。
その多くは景色のいいところや森の中などにある。
まさに貴族になった気分の部屋でゆっくりと目を覚まし、これもまた貴族風朝食ルームに行くと、ルレーシャトーの場合は必ずそうなのだが、そこのキッチンで焼いたばかりのさまざまなパンがサーブされる。
これがこたえられない。フランスのパンはどこにいってもすばらしいのだが、特にルレーシャトーの朝食で食べるパンは、これを目的としてフランスまで出かけて行ってもいい。
これまた世界一おいしいフランスのバターと土地の果物で作った自家製ジャムをつけ、ゆっくりとカフェを飲む。
窓の外にはみどりの庭と、その先にはロワールの森。
数人しかいないお客は、まわりをみださないように、小さい小さい声で会話しながら、みんな朝の静かなひとときを楽しむ。
今日の午前はテラスで読書をし、午後からこのあたりの森を散歩して、夜はこのホテルでまたすばらしいディナーとワイン、そしてまたここにゆっくり泊まる。そんな気持ちの余裕が、朝のパンとコーヒーを格別においしいものにしてくれるのだ。
ルレーシャトーまで行かなくても、パリでもいい。
大きなホテルに泊まったら、そこで高いお金を払って朝食バフェを食べないで、ちょっと外に出たらいい。
朝食前の散歩は特に気持ちがいい。
夏のパリ、朝は涼しくて、柔らかい太陽のもと、木漏れ日の下にテーブルを出しているカフェをみつけ、そこで朝食をとる。
フランスのオムレツ、これは日本のオムレツともアメリカのオムレツともちがう、格別なものなのだ。
卵もバターも焼き方がちがう。
これとバゲット、コーヒー。
値段はホテルのバフェの半分以下。パリのよさは倍以上。
フランス人はここで新聞をよみながら一時間もかける。
みなさんはガイドブックでもいいです。いちどパリの朝食に一時間かけてみてください。
(2008年9月16日号掲載)
朝食のすすめ その②
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