今年はチベットがだいぶ話題になった年だった。
僕がチベットの首都、ラサに行ったのは二年前。しっかりと高山病になった以外には、チベットらしさがほとんど感じられなかったのにはがっかりした。
中国政府が漢民族をたくさん移住させたためだろう、街並みはどこにでもある中国の田舎町という感じ。ダライ・ラマがむかし住んでいたポカラ宮殿は、さすがに外観こそ威容を誇っているが、中へ入ってみると、チベット仏教がこの地で手厚く保護されている様子はほとんど感じられない。
チベットの仏教や文化は、むしろ隣国インドやブータンのほうにしっかり引き継がれているのである。
だいぶまえにインドの北部、ラダック地方に行ったときは、まさにチベットのイメージそのものの世界だった。
そして今年、ブータンに行ってきた。
インド北部は、チベット人がたくさん難民となって住んでいるところだが、ブータンは古くからチベット人が移住し、チベット文化がベースとなってブータン文化となっているのだ。
おっと、どんどんスペースがなくなってしまうので、早いとこチベット料理のはなしに移りましょう。
チベット料理は、基本的に中華料理に近い。
種類は決して多くない。
野菜や肉の炒めもの、ヤキソバ、といった単純な食べものが日常の料理だ。
海からは遠いので、海鮮料理はまったくないといってもいい。
主食は、ツァンパというオオムギから作った団子だ。
唐辛子(エマと呼ばれる)を使った料理も多い。
もともと中米にしかなかった唐辛子が、地球の反対側の、しかも内陸、しかもヒマラヤの上まで上っていって、主食に準ずるくらいポピュラーな食材となってしまったというのは面白いことだ。
モモという名の水ギョーザ、これも国民食といってもいい。具には野菜やヤクの肉が使われる。
寒いチベットでとても体が温まる食べものだ。
温まるといえば、バター茶。
寒い中でお湯を沸かし、湯気の立つバター茶をいれて飲んでいるチベットの人たちを、テレビで見た人も多いだろう。
これがなければチベット人もブータン人も一日が始まらないし、食事もまともに終えられない。
そして、これがマズイのです。
僕は世界中をまわってなにひとつ嫌いな食べものがないのだが、バター茶だけは例外だ。
お茶も塩もバターも、それぞれはなんら珍しいものではないのだが、これらをミックスしちゃうと、なぜかわからないけど、のどを通らない。
いちばん好きなものはトゥクパ。
ガイドブックには「チベット風うどん」と書いてあるが、麺はうどんとも中華麺ともちがう、ちょっとスパゲッティみたいな麺がはいったスープ・ヌードル。そして麺ばっかりではなく、米が入ったおじやみたいなバージョンも食べた。
こういうチベット料理が、地球をまた半周してLAでも食べられるのだから嬉しいですね。
(2008年10月1日号掲載)
うわさのチベット
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