カタールのかぜ

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Mr.世界(カタールのかぜ)

どうです、今回はなかなかロマンのあるタイトルでしょ?
 
年始に、アラビア半島のカタールを訪れた。
折りしもヨーロッパと中近東を襲った寒波でえらく寒く、かぜを引いてしまった。というわけで、カタールのかぜである。
 
ま、お腹をこわしてカタールで大腸カタルになるよりはましだったが。
さて、カタールの食事について。
ドバイやアブダビなどもそうだが、あのあたりでレストランで食事をしようと思って街に出ても、インド料理とバングラデッシュ料理の店ばっかりである。
 
建設ラッシュで、街はインドやバングラデッシュの労働者であふれている。アラブ人はたまにベンツかBMWでピューッと通り過ぎるだけだ。
そこで、アラブの料理を食べたいと思ったら、高級ホテルのレストランに行くことになる。
 
アラブの国々のなかでは、レバノン料理がもっとも洗練された高級料理とされている。
ゴマ、レモン、ハーブ、ヨーグルトなどの風味を巧みに使った、独自の洗練された料理がある。
レバノン料理を語るうえで絶対に欠かせないのは、前菜(Mezze)。
 
まず、「フムス」という、ヒヨコ豆のペースト。これがなければ食事が始まらない。
ピタパンをチギッてこれをつけながらワインを飲む。始まったら止まらなくなる。
トルテーリャ・チップスにサルサをつけだすと止まらない、あのノリである。
 
ワイン、そう、レバノンはワインの名産地、どころではなく、じつはワイン発祥の地とされているのだ。
 
「ファラーヘル」、つまりひよこ豆を揚げたコロッケも代表的な前菜。なるほど、このアペタイザーを食べるとちゃんと腹減る。
 
「タブリー」というパセリのサラダも、必ずテーブルに出てくる。僕の好物だ。
メインは御存じシシカバブを中心として、「シュワルマ」、つまり羊肉を積み重ねてグルグル廻して焼いて、横からナイフで削っていくやつ、見たことあるでしょう? ああいう肉料理が中心。
 
中近東の羊肉は、不思議なほどウマい。
シチューや、クスクスのような料理、それにムサカやドルマテスなど、ギリシャと共通のものも多い。
 
レバノンはキリスト教徒が多く、金曜に肉食を絶つ習慣からか、ベジタリアン料理も多い。野菜だけのカバブなんかもなかなかオツなものである。
 
油はオリーブオイル。つまりイタリアや南フランスと共通である。
LAにあるレバノンのレストランは、だいたいみんな「Mediterranean Restaurant」と看板を掲げている。
 
イタリアや南フランスの店とまちがって入って来る客がいるからだろうか。
つまり、Mediterraneanと言っても、地中海全体の料理ではなく、地中海突き当たり料理なのだ。
突き当たっても、突き当たりがいのある料理、それがレバノン料理である。
 
(2009年2月16日号掲載)

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