最近、巷ではタパスが流行りのようだ。
以前はとても少なかったLAのスペイン料理の店も、今やずいぶん増えて、僕の知っている限りで30店ほどある。
タパス。つまり、小さいお皿の単品料理をいくつもとって、仲間といっしょにつまみながら、おしゃべりをしながら、ワインを飲む。
つまり、日本の居酒屋と同じコンセプトですね。
LAでこのスタイルが流行ったのは、どうも日系の居酒屋スタイルの店がまず認知され、そこからこのスペイン風居酒屋、つまりタパスも流行り出したような気がする。
でもスペインでは、タパスはもともとあるものだ。
スペイン、たとえばマドリッドで夕食をとろうと思って、9時近くとかにレストランに行くと、ドアに鍵がかかっている。
あれ、もう今日は店じまいしたのか、と思うと、じつはまだ開店していないのである。
だいたい9時に開店し、10時ごろまではまだ客もまばら、11時ごろがピークとなり、夜中の12時過ぎまで店はお客でいっぱいである。
スペインでこんなに遅い時間の夕食が習慣となっているのには、じつは秘密がある。
それがタパスなのだ。
仕事を終えたあとの6時や7時ごろから、ひとびとは街に散歩に出る。繁華街には大勢の友人どうしや夫婦が連れ立って、ウィンドショッピングをしながらそぞろ歩きをしている。
そして適宜、バルつまりワインバーに立ち寄り、ワインを何杯か飲みながら、立ち食いでタパスを食べる。つまり、アペタイザーだ。
これに時間をかけるから、必定、レストランに移ってメインの食事をする時間は、すごく遅くなる。
さて、タパスの代表的な料理は、というと、まずはトルティーリャ。
え? トルティーリャなんて料理と呼べるの? ただトウモロコシの粉を薄く延ばして焼いただけのものでしょ?
おっとどっこい、それはメキシコのはなしですね。スペインでは玉子焼きのことなのです。しかもジャガイモ入りで、結構しっかりした料理。
アサリのワイン煮なんかもあるのは日本の居酒屋と似てますね。
エビの鉄板焼き。これは非常にウマイです。マドリッドは海から遠いにもかかわらず、この手の海産物がやたらうまい。
オリーブ盛り合わせ、ミートボール、イカリングやベビーイカのまるごとフライ、ソーセージ、チーズ盛り合わせ、コロッケ、酢漬けアンチョビ、鱈の塩漬け、それにスペインの誇る生ハム…。
うーむ、思い出しているとスペインに飛んでいきたくなる。
LAにあるスペイン料理店では、メインコースやパエリャなどのゴハンものもタパスとして注文でき、ヘタするとパスタなんかもある。
パスタのタパスとしゃれたつもりかもしれないが、そういうことはスペインではない。あくまでもタパスはタパスなのだ。
でも日本の居酒屋風、タパスからパスタまで一軒ですんじゃうというのも、悪くはないですね。
(2009年4月1日号掲載)
タパスが流行ってます
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