ミスター世界の食文化紀行

“ミスター世界”こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカなど、本誌掲載コラムのバックナンバーをセレクトしてご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ライトハウス編集部
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つらくてうれしい300回

このコラムが今回で300回目となった。   ライトハウスの読者には、前のシリーズとあわせるとはや20年、500回近くも拙文におつきあいしていただいていることになる。   今回はこのコラムの裏話を書かせてください。   読者の方とお会いする機会があると、最もよく受ける質問は、「レストランはどうやって探すのか」ということだ。   その答えはこうだ。   Zaga … »ミスター世界の食文化紀行「つらくてうれしい300回」の続きを読む

音楽は料理をおいしくする

初めてアンドレア・ボチェッリを聞いたのは、あるレストランのバックグラウンド・ミュージック(BGM)だった。十数年まえのことだったと思う。   イタリアン・レストランで、まわりの人の会話にまぎれてかすかに聞こえてくる歌声は、イタリア語だということはわかるが、聞いたことのない声だ。   朗々として、ソレントの崖の上から真っ青な地中海を眺め渡しているような気持ちに … »ミスター世界の食文化紀行「音楽は料理をおいしくする」の続きを読む

ニシンの子

僕は子供のころ、「和ちゃん」と呼ばれてた。   それがいったいニシンとどういう関係があるのかというと、そのころ、僕はよく   「♪かずちゃん数の子ニシンの子~」   と歌われてからかわれたので、子供ごころになぜかそれに深く傷ついて、ニシンには恨みを持ったものだった。   ニシンに罪はないんですけどね。   それから、大人になってオランダでニシンを食べたら、あ … »ミスター世界の食文化紀行「ニシンの子」の続きを読む

フワフワのカルチョッフォ

イタリアのシシリー島。風光明媚なこの島には、イタリア本土から列車に乗ったまままるごとフェリーに乗って渡る。島に着くと、列車はそのまま走りだす。   車窓から外を眺めていると、遠くに見える雄大なエトナ火山を背景に、線路に沿って延々と、いままでに見たことのない作物の畑が続いている。   「あれはなんですか?」と、そばにいたイタリア人に聞いた。   「Carcio … »ミスター世界の食文化紀行「フワフワのカルチョッフォ」の続きを読む

ソターンの色

前回の「ワインの色」についての続きです。   ワインのなかで、いちばん色の美しいものはどれでしょう。   もちろん人によって意見が違うだろうけれど、僕にいわせると、ソターンだ(日本ではソーテルヌと呼ばれる)。   ボルドーの東にある、Sauternes地方のデザートワイン。   黄金がもし透明だったらこうなるだろうと思うほど、あざやかな、しかし深みのある美し … »ミスター世界の食文化紀行「ソターンの色」の続きを読む

ワインのいろもいろいろ?

あるときJALのスチュワーデスが、LAに着いて帰りの乗務までのあいだ、ラスベガスに行き、ルーレットに興じた。その帰りのフライトで、客に食事をサーブしながら、 「ワインは赤にされますか?黒にされますか?」   と聞いてしまったというのは、深田祐介氏の『スチュワーデス物語』にでてくる実話だ。   ワインの色というのは、赤か白、それかロゼに決まっている。 …と思う … »ミスター世界の食文化紀行「ワインのいろもいろいろ?」の続きを読む

ちょっぴー(り)のイタリアン

アメリカ人がジャパニーズ・フードだと信じて疑わないけど、じつは日本にはそんな食べものはありません、と教えてあげたくなるものがありますね。たとえば奇妙なスシロールのかずかず。   おなじように、みんながイタリア料理だと思っているけど、じつはアメリカ生まれ、つまりアメリカ料理なのだ、というものがいろいろある。   ガーリックブレッドやスパゲッティー・ミートボール … »ミスター世界の食文化紀行「ちょっぴー(り)のイタリアン」の続きを読む

モロッコ料理はフランス料理

フランス料理はおいしい。   フランスに行って食べるフランス料理はとくにおいしい。   これはいまさら言うまでもないですね。   さて、それではフランスでフランス料理以外のものを食べたらどうなのか。   これがおいしくないのです。   たとえばイタリア料理。舌が肥えているフランス人相手の、しかもすぐ隣の国の料理だからさぞかしおいしいだろうと思うのだが、なんど … »ミスター世界の食文化紀行「モロッコ料理はフランス料理」の続きを読む

ベルギーが一番

バレンタインはちょっと過ぎちゃったけど、今回はチョコレートのおはなし。   チョコレートというと、ゴディバ(Godiva、英語ではゴダイバ)など、ベルギーが有名だが、はてなぜだろう?チョコレートの生産量が世界でいちばん多いのはアメリカで、ベルギーはその十分の一程度にすぎず、日本よりも少ない(※)。   それなのにおいしいというのにはいろいろな説があるのだが、 … »ミスター世界の食文化紀行「ベルギーが一番」の続きを読む

レモンあちらこちら

レモン、lemon、柠檬(ニンモン=中国語) 、citron(フランス語) 、limone(イタリア語) 、Лимон(リモン=ロシア語)…。   世界中どこでもポピュラーな果物だが、その特徴は、応用性の広さだろうか。   肉や魚料理の風味づけに、サラダや野菜にも味わいを加え、スープのベースにも、甘いデザートのソースにもなり、 ソフトドリンクの原料や、酒にも … »ミスター世界の食文化紀行「レモンあちらこちら」の続きを読む

温度の味

味には、本来、四つの要素があるとされてきた。甘い、酸っぱい、からい(塩味)、苦い、である。   何年かまえに、それに、日本人がみつけた「旨味」が加わった。   つまり、味の素の原料として日本人が見つけたグルタミン酸やイノシン酸などが、食べものの味を決める五大要素のひとつとして国際的に認められたわけである。   umamiという日本語がそのまま使われている。 … »ミスター世界の食文化紀行「温度の味」の続きを読む

ボケとオタンコのオーバージーン

aubergine。   何のことだかご存じですか?   アメリカで通じないイギリス英語の代表格ではないだろうか。   ナスのことだ。   逆にイギリスでeggplantといっても、多くの人には通じない。   じつはaubergine というのはフランス語から来ているわけで、アジア原産のナスがフランスからドーバー海峡を越えてイギリスに渡ってきたのだろう。   … »ミスター世界の食文化紀行「ボケとオタンコのオーバージーン」の続きを読む

バフェーに目移り

このあいだラスベガスに行ったとき、ディナーをホテルのバフェーで食べた。 ラスベガスの大きなホテルはどこもバフェーに力をいれていて人気があり、入ってみると、めまいがするくらい料理の種類が多い。   しかしどうもピンときませんね。 あまりに種類が多すぎて目移りし、「あれも食べたいこれも食べたい」という気持ちが走ってしまう。気がついて見ると皿にテンコ盛りになってい … »ミスター世界の食文化紀行「バフェーに目移り」の続きを読む

誘惑のドーナツ

明治から昭和に生きた詩人・作家の佐藤春夫が、『詩文半世紀』という自伝に、こんな文を書き残している。   「慶応の勉強をほったらかしにして毎日パウリスタまで歩き、珈琲とドーナツで何時間もねばるのだが。毎日こんなことばかりして末はどうなつ事やら」   僕がこのコラムに書きそうなオヤジギャグを、あの佐藤春夫大先生が書いておられるのだから、僕も安心してオヤジギャクに … »ミスター世界の食文化紀行「誘惑のドーナツ」の続きを読む

コーシャーの真理

イスラエルに行ったとき、疲れていたのでホテルの部屋でルームサービスをした。 クリームスープとハンバーガーを頼んだのだが、しばしして部屋に運ばれてきたのは、クリームスープだけだ。 「ハンバーガーも頼んだんですが」。 と聞いてみる「スープにはミルクが入っていますから」。 との答えだ。   あーそうか、とは思ったが、次にハンバーガーが運ばれてきたのは1時間もたって … »ミスター世界の食文化紀行「コーシャーの真理」の続きを読む

エビみその旨味

「カニみそ」というのはよく聞くけど、「エビみそ」ってあまり話題にのぼりませんね。   そう、あの、エビのあたまの部分に入っている、脳ミソのこと。 広東料理では、「游水蝦」というエビをよく食べる。水で遊んでいるエビを食べちゃうわけだが(水といっても水槽の中)、どうやって食べるのがいちばんうまいかといえば、白灼(バイツォー)だ。 すなわち、素茹で。   アメリカ … »ミスター世界の食文化紀行「エビみその旨味」の続きを読む

忘れられないサーモンの味

ある夏、アラスカを訪れたときのこと、ちょうど産卵の季節で、町の中を流れる小川に大量の鮭が川登りをしているのを目撃した。 町のひとは見慣れているのだろう、さほど気をとめることもない様子だが、僕をふくめ数人の観光客は、その光景に見とれてしまった。 ピョンピョンと跳ねながら、必死になって段差や堰を乗り越えようとし、失敗し、また挑戦し、一匹、また一匹と成功してまた次 … »ミスター世界の食文化紀行「忘れられないサーモンの味」の続きを読む

クレンザー食べたい

今回はクレンザーを食べるはなし。   といっても、掃除用のクレンザーを食べるはなしだと思った読者はいないだろうが(たぶん)、口の中を清掃するクレンザーのはなしである。 正確にいうと、パレット・クレンザー。Palate CleanserともPalette Cleanserとも書く。   Palateとは口蓋、上あごのこと。転じて口の中で味覚を感じるところ全体、 … »ミスター世界の食文化紀行「クレンザー食べたい」の続きを読む

アメリカ家庭料理の代表、ミートローフ

気がついたら、このコラムはアメリカ発で300回近く書いているというのに、アメリカ家庭料理について書いたことはほとんどない。 そのワケは、アメリカには伝統的で特徴のある料理というものが少ない、ということになると思うが、少ないなかでのひとつがミートローフだ。    この料理は、じつはアメリカの家庭料理でもあるけれど、日本の家庭料理でもあるって、知ってました? 日 … »ミスター世界の食文化紀行「アメリカ家庭料理の代表、ミートローフ」の続きを読む

バカにできないノンアルコール飲料

いまさらいうまでもないかもしれないけど、僕はアルコール類がだい好きだ。 でもときどき、飲み過ぎたり、体調が心配になったりして、反省することになる。 そのときばかりは、アルコールを飲むのをやめる。 といっても、僕はソフトドリンク類は一切飲まないことにしているし、食事の前後にはなにかが飲みたくなる。   そこで、ためしにノンアルコールドリンクを飲んでみることにな … »ミスター世界の食文化紀行「バカにできないノンアルコール飲料」の続きを読む

ミルクったっていろいろ

ミルクとひとことで言ったって、いろいろあるわけです。 西サハラという国に行ったとき、サハラ砂漠のまんなかのトゥアレグ族のテントで、ラクダのミルクを飲ませてもらった。 洗面器のような器に直接ラクダから絞ったものを持ってきてくれた。 うまいかまずいかと言われれば、うーん微妙な感じだ。 ヨーグルトのような、発酵したような酸っぱい味だった。 馬乳、すなわち馬のミルク … »ミスター世界の食文化紀行「ミルクったっていろいろ」の続きを読む

トルティーヤもいろいろ

以前にも書いたが、アメリカではいま、タパス風というか居酒屋風というか、小皿料理をみんなでわけあうスタイルの店が人気だ。   このあいだ、最近できた本家スペインのタパスの店に行った。 僕がタパスでいつも頼む料理のひとつに、トルティーヤがある。 「トルティーヤって、料理って呼べるの?」。 と思うひと、いますか? そう、アメリカ在住の僕たちに親しみのあるトルティー … »ミスター世界の食文化紀行「トルティーヤもいろいろ」の続きを読む

インドネシアのケチャップ

インドネシアという国は、旅をしてとても楽しいところだ。   伝統文化や、東西の狭間に生きてきた歴史、ビーチやジャングルの自然、動植物の豊かさ…。 もちろん、食の点でも楽しみはいっぱいある。   東南アジアらしい米の文化に、中国や日本、インド、さらにはスペインやオランダの食文化の影響、熱帯ならではのさまざまな食材やフルーツ。 そしてインドネシアといえば、古くか … »ミスター世界の食文化紀行「インドネシアのケチャップ」の続きを読む

パリパリの可麗餅

可麗餅。 どんな食べものでしょう。   先週の『法国吐司』(フレンチトースト)とおなじく、中国語あて字だ。 正解はクレープ。発音はクーリーピン。 「吐司」よりは「可麗」のほうがだいぶ字づらがいいですね。   クレープ(crêpe)は、読者もご存じのようにフランスはブリターニュ地方の名物で、小麦粉を使ったデザート・タイプと、ソバ粉を使った塩味タイプがある。 そ … »ミスター世界の食文化紀行「パリパリの可麗餅」の続きを読む

吐司を食べたい!

法国吐司。 さて、どんな食べものでしょう?   法国というのは、中国語でフランスのことだ。フランス人が特別に法律を守るというわけではなく、日本語でほとけ(仏)の国というがごとく、あて字である(法はファーと読む)。 吐司は台湾で使われるあて字で、トーストのこと。 両方合わせてフレンチ・トースト。 なにも食べものに「吐く」という字を使わなくてもよさそうなものだと … »ミスター世界の食文化紀行「吐司を食べたい!」の続きを読む

ブタがますますおいしい

「ブタはよーく火を通して食べなさい!」と、こどものころからいつも聞かされてきましたね。 でも、アメリカのFDAが、「ピンクのポークを食べてもだいじょうぶ!」と発表したのを知ってましたか? ブタの飼育方法がよくなったので、アメリカのコマーシャルルートで食べることのできるポーク、つまりレストランで食べるポークやマーケットで売っているものは、「無菌豚」と記されてい … »ミスター世界の食文化紀行「ブタがますますおいしい」の続きを読む

ポレンタ喰いの喜び

ポレンタって知ってますか? ちょっとカワイイなまえでしょう? polenta。簡単に言えば、イタリアのトウモロコシのお粥だ。   このあいだビバリーヒルズのあるイタリアン・レストランでおまかせのコースメニューを食べていた。途中ででてきたポレンタの一皿を食べて、驚いた。 ポレンタって、こんなにうまいものだったのか! なにをかくそう、僕はこのテの食べものが大好き … »ミスター世界の食文化紀行「ポレンタ喰いの喜び」の続きを読む

みんなで仲良く食べましょう

チャイニーズレストランに行くと、お箸が長いことを不思議に思ったことがありませんか。 じつはあれは、テーブルにおかれた大きな皿を、みんなでつっついて食べるという中国式の食べかたと関係がある。 箸が長いほうが、遠くにあるお皿に届きやすいというわけだ。 日本人の多くは、チャイニーズを食べるばあいでも、大きなお皿から自分用の小皿にいったん取り分けてから食べる。 でも … »ミスター世界の食文化紀行「みんなで仲良く食べましょう」の続きを読む

はんぺんくねる

「はんぺん」に「かまぼこ」、むかしからサカナ食に親しんできた日本生まれの、日本にしかない食材…。と思うでしょ?   賢明なる読者は、このコラムがそういう始まりのときは、「じつはそうではないのです」となることはご存じでしょう。   じつはそうではないのです。   まずは一気にフランス。 ミシュラン三ツ星の、何百年も続く鴨料理で有名なパリのラ・トゥール・ダルジャ … »ミスター世界の食文化紀行「はんぺんくねる」の続きを読む

バランスの妙

友人を連れてチャイニーズレストランに行ったときのこと。 食べ終わって、彼が言うには、 「この店は以前になんども来たけど、こんなにおいしいと思ったことははじめてです。やっぱり関根さんのことを店の人が知っていて、特別おいしく料理してくれるのでしょうね」 これはうれしいコメントだったが、じつはそんなことはまったくない。店の人は僕のことは知らないし、いつもが手抜きを … »ミスター世界の食文化紀行「バランスの妙」の続きを読む