ミスター世界の食文化紀行

“ミスター世界”こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカなど、本誌掲載コラムのバックナンバーをセレクトしてご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ライトハウス編集部
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ホンバの焼肉②

韓国系の焼肉の店に行って、とまどった経験はありませんか。 注文した肉が大きければ、ウェイトレスはそれをテーブルに運んでくるやいなや、巨大なハサミをとりだしてジョキジョキと切りにおよぶ。これにたいていの日本人は目を丸くする。 「チャルドゥリカヨ?」(カットしますか?)と訊くこともあるが、たいていは問答無用である。 そして、肉はウェイトレスが一遍にドドッと網(ま … »ミスター世界の食文化紀行「ホンバの焼肉②」の続きを読む

ホンバの焼肉①

このシリーズで、まだ焼肉をとりあげたことがないのに気がついた。   こんなにだいじなテーマを忘れてました!   コリアタウンに行けばもちろんのこと、LA界隈にはコリアンバーベキューの店は星の数ほどある。 これが、僕がアメリカに来た70年代には、ただの一軒もなかったのです。 それ以前に韓国に旅行もして焼肉は大好きだったから、LAでも食べたくて食べたくて。 アメ … »ミスター世界の食文化紀行「ホンバの焼肉①」の続きを読む

東南アジアのうまみ

チャーハンって、おいしいですね。   僕はチャイニーズ・レストランに行くときはよく、「今日はチャーハンを頼もう!」と思って行くのだが、結局メニューを見ると目移りしちゃって、料理をごっちゃり頼んでお腹を一杯にしてしまう。 白いゴハンもとても素晴らしい食べものだが、味のついたゴハンってなんであんなに魅力があるのでしょうね。でも、チャイニーズのチャーハンだけがおい … »ミスター世界の食文化紀行「東南アジアのうまみ」の続きを読む

ラストスパートにディジェスティーフ

前号で食前酒について書いたので、食後酒についても書かなくちゃ。   まずその呼び名だが、英語ではafterdinnerdrinkということもあるが、ヨーロッパではおしなべてdigestif(またはその類型)。 その意味は、とりもなおさず「消化剤」だ。 食前酒のことをaperitif「開胃剤」というのだから、食後酒のことを「閉胃剤」といってもよさそうなものだが … »ミスター世界の食文化紀行「ラストスパートにディジェスティーフ」の続きを読む

まずはアペリティーフを

日本人の多くは、食前酒というものにあまりなじみがないようだ。 居酒屋あたりでテーブルにつくと、「まずはビール!」「とりあえずビール!」と注文する人が多い。 「まずは」とか、「とりあえず」という名のビールを売り出せば、よく売れるだろうというゆえんである。 西洋料理の店だったら、ウィスキーの水割りを頼む人も多い。 もちろん、それが好きだから頼むのであればおおいに … »ミスター世界の食文化紀行「まずはアペリティーフを」の続きを読む

さんさい鍋

そろそろ鍋ものの恋しい季節ですね。   今回は中国の酸菜鍋について。 山菜鍋じゃないです。 酸菜入りの砂鍋(サークォ)。 砂鍋とは日本でいう土鍋のことで、あれは中国では土ではなく砂でできているとされているようだ。   台湾人の家庭によばれて、砂鍋をごちそうになったことがある。 その家に着いたら、テーブルに鍋とコンロの用意がしてあったので、「よし!今日は鍋だな … »ミスター世界の食文化紀行「さんさい鍋」の続きを読む

温故鴨知新鴨

アメリカでいちばんよく食べられる鴨はなんだかご存じですか?   答えは、ペキンダック。 「えー??中国ならともかく、アメリカで?」と思われるだろうが、ちゃんとWikipediaにそう書いてある。 じつは、Pekin Duckという種類の鴨があるのだ。それがアメリカではいちばんよく食べられる種類だとのこと(厳密にいうと〝家鴨﹇アヒル﹈〞だけど)。   その名は … »ミスター世界の食文化紀行「温故鴨知新鴨」の続きを読む

ゆかり

ゆかり」というフリカケをご存じだろうか。 赤紫蘇を乾燥させた、紫の色もあざやかなフリカケで、白いゴハンによくあう。 「ゆかり」という名は、三島食品という会社によって登録商標となっているようだが、赤紫蘇フリカケというと、ほかのメーカーの物も含めて「ゆかり」とよぶのが一般的な感もある。 日本だけの物ではない。   イランにいくと、レストランのテーブルの上には、塩 … »ミスター世界の食文化紀行「ゆかり」の続きを読む

ツケ麺はかっこいい

ツケ麺はかっこいい。   ラーメンのように、ドンブリからツユといっしょにズルズルとススるのではなく、皿から麺を少しとりあげ、先のほうにちょっとだけツユをつけて、スルッと一気に飲みこむ。イキである。   僕もツケ麺を食べていると、かっこいい男になった気分になる。イケメンになった気がする。 麺の乾いた部分と、汁のついた部分が、はっきりわかれているところがうまい。 … »ミスター世界の食文化紀行「ツケ麺はかっこいい」の続きを読む

マロウの必然と偶然

ビーフのなかで、いちばんおいしい部位はどこだと思いますか?   以前(2008年11月1日号)に「タン(舌)がいちばん!」と書いたが、それに負けず劣らずの部位があるのを書き忘れてた。 それを昨日、あるレストランで食べていて思い出し、そうだ!これは読に伝えなきゃ、と思った次第でございます。 それはボーンマロウ、骨髄だ。 日本人にはあまりなじみのない食材だが、ほ … »ミスター世界の食文化紀行「マロウの必然と偶然」の続きを読む

ヌードル?麺?

ヌードルとはなんのことでしょう? ソバのことに決まってるじゃん。 …と多くのひとは思うでしょうが、そうものごとは簡単にはいかないのが現実ですねえ。   noodleには、ラビオリ、ラザーニャやファルファーラ(蝶ネクタイの形をしたパスタ)なども含まれるし(Wikipedia)、そうなると日本語の「ソバ」というイメージとはちょっとちがう。 つまり英語のヌードルと … »ミスター世界の食文化紀行「ヌードル?麺?」の続きを読む

トマトとトマト

コソボに行ってきた。 「コソボ紛争」で知られる、2008年に独立したばかりの、世界一若い国のひとつである。   紛争のことはさておき、食べもののことで驚いたことがある。   トマトがうまい! 真っ赤で、甘くて、ジューシー。香りがいっぱい。 僕がいままで世界一と思っていたギリシャと同じくらいうまく、どのレストランでもおなじだ。 現地のひとに聞いてみると、「この … »ミスター世界の食文化紀行「トマトとトマト」の続きを読む

食在哪里?

『食在広州』 この「食は広州にあり」ということわざは、誰もが聞いたことがあるだろう。 はたして本当か? 広州では四足で食べないものはテー ブルだけ云々、というのは耳にタコがで きるくらいよく聞くが、まあそれだけ食材が豊富で、気候も温暖で人々も豊かだから、美食が発達したことはまち がいない。 僕も行ってみたが、たしかにうまいものはある。でも、上海や四川にもうま … »ミスター世界の食文化紀行「食在哪里?」の続きを読む

ニーニの好きなパニーニ

ヨーロッパ、なかでも特にイタリアやフランスに行くと、いつも感心することがある。   有名なレストランで高いおかねを払って食事をすればおいしいことはあたりまえだが、田舎の名もないパパ・ママ・レストランでも感激するような料理が食べられる。 それだけではなく、観光地にミニバンを停めてちょっとしたサンドイッチやコーヒーを売っている屋台のような店、そんなところのサンド … »ミスター世界の食文化紀行「ニーニの好きなパニーニ」の続きを読む

コリアンダーを見直そう

今回は、コリアンダー(coriander)、あの独特の強い香りの香草である。   僕が初めてコリアンダーを食べたときには、その異様な香りに、こりぁなんだー?と思ったものだ。 世界の多くの国で必需品として使われているのに、日本食にはまったく存在しないという素材はそう多くないのだが、その親しみのなさとあいまって、日本人は東南アジアなどでそのショッキングな香りに出 … »ミスター世界の食文化紀行「コリアンダーを見直そう」の続きを読む

タコのタコ

前回はイカについて書いたので、そのライバルのタコを無視するわけにはいかない。   アメリカではカラマリはポピュラーだが、タコはマイナーな存在のようだ。 ヨーロッパでも、僕はパリではいちども食べたことがないし、ドイツから北ではまず食べられることはないだろう。 じっさい北ヨーロッパではむかしから、海には船をひっくり返したりする恐ろしい怪物が棲んでいるとされてきて … »ミスター世界の食文化紀行「タコのタコ」の続きを読む

からまわりステーキ

このあいだ、カラマリ・ステーキを食べていて、ふと気がついた。 イカのことを英語では、種類によって「cuttlefish」または「squid」という。   むかしはアメリカではイカのステーキは「squid Steak」といっていたという記憶があるが、いつから「calamari steak」というようになったんだ?   そういえば、イカを輪状に切って揚げたイカリ … »ミスター世界の食文化紀行「からまわりステーキ」の続きを読む

ホントのサービスとは?

前回触れたように、サーバーが愛想よくすること、それだけで「いいサービス」とはいえない。 それが出発点だからだ。   レストランの広告に、「新鮮な材料を吟味し…」と書いてあるのをよく見るけど、あれとおなじことだ。 それがあたりまえで、「うちは古い材料を吟味しないで使うけど、料理の腕にかけては一流です」なんていう店はない。 愛想が悪かったらはなしにならない。 と … »ミスター世界の食文化紀行「ホントのサービスとは?」の続きを読む

挨拶もポイント

レストランでの食事をエンジョイできるかどうかは、料理のうまいまずいだけではない。   サービスが重要なポイントであることはいうまでもない。 とはいっても、ただサーバーがニコニコして、「How’s everything?」となんども聞きにきてくれさすればいい、というものでもないですね。 ときには、料理をテーブルに置いて、「Enjoy!」とひとことい … »ミスター世界の食文化紀行「挨拶もポイント」の続きを読む

チャイニーズったっていろいろ③

中国料理店選びシリーズ、次は四川。   四川のことは、英語では「Szechuan」または「Szechwan」。中国では四川料理のことを「川菜」というので、看板のどこかにこのどちらかがあればまちがいない。 四川に辛い料理が多いのは、よく知られているとおり。四川人は十人中九人が痔主だ、とほかの中国人は信じている。 麻婆豆腐の発祥の地。でもこの料理は中国全土でポピ … »ミスター世界の食文化紀行「チャイニーズったっていろいろ③」の続きを読む

チャイニーズったっていろいろ②

中国料理の種類とその店の見分け方について、前回は山東、広東と、とんとん拍子に話は進んだのだが、まだまだほかにも沢山ある。   上海の料理は、強いて僕にいわせれば(誰にも強いられたわけではないが)、中国料理の中で日本人にとっていちばん親しみやすいかもしれない。 そもそも上海人や上海語というのは、北京などにくらべて日本人、日本語に近い。かれらも日本人に親近感を持 … »ミスター世界の食文化紀行「チャイニーズったっていろいろ②」の続きを読む

チャイニーズったっていろいろ①

「今日はなにを食べに行こうか?」。 「チャイニーズはどう?」。 「そうしよう!」 となったところで、まだちゃんと決まったことにはならない。   チャイニーズといったって、ここアメリカにも、広東、四川、北京、山東、台湾、上海、清真などの料理や、アメリカナイズされた店などがあるからだ。   そのほかの地方の料理や、ほかの国の影響をうけた料理などもいろいろあるのだ … »ミスター世界の食文化紀行「チャイニーズったっていろいろ①」の続きを読む

和洋カラシ談義

だいぶまえのことだが、友人を連れてヤムチャを食べに行った。当時勉強を始めたばかりの中国語を使って料理を注文し、得意になっていた。   「緑野菜も一皿注文しようね」といって注文したら、ウェイターはカラシを小皿に乗せてもってきた。   友達に大笑いされたのは言うまでもないが、懸命に自己弁護に努めたのは、芥菜(カラシナ)を注文したつもりが芥子(カラシ)と理解された … »ミスター世界の食文化紀行「和洋カラシ談義」の続きを読む

ザガットの利用価値

世界的なレストランガイドといえば、ミシュラン。 …というのがつい数年まえまでの常識だった。   日本でも、今年は東京版が新しくなり、京都大阪版もでて、ひとしきり話題になった。その権威がおとろえたわけではない。 けれど、僕にいわせれば、レストランガイドの利用価値は、いまやZagat (ザガット、ガにアクセント)が世界中でミシュランを凌いでいるといってもいいと思 … »ミスター世界の食文化紀行「ザガットの利用価値」の続きを読む

酢豚の文化

みなさん、あけましておめでとうございます。 今回から、ハワイのみなさんにもお届けすることになりました。   新年にちなんだテーマを、と思ったのだが、10数年も書いていると新年のネタも思いつかなくなったので、酢豚のはなし。 なぜ酢豚なのだ?というのは、最後まで読んでいただければわかりますよ。   さて読者は、アメリカナイズしたチャイニーズ・レストランに入ると、 … »ミスター世界の食文化紀行「酢豚の文化」の続きを読む

アボガドの生命力?

アボガドをスペイン語でなんというでしょう? ん?もちろんアボガドでしょ? それがちがうのですね。    「アボガド」と、日本人には子音にぜんぶ濁点をつけてしまう人が多いけど、これだと「abogado(弁護士)」のことになってしまう。 英語の「advocate」に関連したことばだ。 濁点をぬいて「avocado」としたところで、これは英語で、スペイン語ではない … »ミスター世界の食文化紀行「アボガドの生命力?」の続きを読む

マルガリータとマーガリン

今回は、マルガリータにマーガリンを溶かして飲もう、というはなし…ではない(うー、まずそう)。 でも、margaritaにmargarine、なんとなく似ていると思いませんか?   それから、ピッツァにマルゲリータ(pizza margherita)という種類がある。 トマト、モッツァレラ、バジリコ、オリーブオイルという、シンプルにしてイタリア料理の基本中の基 … »ミスター世界の食文化紀行「マルガリータとマーガリン」の続きを読む

ケニアで食べた味

オバマ大統領のお父さんはケニア人。   さまざまなエスニックレストランのある南カリフォルニアでも、ケニア料理の店は一軒もない。 ケニア料理が食べたい!…と思っていたら、ついに登場したのです!   南カリフォルニア初のケニア料理!(*) 場所はアナハイム。 どうやらあのへんに小さいケニア・コミュニティーがあるらしい。   僕のケニア体験は一度だけ。マサイ族の居 … »ミスター世界の食文化紀行「ケニアで食べた味」の続きを読む

ちょっとコワイ中国料理

以前、中国料理には、「虫」という字を使った料理がいろいろある、と書いたことがある(2007年10月1日号)。   もちろん、実際に虫を料理しているわけではなく、中国料理の材料などに使われる、虫ヘンの漢字のことである(虾、蛄、蜆、蛞、蛙、蚌、蜮など)。   このあいだチャイニーズ・レストランで食事をしていて、壁にはってあるタンザクのメニューをぼんやり眺めていた … »ミスター世界の食文化紀行「ちょっとコワイ中国料理」の続きを読む

イギリスって 食べものがおいしい!

数年ぶりに、ロンドンに行ってきた。   食べものがすごくおいしかった!   「なんだって? イギリスの食べものって、おいしくないんじゃないの?」と読者は不思議に思うかもしれない。   それはですね、こういうことです。 たしかにイギリス料理というものは、たとえばローストビーフのつけあわせに、ヨークシャープディングなる、シュークリームにクリームを入れ忘れちゃった … »ミスター世界の食文化紀行「イギリスって 食べものがおいしい!」の続きを読む