ミスター世界の食文化紀行

“ミスター世界”こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカなど、本誌掲載コラムのバックナンバーをセレクトしてご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ライトハウス編集部
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モッツァリしたモッツァレッラ

数年まえ、LAのあるイタリアンレストランに行った時のこと。   インサラータ・カプレーゼ(Insalata di Caprese)を注文した。 これはモッツァレッラチーズのスライスとバジリコの葉、それにトマトのスライスを交互にならべてバージンオリーブオイルをかけたサラダ(insalata)だ。 わりとよくある前菜だから、食べたことあるでしょ? トマトの赤、モ … »ミスター世界の食文化紀行「モッツァリしたモッツァレッラ」の続きを読む

アイスコーヒー???

「Iced coffee??? Iced Teaならあるけど、コーヒーの冷たいのなんて、知らないね」。   僕がアメリカに来た30年以上まえ、コーヒーショップでアイスコーヒーを注文してみれば、こんな答えが返ってきたものだ。 アメリカに来るまえ、日本ではアイスコーヒーが大好きでいつも飲んでいたから、あの味がなつかしい。 日本だけじゃない。イタリアにいけば「ca … »ミスター世界の食文化紀行「アイスコーヒー???」の続きを読む

デンマークでウィーン

デンマーク。このコーナーには初登場の国だ。 首都コペンハーゲンは、一国の首都としてはおどろくほど小ぢんまりしている。   だがさすがはヨーロッパ、旧市街をはじめ、しっとりと落ち着いた古い街だ。   僕は、この街の夏、それも夜が好きだ。 それはチボリ・ガーデンがあるからである。 この公園は、短い夏の夜を楽しむ市民で毎晩賑わう。木立に囲まれたメリーゴーラウンドや … »ミスター世界の食文化紀行「デンマークでウィーン」の続きを読む

デザートに抜糸を

僕の愛犬が手術をした。 幸い経過は順調で、めでたく抜糸となった。 そのお祝いに、抜糸を食べよう、ということになった。   抜きとった糸を獣医さんからもらってきて、ソバツユでもかけて食べよう、というわけではない。 抜糸、という食べものがあるのだ。   中国料理のデザートで、中国語では「抜絲」と書き、「バースー」と読む(中国語には「糸」という字はない)。 バナナ … »ミスター世界の食文化紀行「デザートに抜糸を」の続きを読む

バカな食べもの

世界には、バカな食べものがいくつかある。   まずは、vaca。   スペイン語で「牛」のことで、スペイン語ではVは「ヴ」ではなく「ブ」と発音するから、まさにそのものずばり、「バカ」である。 「肉」のことはカルネ(carne)で、牛肉のことはcarne de vacaというのだが、ただcarneといえば、通常、牛肉のことを意味する。   ついでながら、中国語 … »ミスター世界の食文化紀行「バカな食べもの」の続きを読む

北イタリアの芸術

「こんどイタリアに行くので、おいしいレストランを教えて!」。   友だちから、こんな質問をよくうける。   僕の答えはいつもこうだ。 「ミシュランのレストランガイドを買いなさい。そして、そこにでているレストランで、星のついていないところに行くといいよ」。   そうすると、友だちは疑問に思う。 「星のついてないところ? 星はついている店のほうがおいしいんじゃな … »ミスター世界の食文化紀行「北イタリアの芸術」の続きを読む

キューバ料理とサルサ

キューバのひとたちは、いつもはどんなものを食べてるんだろう?   メキシコ料理と似てるのかな? と思うかもしれないが、距離が近い割には、かなり違う。   主食は、トルティリャじゃなく、ゴハン。日本と同じようなゴハンである。   白いゴハンを食べるのは、日本人だけじゃないんです!と以前にも書いたことがあるが、日本から地球を半周したこの国でも、白いゴハンをふっく … »ミスター世界の食文化紀行「キューバ料理とサルサ」の続きを読む

キューバの素顔

二百番目の訪問国はキューバだった。 楽しかったです。   食べものもおいしいし、ハバナの街の、いたるところでサルサが聞ける。 歴史も、独自の文化もいっぱいある。 世界遺産もあるし、世界中から観光客が来ている。   街を歩いていても、これが1959年の革命からずっと、ソ連の庇護のもとに独裁共産体制を育て、いまだにそれを続けている国だとはちょっと信じられない。 … »ミスター世界の食文化紀行「キューバの素顔」の続きを読む

二百カ国のよろこび

「美味礼賛」連載二百回と同時に、二百ヵ国の訪問、達成! 二百番目はキューバだった。   ここで読者はさっそく、疑問を抱かれるだろう。 二百?・・・世界の国ってそんなにあったっけ? キューバ?・・・アメリカに住んでる人は渡航禁止なんじゃないの?・・・   正確に言うと、僕が訪れたのは二百ヵ国および地域である。   国連加盟国は、現在192。   そのほかに、国 … »ミスター世界の食文化紀行「二百カ国のよろこび」の続きを読む

めでたい200回

この春はめでたいことばかりだ。 ライトハウス・ロサンゼルス版が発刊20年。 僕の訪問した国・地域が200を超えちゃった。 そして、この美味礼賛シリーズが、ロサンゼルスでは200回を超えた。   今回は、この美味礼賛 200回についてちょっと振り返ってみよう。   料理別の内訳を調べてみたら、こうなっていた。 ・中華料理37回 ・フランス料理26回 ・イタリア … »ミスター世界の食文化紀行「めでたい200回」の続きを読む

フニャフニャマックチーズ

「MacCheese」という食べものを御存じですか? なにそれ、マクドナルドの新メニュー?  …そうではない。   「Macaroni and Cheese」の略称で、アメリカにはそうやって 略す人が多い(Mac & Cheeseともいう)。   このあいだ、ふと考えたのだが、日本の家庭で子供にいちばん人気が高い夕食は、たぶんカレーライスだろうなあ … »ミスター世界の食文化紀行「フニャフニャマックチーズ」の続きを読む

タパスが流行ってます

最近、巷ではタパスが流行りのようだ。 以前はとても少なかったLAのスペイン料理の店も、今やずいぶん増えて、僕の知っている限りで30店ほどある。   タパス。つまり、小さいお皿の単品料理をいくつもとって、仲間といっしょにつまみながら、おしゃべりをしながら、ワインを飲む。 つまり、日本の居酒屋と同じコンセプトですね。 LAでこのスタイルが流行ったのは、どうも日系 … »ミスター世界の食文化紀行「タパスが流行ってます」の続きを読む

健康的料理

ちまたでは、「どの国の料理がおいしいか?」という議論はよくおこるのだが、「どの国の料理が健康的か」というはなしはそれほどおこらない。 だって、何料理といったって、どんなものを注文するのか、つまり肉なのか魚なのか、焼くのか油で揚げるのか、といったことによってちがいますからね。   ところが、どんなものを注文しようと関係なく、健康的! という料理があるのです。 … »ミスター世界の食文化紀行「健康的料理」の続きを読む

食い道楽の燕の巣

中華料理の三大珍味は、フカヒレ、アワビ、燕の巣とされている。   その中で、フカヒレとアワビは食べたことのある読者もわりと多いのではないだろうか。でも燕の巣はないでしょう?   フカヒレとアワビ(特に干しアワビ)は、グルタミン酸だかイノシン酸だかしらないが、「ウマミ」成分がとてつもなく多く含まれているのだろう、美味このうえない食物である。   で、燕の巣は? … »ミスター世界の食文化紀行「食い道楽の燕の巣」の続きを読む

カタールのかぜ

どうです、今回はなかなかロマンのあるタイトルでしょ?   年始に、アラビア半島のカタールを訪れた。 折りしもヨーロッパと中近東を襲った寒波でえらく寒く、かぜを引いてしまった。というわけで、カタールのかぜである。   ま、お腹をこわしてカタールで大腸カタルになるよりはましだったが。 さて、カタールの食事について。 ドバイやアブダビなどもそうだが、あのあたりでレ … »ミスター世界の食文化紀行「カタールのかぜ」の続きを読む

マグロなビーフステーキ

大晦日は、ローマだった。   2008年最後の食事は、ローマで最もおしゃれな通り、ベネト通りからちょっと入った、トスカーナ料理の店にした。   第一の皿は、冬のトスカーナの風物詩、白トリュフをたっぷり使ったタリアテーレ。涙が出るほどおいしかった。もったいなくて、麺を一本ずつ、ゆっくり味わって食べた。   メインコースは、ビステカ・アラ・フィオレンティーナ、す … »ミスター世界の食文化紀行「マグロなビーフステーキ」の続きを読む

台湾B級グルメ

いま台湾に来ている。   台湾と言えば、シンガポールとならんで屋台料理のメッカだ。 もちろん中国各地の料理をだすすばらしいレストランはたくさんあるけど、台湾に来るとどうしても足が向いてしまうのは屋台街だ。   B級グルメというのは誰が発明したことばだか知らないが、言い得て妙だ。広東や山東の繊細にして美味、高級感のある料理は言うまでもないが、素朴な屋台料理の食 … »ミスター世界の食文化紀行「台湾B級グルメ」の続きを読む

世界三大料理とやら

今回は正月にふさわしく、スケールの大きいテーマでいきましょう。   「世界の三大料理とは?」。  フランス料理、中国料理、そしてもうひとつ…。え? トルコ料理?   インターネットの辞典サイト、Wikipediaの日本語版に、「世界三大料理は、中華料理、トルコ料理、フランス料理のこと。フランス料理を外してイタリア料理または日本料理(日本国内のみ通用)を入れる … »ミスター世界の食文化紀行「世界三大料理とやら」の続きを読む

ポッサム隠れた美味料理

この11月にまた韓国を訪れた。  ソウルには日本人で古くからの友人が住んでいて、彼に会うのも楽しみのひとつである。   今回も、着いて早々、「さ、なにを食おうか!」ということになって、彼が「最近凝ってるウマイものはね…」という話になって、「よし、それを食いに行こう!」と簡単に結論が出たのが、ポッサムである。   あの不気味な小動物、オポッサムを食おうというの … »ミスター世界の食文化紀行「ポッサム隠れた美味料理」の続きを読む

しびれるスイートブレッド

“Sweetbread” 「甘いパン…? なぜそんなものがメニューにのっているんだろう?」と、フレンチ・レストランでメニューをみながら思ったことはありませんか?    日本語は「仔牛の胸腺」。 ふだんはあまり耳にしないなまえである。 じつはこれ、食い道楽のあいだではツトに知られた、リドヴォー(リードボーともいう)なるもので、乳を消化す … »ミスター世界の食文化紀行「しびれるスイートブレッド」の続きを読む

角煮の罪

世の中には、体に悪い食べものほどうまい、という法則がある。そのひとつはフォアグラ。   ガチョウかアヒルにエサを大量に食べさせて肝臓を肥大させ、脂肪肝という病気にさせたものだが、これは世界でいちばんうまい食材のひとつであることはまちがいない。これを食べ過ぎて、自分が脂肪肝になって入院した食の評論家もいるくらいである(僕じゃないですよ)。   脂のしたたるステ … »ミスター世界の食文化紀行「角煮の罪」の続きを読む

舌の舌触り

今年の冬のバケーションは、イタリアのアルベロベッロに行くことにした。とんがり屋根が並ぶ、世界遺産の町である。その町のことを考えていたら、突然、牛タンが食べたくなった。なぜだかさっぱりわからない。なぜ突然舌が食べたくなったんだろう???   それはさておき、牛タン(いうまでもなく、英語の「tongue」が語源)、つまり牛の舌は、牛の部位のなかでいちばんおいしい … »ミスター世界の食文化紀行「舌の舌触り」の続きを読む

雲を飲み込むワンタン麺

ワンタン、って「うどん」のルーツだって知ってました? 僕も知らなかったけど、Wikipediaに、そうであろう、と書いてある。 ワンタンは現代の呉方言で「餛飩(ウンドン)」と言うのだそうで、そういえば日本でもうどんのことを餛飩と書くことがあるし、呉と言えば古くから日本語に入った中国語のルーツの中心地である。   僕も中国の南部(呉もそうだが)を旅していると、 … »ミスター世界の食文化紀行「雲を飲み込むワンタン麺」の続きを読む

うわさのチベット

ポカラ宮殿(Photo by Masakazu Sekine) 今年はチベットがだいぶ話題になった年だった。 僕がチベットの首都、ラサに行ったのは二年前。しっかりと高山病になった以外には、チベットらしさがほとんど感じられなかったのにはがっかりした。 中国政府が漢民族をたくさん移住させたためだろう、街並みはどこにでもある中国の田舎町という感じ。ダライ・ラマがむ … »ミスター世界の食文化紀行「うわさのチベット」の続きを読む

朝食のすすめ その②

3号まえに世界の朝ゴハンについて書いたけど、じつはもっと書きたいことがあるのです。 よくいわれることだけど、日本人の旅行パターンは、滞在日数が短く、そのあいだにできるだけたくさんのものを見てやろうとする。   たとえばハワイのリゾートに泊まってると、朝っぱらから玄関に大型バスが止まっている。見ていると日本人の一団がゾロゾロと乗り込んで、どっかへ行ってしまう。 … »ミスター世界の食文化紀行「朝食のすすめ その②」の続きを読む

知られざるは生ハムのおいしさ

イタリアン・アルプスのド真ん中、アオスタという小さな町に行ったときのこと。 適当にレストランに入ってみると、天井から数十個の肉塊がぶらさげてある。 生ハムだ。 テーブルについて早速この生ハム「prosciutto crudo」を注文すると、店の主人がフックのついた棒でその塊のひとつを天井からはずし、 隅にある専用削り器でシュルシュルと薄く削ったハムをテーブル … »ミスター世界の食文化紀行「知られざるは生ハムのおいしさ」の続きを読む

イチゴの世界

僕はフランスに行ってレストランで食事をしたあと、二回に一回は食べるという、大好きなデザートがある。 イチゴだ。 イチゴそのままである。   フランスのデザートは、アメリカのように小山のようなチョコレートケーキが出てきたりすることはなく、プディングのようなもの、アイスクリーム、 あるいはチョコレートや果物、リキュールなどを巧みに使った、芸術性あふれる暖かいデザ … »ミスター世界の食文化紀行「イチゴの世界」の続きを読む

旅の朝食 その①

イギリスにはうまいものがほとんどない、でも朝食だけはうまい。 だからイギリスを旅行するときは、毎日三度朝食を食べればいい。   …というのは有名なジョークだが、これはけっこう真理をついている。 朝食というのは、どこの国でも、昼や夜の食事とは異なった性格があるものだ。   そのひとつは、一日のスタートとして、エネルギーを産み出すようにできている、ということ。 … »ミスター世界の食文化紀行「旅の朝食 その①」の続きを読む

不思議なアイスティー

アイスティーには、いろいろな不思議がある。   まず第一に、この飲みものはアメリカ人のあいだで何ゆえにこんなにポピュラーなのだろう? もちろん、他の国でもまったく飲まないわけではない。 ソフトドリンクとしての缶入りアイスティーはマーケットで売っているし、カフェやバルで注文することはできる。 でも、アメリカにはこれを食事と一緒に飲む人がべらぼうに多い、というと … »ミスター世界の食文化紀行「不思議なアイスティー」の続きを読む

白いご飯は日本だけ?

以前、日本のある読みものを読んでいたら、「白いご飯(とおかず)を食べるのは、日本と中国だけのすばらしい習慣だ」、みたいなことが書いてあった。 西洋で米を食べるときはピラフにするし、的なことも書いてあったと思う。   ウーッ! このテの誤りは、ただ誰かが思い込んでいる分には害はないのだが、出版物に書かれているのを見ると、僕としては耐えられない。 日本と中国どこ … »ミスター世界の食文化紀行「白いご飯は日本だけ?」の続きを読む