ミスター世界の食文化紀行

“ミスター世界”こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカなど、本誌掲載コラムのバックナンバーをセレクトしてご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ライトハウス編集部
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スイカの秘密

スイカとかけて何と解く? ピザと解く。 そのココロは? どのスライスも、はじめのひと口がいちばんおいしい。   わかっていただけますか? つまりですね、スイカを包丁で切って、あれは何形というんですかね?  下が丸くって上が三角にとんがっている格好。 そのとんがったところにかぶりつく。 冷たさが少し歯にシミて、汁が口の中にほとばしって、甘さと、スイカ独特のちょ … »ミスター世界の食文化紀行「スイカの秘密」の続きを読む

カレーの新発見

光の三原色、ご存じですね。 赤・青・緑。 これを全部あわせると白になる。 しかし、絵の具の三原色、赤・青・黄を混ぜると黒になる、すべての絵の具を混ぜるとグレーになる。 と、むかし理科の時間に教わって、ふしぎだなー、思ったものだ。 加法混色と減法混色とのちがいなのだが…。   ところが、僕はある日、もうひとつの混色がある、というたいへんな事実に気がついてしまっ … »ミスター世界の食文化紀行「カレーの新発見」の続きを読む

オレンジジュースの秘密

世界でいちばんオレンジジュースがおいしいのはどこでしょう。   僕の家です。 我が家の庭には、巨大なオレンジの木が立っていて、一年を通じて数百個の実がたわわになっている。 しぼってジュースにするのはけっこう手間がかかるので、毎日飲むわけではないが、友人が家に泊まったときの朝など、庭に出てこの木からオレンジを摘んできて、朝食用のジュースをしぼる。 そして、「俺 … »ミスター世界の食文化紀行「オレンジジュースの秘密」の続きを読む

たかがワインのグラス

たかがワイン。 ああだこうだとカッコつけてみたところで、単なる飲みものじゃないか。 気楽に楽しめばいいんだよ! …といわれたような気がした。   エアフランスのビジネスクラスで食事をしたときのことである。 ワインを飲むためのグラスが、タンブラーなのだ。 赤ワインでも白ワインでもおかまいなし、水を飲むのと同じような丸いコップ。 もちろん、揺れることがある機内で … »ミスター世界の食文化紀行「たかがワインのグラス」の続きを読む

完璧なるパフェ

パフェ。 なんと外国的で、柔らかい響きのことばだろう。 僕はこどものころから、あの甘くて豪華なアイスクリーム・パフェの味とともに、その名が好きだった。 デパートの食堂の定番だった。 デパートの上の階には、いまのように名店街としていくつものレストランが軒をならべていたのではなく、大食堂がひとつあって、和洋中からさまざまな喫茶アイテムがところ狭しと入り口のガラス … »ミスター世界の食文化紀行「完璧なるパフェ」の続きを読む

パパイヤな想い出

パパイヤ*には、僕には忘れられない想い出がある。 20年ほどまえ、アメリカにいた僕は、父親の容態がよくないという連絡を受け、急遽日本に向かった。 当時はまだLA=東京間のノンストップ便がなく、すべてホノルル経由だった。 ホノルルの飛行場の待ち合わせ時間、なにか病床の父親へのおみやげは? と思い、これならおいしくて栄養もいいし、と思ってパパイヤを購入した。   … »ミスター世界の食文化紀行「パパイヤな想い出」の続きを読む

鬼気迫るビビンバ

韓国食文化の、ひとつのまぎれもない大きな特徴は、「混ぜる」ということだ。 彼らは、食べものは混ぜれば混ぜる程うまくなる、と思っているふしがある。   たとえばカレーライス。 日本人の多くは、白いゴハンとカレーを、口に入れる分だけ少しずつ混ぜながら、多少混ざりかたにムラがある状態で食べるのがうまいと思っているのではないだろうか。 韓国人がカレーライスを食べるの … »ミスター世界の食文化紀行「鬼気迫るビビンバ」の続きを読む

驚きのセネガル

前号にも書いたように、今年の年末年始は西アフリカで過ごした。 正月は、パリ・ダカール・ラリーで有名な(今年は突然中止になってしまったが)、セネガルのダカールだった。 「へー、セネガルに行ったんですか。 で、なにがいちばん印象的でしたか?」と、帰ってからよく聞かれる。 その答えは簡単である。   美人が多い。   驚いた。 ブラック・アフリカは今回で10カ国を … »ミスター世界の食文化紀行「驚きのセネガル」の続きを読む

嘆きのコーン

最近のとうもろこしを取り巻く事情はとても嘆かわしい。 僕たちの食べものを、事もあろうに車の燃料に使うなんて。   地球温暖化はなんとかしなくてはならないのはもちろんだが、世界の人口がこんなに爆発的に増えていて、世界を旅してみれば食べものがなくて苦しんでいる人々が あちこちにいっぱいいるというのに、そしてこれからまだ温暖化が進んでますます作物が取れにくくなり食 … »ミスター世界の食文化紀行「嘆きのコーン」の続きを読む

腰花の香り

「腰花」。それって食べもの? そう、このコーナーに登場する以上、立派な食材である。   これは、中国語で腎臓のこと。 医学用語としては、腎臓のことは中国語でも「腎臟」(シェンザン)というが、これを食べようというときには、医学用語だとどうもウマそうに聞こえない。 そこで、食材になると、「腰子」または単に「腰」という別名を使うことになっている。 腎臓が腰の近くに … »ミスター世界の食文化紀行「腰花の香り」の続きを読む

正月はカキを

新年おめでとうございます。   なにか正月にちなんだものを書かなくっちゃ、と思ったが、8年目に入るこのシリーズではもうすでにいろいろなものをとりあげてしまった。 でもまだカキがあったぞ。 香港の正月(ただし旧正月)にはカキを食べる習慣がある。 「鼓」(干したカキ)の発音「ホウシー」が「好市」(良い市況)と似ていて、「発財」(金が儲かる)と似た発音の「髪菜」と … »ミスター世界の食文化紀行「正月はカキを」の続きを読む

出た! ミシュラン

ミシュラン・ガイドのLA版と東京版がついに出た。 このライトハウスが読者のお手元に届くころにはいささか旧聞に属しているかもしれないが、僕としては一言書かないわけにはいかない。   言うまでもなく、ミシュランはヨーロッパでは最も権威のあるレストラン(とホテル)のガイドである。 東京版。これには正直ド肝を抜かれた。 掲載された150軒すべてに星? そんなバカなそ … »ミスター世界の食文化紀行「出た! ミシュラン」の続きを読む

シンガポールの楽しさ

いま、シンガポールに向かっている。 この、LAからみれば地球の裏側の地にもうなんど来たかわからないがなかなかおもしろい国である。   文化的には、マレー、中国、インド、そしてもとの宗主国イギリスがまざっている。 まざっているといっても、渾然一体となっているわけではなくそれぞれが別個のコミュニティーを保ち、食文化やライフスタイルを保っている。 シンガポールのガ … »ミスター世界の食文化紀行「シンガポールの楽しさ」の続きを読む

過橋米線物語

過橋米線…。 なんのこと?   じつはこれ、故事からくる中華料理のなまえである。 中国の料理には、故事からくるなまえがついたものがいろいろある。   『故事』(グーシー)とは「物語り」という意味で、たとえば麻婆豆腐。 成都という街で、あばた(麻)の奥さん(婆)の作る豆腐料理がおいしくて評判になり、中国中にひろまったというはなしは有名である。   あるいは、佛 … »ミスター世界の食文化紀行「過橋米線物語」の続きを読む

エスカルゴ鍋

「Escargot」(エスカルゴ)、つまりカタツムリはフランスを代表する食材のひとつ…。 パリに行ったら、本場のエスカルゴを食べてみないことには話にならない…。   夕食時ともなると観光客であふれかえるパリのカルチエ・ラタン。 レストランの外に貼り出されたメニューをみるとどこもかしこもオニオン・グラタンにクレープそれにエスカルゴ。 エスカルゴがフランス料理の … »ミスター世界の食文化紀行「エスカルゴ鍋」の続きを読む

悶絶フンギ

秋、キノコの季節。 日本人が、松茸が食べられる秋を楽しみにしているのとおなじように、イタリア人も9月になると、ポルチーニ(porcino・複数形:porcini)というキノコを楽しみにしている。 僕は8月末に食べたこともあるが、日本なら真夏の真っ盛りの8月は、イタリア北部では下旬になればそろそろ秋の気配が感じられるころである。   だが、やはりポルチーニの旬 … »ミスター世界の食文化紀行「悶絶フンギ」の続きを読む

中華料理の虫の数々

チャイニーズ・レストランのメニューで『虾』という字をみつけたら、あなたはその料理を注文しますか? 虫の下とはなんだろう? 『蜆』だったらどうでしょう。虫を見る? じつは、『(シアー)』というのは『蝦』の簡体字で、『蜆(シアン)』はアサリのことである(辞書にはシジミと出ているが実際はもっと大きい)。   そういえばこの『蝦』や『蜆』、あるいは『蛤(ゲー)』(は … »ミスター世界の食文化紀行「中華料理の虫の数々」の続きを読む

苦あれば楽ありマレーシア

Photo by Masakazu Sekine この夏はマレーシアに行ってきた。 よし、印象が鮮明なうちにマレーシア料理のはなしを書いてしまおう。 マレーシアはインドネシアと隣どうしで、人種的にも非常に近いし、イスラム教が国教という点、さらにはマレー語とインドネシア語と、通常別の名で呼ばれていても、実質上は100%同一の言語を使うなど、共通点が数多くある。 … »ミスター世界の食文化紀行「苦あれば楽ありマレーシア」の続きを読む

格上のチキン

レストランのメニューを眺めると、チキンの料理は、値段もやすいし、ビーフやラムなどにくらべて、「格下」というイメージがありませんか? しかし、世界には、どんな高級プライムリブにもラムチョップにも勝るとも劣らない、崇高なチキンというものが存在する。   そのひとつは僕にとって、生涯に世界で食べたありとあらゆる食べもののなかでも、トップクラスの食材、フランスはブレ … »ミスター世界の食文化紀行「格上のチキン」の続きを読む

急行エスプレッソ号

イタリア料理のあとのエスプレッソ。 なんとあとくちをすっきりと気持ちよくしてくれるのだろう。 イタリアでは、食事のあとに「コーヒー」、イタリア語で〝caffé〟といえば、自動的にエスプレッソのことを指す。 もちろん〝espresso〟(複数形はespressi)と言って頼んでもかまわないのだが、もともとエスプレッソ以外のコーヒーを飲むということが、イタリア人 … »ミスター世界の食文化紀行「急行エスプレッソ号」の続きを読む

歴史遺産のポーランド料理

ポーランド、ワルシャワの旧市街。ユネスコの世界歴史遺産だ。 歴史といっても、たかだか半世紀である。 それがなぜ世界遺産になったかというと、第二次大戦中ナチによって徹底的に破壊されたこの街を、戦後になって市民たちが自分たちの手で、それ以前のとおりに復元した。 それが歴史的重みを持つのである。   まえからいってみたかったその旧市街に、この夏訪れた。 思ったより … »ミスター世界の食文化紀行「歴史遺産のポーランド料理」の続きを読む

タイ語でボサノバ

タイ語でボサノバを聞いたことがありますか? そんなの気にしたこともないし、それがどうしたっていうの?と言われるだろうか…。   東南アジア、たとえばカンボジアやラオスなどを旅したあと、飛行機の乗り継ぎが便利なバンコックに着き、「まあせっかくだから、一泊してタイ料理でも食べてから帰ろうか」ということがよくある。 そうして飛行場から街の中心に向かう高速道路を走っ … »ミスター世界の食文化紀行「タイ語でボサノバ」の続きを読む

手づかみのすすめ

地球上には、おおまかにいって、箸を使って食事をする人々が三分の一、ナイフ・フォークを使う人が三分の一、残りの三分の一が手づかみで食事をする。 手づかみで食べるというのは、かならずしも文明が届いていないから、あるいは箸やナイフ・フォークが手に入らないから、というわけではない。 それがベストの食べかただから、と思っている人もたくさんいるのだ。   インド人はその … »ミスター世界の食文化紀行「手づかみのすすめ」の続きを読む

こだわりのトースト

アメリカのコーヒーショップでオムレツなどをたのむと、トーストがついてくる。 これがどうもうまくない。 パンの質もさることながら、薄すぎる。 トーストというものは、厚切りがおいしいのだ。 日本の喫茶店のモーニングサービスの、あの厚いトースト、あれこそがうまいトーストだ。 当地の日系マーケットで売ってるパンも、サンドイッチ用の薄いのとトースト用の厚いのがあるが、 … »ミスター世界の食文化紀行「こだわりのトースト」の続きを読む

盗作じゃない刀削麺

刀削麺のことはご存じですね? 練った小麦粉のカタマリを持った人が大きな鍋の前に立ち、包丁でサッサッと削って鍋の中に直接放り込んでいく、あの麺のこと。 テレビなんかで見ることあるでしょう? でも食べたことありますか? 中国へ行ったら食べてみたい、と思ってるあなた、LAでもちゃんと食べられるって知ってましたか?   刀削麺は、山西省生まれ。 そもそも中国の麺とい … »ミスター世界の食文化紀行「盗作じゃない刀削麺」の続きを読む

くる日もくる日もクルフィを

このあいだ友人たちとインド料理を食べに行ったときのこと。 いろいろな料理を食べ終わったところで、「インド料理には、どんなデザートがあるの?」という質問がでた。 「クルフィというアイスクリームの一種があるよ」と答えつつ、僕は「そういえば、日本人はクルフィのことをあまり知らないな」と気がついた。   これはライトハウスにも書かなくっちゃ! あの暑いインドのこと、 … »ミスター世界の食文化紀行「くる日もくる日もクルフィを」の続きを読む

LAフカヒレ、宴会の贅沢

このシリーズも150回を越えたというのに、まだこんな大物がのこってました! フカヒレ、中国語で魚翅(ユイチー)。 もともと潮州の名物料理とされているが、実質的には、香港の宴会料理である。 宴会料理、つまり、家族全員が集まってお婆ちゃんの誕生日を祝うとか、だいじなお客をもてなすとか、ハレの席で欠かせない食べものだ。   そこでは、ヒレの原型のままの「排翅」、つ … »ミスター世界の食文化紀行「LAフカヒレ、宴会の贅沢」の続きを読む

カリブ海の風

Photo by Masakazu Sekine カリブ海の島に行ってきた。 カリブ海には、アメリカやフランス、イギリス、オランダなどの海外領土を含め、27の国と地域がある。 今回の旅行は、その中で僕にとって19番目と20番目になる国だった。 そんなことはどうでもいいから、カリブ海にはどんな食べものがあるの、ですね。 カリブ海の島々は、右に書いたようなヨーロ … »ミスター世界の食文化紀行「カリブ海の風」の続きを読む

愛すべきかな、韓国メニュー

Photo by Masakazu Sekine このあいだ韓国に行ったとき、以前に比べて感じたのは、レストランの入り口の看板やメニューに、日本語がふえたことだ。 日本人観光客が急増したこともあるだろうが、日本人の来そうにない地域や店でも、ちゃんと日本語が書いてある。 これは、日本で英語を使うのとおなじ、ある種のカッコよさを追求したものだと思う。   しかし … »ミスター世界の食文化紀行「愛すべきかな、韓国メニュー」の続きを読む

オリーブは果物か

「日本で最も重要な果物」というと、何だろう。 みかん? スイカ? それとも柿? いまいちはっきりしないが、ヨーロッパでは至極はっきりしている。 ブドウである。どうです、異論の余地がないでしょう。 もちろん、粒を食べることよりも、ワインの原料として。 そして、その次にくるのが、オリーブだろう。 オリーブ・オイルの原料としてはもちろんのこと、原型のままピックルズ … »ミスター世界の食文化紀行「オリーブは果物か」の続きを読む